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【インタビュー連載】ストリーミングで出会うマスターピース 第4回:高中正義

 ストリーミングを通して、世代や国境を越えた新たなリスナーとの出会いを経験するアーティストにお話を伺う連載「ストリーミングで出会うマスターピース」。第4回となる今回は、高中正義さんをお迎えしました。

 1976年のソロデビュー当時、ハードロック全盛の時代にあえて「心地よさ」を追求したという高中さんのギターサウンドは、50年の時を経てグローバルに支持を広げました。インターネットを介して世界中のユースカルチャーと繋がった高中さんの音楽は、今、国境を越えた大合唱を巻き起こしています。

 先日終えたワールドツアーの手応えから、「トーキョーレギー」「BLUE LAGOON」などストリーミングでも人気を集める名曲の誕生秘話、国内外問わず自身のライブで大切にしていることなど、お話を伺いました。

ワールドツアー完売、“夢を見ているよう”な世界的ブレイク

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——2025年後半から今年の4月にかけて、欧州・北米・豪州を巡ったツアー『SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2025-2026』を開催。全13公演すべてがソールドアウトという大成功でしたが、高中さんにとってはどんなツアーでしたか?

高中:もしかしたらこれは夢で、今から起こされるのかな? と。こうやって取材を受けているのも夢かもしれないし、目が覚めたら「これから羽田空港に行って、海外ツアーです」と言われるのかもしれない、なんて思っています(笑)。

——それくらい想定外の出来事だった、と。

高中:2024年に上海で公演を行ったときに「こんなにすごいんだ」と驚いたんですよ。中国でのコンサートは初めてでしたが、どの曲でもイントロが始まった瞬間に「うわーっ!」と大きな歓声を上げて喜んでくれて。ストリーミングサービスなどでずっと聴いていてくれて、曲をよく知っている。そのことを僕が知らなかっただけなんですよ。去年のロサンゼルス公演はさらにすごいことになっていて、今回のワールドツアーはそれを上回って。すごいなってビックリしています。

——しかもどの会場も若いオーディエンスが熱狂しています。

高中:そうですね。若くて元気なのもあるし、国民性の違いもあるでしょうね。今回のツアーではクラウドサーフィンしているお客さんがいたんですよ。僕は初めて見たんだけど、お客さんの頭のうえで波乗りするみたいに動いていて、こっちに手を振って(笑)。ビーチボールを投げている人もいたし、僕らの音楽を聴きながら遊んでる感覚なんだろうね。そういえば、パンツが飛んできたこともありました。たぶん男性モノだと思うんだけど、つまみあげて客席に投げ返したら、また歓声が上がって(笑)。最近、日本のお客さんも以前より盛り上がるようになってきたんです。たぶん海外のコンサートの映像を見て真似しているんだと思うんだけど、無理はしないでほしい(笑)。座って静かに聴いてくれてもいいし、音楽の楽しみ方は人それぞれ、自由なので。

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——海外で高中さんの楽曲が人気だということを発見したきっかけ、時期はいつ頃でしたか?

高中:3年くらい前ですね。きっかけはやっぱりSpotifyなどのストリーミングサービスです。僕の曲もそうだけど、杏里はもっと聴かれていて。竹内まりやさん、CASIOPEAなども人気ですよね。1stアルバム『SEYCHELLES』(1976年)を出したときに、当時のキティレコードの多賀英典社長に「アメリカやイギリスでも売りたいんですよ」と言ったことがあるんです。でも、当時は海外でレコードを売るルートもやり方もわからなくて。多賀さんはアメリカの音楽関係者にいろいろ聞いてくれたみたいなんですけど、「このアルバムはちょっと弱い」と言われたらしいんですよ。その頃はハードロックやヘビィメタルが流行っていたんだけど、僕は「そういうのは疲れるな」と思っていて。ギターもあまり歪ませないで、きれいな音で弾きたかったし、南の島にいるような気持ちいい音楽をやりたかった。そのアルバムが今、世界中で聴かれているのは、すごく嬉しいです。

——70年代のアルバムが時を経て、世界中の音楽ファンを魅了しているのはどうしてだと思いますか?

高中:それは僕が聞きたいくらいです(笑)。自分としては「こういう音楽が気持ちいい」という感じで作っていただけなんですよ。自分が気持ちよくなければ、聴いている人も楽しんでくれないだろうし。当時もたくさんの人に聴いてもらったんだけど、最近は「コンサートの2時間、踊りっぱなしでした」と言ってもらえたりね。「人生、二度おいしい」というか、ラッキーですね。ちなみに今アメリカで人気があるのは4枚目のアルバム『BRASILIAN SKIES』みたいです。

——2024年の上海公演を皮切りにしたライブ、世界ツアーなどはSpotifyのデータを参考にしてプロモーターへの打診を進めていったとのことですが、日頃からそのようなデータをチームでチェックされているのでしょうか。

高中:そこはマネジメントに任せています。たとえばライブで演奏する曲も選んでもらっているんですよ。Spotifyの情報も参考にしてるんだよね?

スタッフ:はい。Spotifyのデータに加えて、現地のリスナーの「この曲をやってほしい」という情報だったり、こちらからプレゼンしたい曲も加えながらチョイスしています。

高中:昔はセットリストも全部自分で決めてたんですよ。でも、インターネットでファンの感想を見てみるといろんな意見があって。もうキリがないから、信頼できるスタッフにやってもらうほうがいいなと。

——海外ツアーのスケジュールにもSpotifyのデータを応用しているとか。

スタッフ:ワールドツアーはLIVE NATIONと組んでいるのですが、データを分析しながら、会場の規模を決めたり、動員を予測しています。高中さんは1曲だけがバズっているのではなく、高中正義というアーティスト自体をフォローしているリスナーが多いので、動員なども比較的正確に読めるところがあると思います。

「トーキョーレギー」「BLUE LAGOON」…人気曲の誕生秘話

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——では、直近のTOPソングランキングに入っている楽曲からいくつかピックアップして、制作エピソードなどを聞かせていただきます。まずは「トーキョーレギー」。1stアルバム『SEYCHELLES』の収録曲です。

高中:「トーキョーレギー」は自分で歌っているんですよ。23歳のときに書いた曲なんですけど、若造がロリポップみたいな感じで歌っていて、今聴くとちょっと恥ずかしいね(笑)。もちろん当時は、自分なりのポップスを目指して作ったんだけど。

——この曲の作詞は高橋幸宏さんですね。

高中:同じバンド(サディスティック・ミカ・バンド/サディスティックス)だったからね。『SEYCHELLES』のドラムは林立夫さんにやってもらったから、幸宏に参加してもらうとしたら作詞かなと。ミュージシャン同士の交流もあまりなかったし、よく知っている人にお願いしました。

——続いては「BLUE LAGOON」、こちらも世界中で数千万回再生を記録しています。アルバム『JOLLY JIVE』(1979年)の収録曲で、1980年にシングルカットされて大ヒットしました。

高中:ちょうどロバート・ブリル(Dr)と一緒にBACCOというバンドをやっていた時期ですね。R&Bの曲を聴いて「こういう明るい雰囲気もいいな」と思ったり、その頃流行っていたディスコのリズムを取り入れたりしながら作ってみたんだけど、上手くいかなくて。その曲の間奏のメロディをAメロにして作り直したのが、「BLUE LAGOON」なんですよ。その頃、仕事がイヤになってグァム島に行ったんだけど、そこで写真家の浅井慎平さんを紹介されたんです。浅井さんは綺麗な海の写真を撮っていて、すごくいいなと思って。原宿のオフィスに遊びにいって、「じつはこういう曲を録っていて、次のアルバムのメイン曲になるんですけど、曲名は何がいいですかね?」と聞いたら、「『BLUE LAGOON』がいいんじゃない?」と。僕も海が好きだし、わかりやすくていいなと思って、タイトルにしました。

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——そして「OH! TENGO SUERTE」(アルバム『SEYCHELLES』収録)は海外のインフルエンサーなどをきっかけに人気に火がついた楽曲。こちらもライブで盛り上がっています。

高中:そんなに盛り上がるようなリズムではないんだけど、メロディの雰囲気が好きなのかな。原曲には女性ボーカルが入っていて、その歌詞も高橋幸宏に書いてもらいました。「セーシェル行きのチケットを手に入れて、なんて幸運なんだ」という意味なんだけど、スペイン語の教科書の例文の言葉を入れ替えただけ(笑)。そのときは「この文章、本当に大丈夫なの?」と思っていたんだけど、アメリカでもイギリスでも何千人が大合唱してくれて、ちゃんと文章として通じていることが実証されました。

ライブで原曲に近いアレンジで演奏する理由

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——ライブではトーキングモジュレーターを使っています。オモチャの吹き戻し笛に息を吹き込む演出もウケていますが、高中さんご自身「お客さんに喜んでほしい」という気持ちがあるのでしょうか?

高中:2時間ずっとインストの難しい曲を演奏するだけだと、飽きちゃうかなと思って。演奏は真剣にやっているから、ちょっとくらいふざけてもいいでしょ(笑)。初めてのソロライブは1977年で、ヤクルトホールという会場だったんですよ。(村上“PONTA”秀一/Dr、坂本龍一/Keyなど)すごいメンバーだったんだけど、コンサートとして良かったのかどうかわからないし、ふざける余裕もなくて。だんだん図々しくなっているのかもしれないですね(笑)。

——さらに「READY TO FLY」(アルバム『TAKANAKA』収録)、「渚・モデラート」(アルバム『TRAUMATIC 極東探偵団』収録)もライブの人気曲になっています。

高中:「READY TO FLY」はクインシー・ジョーンズがハーモニカ奏者のトゥーツ・シールマンスと一緒にやっている楽曲を聴いて、「こういうコード進行もいいな」と思ったのが取っ掛かりだったかな。メロディは全然違うんですけどね。そこにラテンとかサンバとか、テンポが速めで踊れるようなリズムを取り入れたんだと思います。「渚・モデラート」を作った頃は、シャカタクの「NIGHT BIRDS」が流行っていたんですよ。六本木のカフェバーとかに行くと、本当にどこでもかかっていて、悔しいけど気持ちよくて。ピアノのメロディもそうだし、途中で入ってくる女性のコーラスもキャッチーで、「こういうスタイルで作ってみようかな」と。ちょうどリンドラム(ドラムマシン)やシーケンスを使い始めた頃だったから、それを使って遊びながら作ったんだと思います。メロディはちょっと哀愁がかっていて、イントロはストリングスを取り入れて。あの手この手でアイデアを組み合わせてましたね。

——ライブでは原曲に近いアレンジで演奏している印象もあります。

高中:なるべくそうしたいと思っています。ギターソロも、音源に近いほうがお客さんも楽しめるんじゃないかなと。ずっと演奏していると飽きてきて、ちょっと変えたくなるんですけど、そこはちょっと我慢して。青春時代に聴いた音楽は、その人のなかで一生残る気がして。その夢を壊しちゃいけないからね。

——ストリーミングを介して、高中さんの音楽はさらに多くのリスナーに届くことになると思います。高中さんご自身もストリーミングサービスを利用していますか?

高中:「JAZZ RADIO」というアプリを使っています。あとは遅ればせながらSNSをはじめて、南の海の映像のバックに流れている音楽を聴いて「きれいだな」と思ったり。ギタリストの投稿も流れてきますけど、若くて上手い人が多くてビックリしています。自分の曲のカバー動画もけっこうあるんだけど、なんか照れくさいね(笑)。

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——6月11日にはSGC有明で開催される「MUSIC AWARDS JAPAN WEEK SPECIAL LIVE『Surf & Breeze 高中正義 / ANRI』」に出演。9月からは日本国内のツアー『高中正義 SUPER TAKANAKA LIVE 2026-2027』が開催されます(※取材は5月)。

高中:杏里に会うのは何十年ぶりだろう? 80年代は青山のTOKIOというディスコで会ったりしてたんだけどね。国内のツアーもちょっと久しぶりですね。

——日本のオーディエンスも、今の高中さんのライブを待ち望んでいると思います。「この曲を聴いてほしい」という曲はありますか?

スタッフ:いろいろありますが、アルバム『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』でしょうか。海外のオーディエンスからも、『虹伝説』の曲を聴きたいというエネルギーを感じています。

高中:じつは今、アメリカのギタリストと新曲をレコーディングしているんですよ。もしかしたらステージで共演することもあるかもしれないので、ぜひ楽しみにしていてください。

【連載バックナンバー】ストリーミングで出会うマスターピース