Tag: Podcast

クリエイターとリスナーにとって、より信頼できるポッドキャスト体験の構築へ

verifiedpodcasts

 ポッドキャストは進化を続けており、それに伴いSpotifyも進化していますが、私たちが未来を創造するなかで、一つだけ変わらないことがあります。それは、ポッドキャストが「つながり」の上に成り立つメディアであるということです。共同ホスト間のケミストリー、クリエイターと毎週聴いてくれるファンとの関係、そしてアイデアやカルチャーをめぐる対話の中にこそ、ポッドキャストの魅力は宿っています。

 コンテンツ制作がより身近になるにつれ、プラットフォームにおける透明性と信頼性はかつてないほど重要になってきています。そこでSpotifyはクリエイターの信頼性を担保し、リスナーが誰の声を聴いているのかをより明確にするため、今回ポッドキャスト番組向けに「Spotify 認証バッジ」を導入いたします。

 「Spotify 認証バッジ」は、明るいグリーンのチェックマークアイコンとともに「Spotify 認証済み」として表示されます。これは番組ページや検索結果に表示され、クリエイター、パブリッシャー、またはブランドの公式な番組であることを示すためのものです。番組がSpotifyの定める真正性と信頼性の基準を満たしていることを意味し、リスナーが誰の番組を聴いているのかを理解しやすくすると同時に、クリエイターがプラットフォーム上で自身のアイデンティティを確立するための明確な手段となります。

 新しいバッジは本日から一部の番組で表示され始め、今後数ヶ月をかけて順次展開される予定です。対象となる番組は、以下の要素の組み合わせに基づいて確実に認証できるものに焦点を当てます。

■ 継続的なリスナーアクティビティとエンゲージメント:長期にわたって一貫したオーディエンスのエンゲージメントを獲得している番組

■ Spotifyのプラットフォームポリシーへの準拠:コンテンツがSpotifyのルールに準拠しており、良好な状態を維持している番組

■ リスナー層の真正性の確認:不正行為やボットによる再生に対するセーフガードを含め、オーディエンスが真正である番組

 新たなAI技術により、ポッドキャストコンテンツの制作、発見、エンゲージメントはかつてないほど容易になっています。AIが最大限に活用されれば、新たなクリエイティブの可能性が広がり、リスナーがよりパーソナルな方法でポッドキャストと出会う助けになります。しかし一方で、声を偽ったりリスナーを混乱させたりするなど、AIが悪用されるリスクも存在します。

 Spotifyのポリシーは、これまでも無断でのなりすましを禁止してきましたが、改めて生成AIを用いた創作という文脈を踏まえて、このポリシーを再確認します。Spotifyは、AIによる音声クローニングやその他の手法にかかわらず、許可なく他のクリエイターやホストの肖像になりすましたポッドキャスト番組やコンテンツを削除しています。

 クリエイターとリスナーは、Spotifyのすべての活動の中心にいます。ポッドキャストは彼ら同士の「信頼」によって成り立っており、フォーマットが成長する中でその信頼を守ることは不可欠です。

 今回のアップデートは、クリエイター、パートナー、そしてリスナーにとって、より信頼できるポッドキャストエコシステムをサポートするために私たちが講じる一連のステップの第一歩です。今後も取り組みを進め、次のステップを共有していく予定です。

Spotifyの2026年度 Investor Dayレポート メディアの新時代にさらなる高みへ

Spotify Investor Day logo 1600x733 1

 本日、Spotifyはニューヨークにて3度目となるInvestor Dayを開催し、投資家の皆様に向けてビジネス、プロダクト戦略、および長期ビジョンの詳細をご紹介しました。

 今年はSpotify創業20周年にもあたります。本イベントでは、2026年初頭に共同CEOに就任して以来初めてのInvestor Dayに臨んだAlex NorströmGustav Söderström、そしてグローバルリーダーシップチームのメンバーが登壇しました。

 「Spotify Machine」のコンセプトを打ち出してから4年、本イベントではその次なる進化が示されました。プラットフォームはキュレーションとレコメンデーションの時代から、生成の時代へと移行しています。独自の「Large Taste Model」と、ユーザーから日々寄せられる3.4兆件のユーザーの嗜好シグナルを原動力に、真にパーソナルでインタラクティブなメディアの未来を構築しています。Spotifyは、誰もがより多くの方法でコンテンツを制作・発見・つながることができる世界を目指しています。

 登壇者ごとの主要トピックを以下にご紹介します。

Alex Norström 、 Gustav SöderströmによるSpotifyの成長の振り返りと今後の展望

Alex Norstrom and Gustav Soderstrom Investor Day 2026
Alex Norström(左)とGustav Söderström(右)

 両CEOはSpotify創業20周年を祝うとともに184の国と地域7億6,100万人のアクティブユーザーという規模の大きさを強調しました。現在、有料会員数は3億人に迫り、Spotifyは世界最大規模のサブスクリプションビジネスの一つとなっています。

 「Spotifyはクリエイティビティとカルチャーを世界に届けるビジネスを展開しており、アーティスト、クリエイター、作家がオーディエンスとつながり、キャリアを成長させる支援をしています」とAlexは語り、「これほど大きなチャンスはかつてなかった」と付け加えました。

 AlexとGustavは、2022年の前回Investor Day以降の進展として、為替中立ベースの売上高年平均成長率(CAGR)18%売上総利益率32%営業利益率の18%ポイント超の改善、そして2025年のフリーキャッシュフロー約30億ユーロを達成したことを伝えました。

 さらに、Spotifyが今後注力する4つの重要テーマを示しました。

 第1に、エンゲージメントの高いユーザー層からの収益最大化です。「平均的なユーザー」というものは存在しないため、Spotifyは最もエンゲージメントの高いオーディエンスからより多くの価値を引き出すため、より高いARPU(ユーザー一人当たりの平均収益)をもたらすプロダクトやアドオンのポートフォリオを構築しています。これはすでに成果を上げており、Audiobooks+のユーザーはプレミアムユーザーと比較して、複数倍のライフタイムバリューをもたらしています。

 第2に、Spotifyを複数人で楽しめるインタラクティブなプラットフォームにすることです。ユーザーが自然にプレイリストを共有・共同作成する行動に着目したことが、この戦略の出発点です。現在、約5,000万人が利用する「Jam」や共同プレイリスト機能を通じて、音楽を介してリアルな人間関係を強化するネットワーク効果が生まれています。

 第3に、AIを中心とした取り組みです。世界は生成の時代へと移行しており、ユーザーがコントロールを握る時代です。キュレーションとレコメンデーションを超え、各ユーザーの好み・状況・ニーズに合わせてリアルタイムで体験が形成される時代が来ています。Prompted Playlistsやあなたのリスニング趣向などの機能を通じて、ユーザー自身がより多くのコントロールを持てるよう、生成の時代に対応した初のメディアプレイヤーを構築しています。

そして第4に、「Time Well Spent(価値ある時間の提供)」へのコミットメントです。Spotifyがオンラインでの最も価値ある時間として一貫して高い評価を受けているのは、あらゆるコストをかけてエンゲージメントを最大化することではなく、ユーザーが心地よく感じられる持続可能なプラットフォームの構築に注力しているからです。後悔するようなことには時間を使っても、お金を払いたいとは思わないものです。

Gustav Gyllenhammarが10億ユーザーに到達するためのプレイブックを共有

Gustav Gyllenhammar Investor Day 2026
Gustav Gyllenhammar

 マーケット&サブスクリプション担当SVPのGustav Gyllenhammarは、再現性のある成長戦略と、将来10億ユーザーに到達するという確信を示しました。ユーザーの体験は無料プランから始まり、エンゲージメントを高め、習慣を形成しながら、プレミアムへの移行を促す基盤を築いていきます。そこからサービス価値の向上、リテンションの強化、ARPUの拡大へとつなげていきます。この戦略が、市場・カルチャー・成熟度を問わずスケールし続けています。Gustavはまた、AIがこのモデルを加速させ、ローカライズの迅速化や無料プランから有料プランへの転換を適切なタイミングでパーソナライズ可能にしていることも強調しました。

 プレゼンテーションでは、先進市場・成長市場・成熟市場におけるSpotifyビジネスの強さを示す世界各地のデータも紹介されました。スウェーデンでは有料会員の浸透率が人口の50%に迫っており、世界平均の10倍以上です。米国ではMidiaのデータによると、過去6年間でプレミアム市場シェアが8〜10ポイント成長しました。ブラジルではコンバージョン率が2016年以降2倍の44%となり、ユーザー数は14倍に拡大しています。そして月間アクティブユーザー数で最大級のマーケットとなったインドでは、前回のInvestor Day時と比較して会員数が7倍に成長しています。

Nicole BurrowとNatasa Solticが語る「Time Well Spent」をビジネス戦略の核に据える理由

 プロダクトデザイン担当VP Nicole BurrowとコアエクスペリエンスVP Natasa Solticは、Spotifyでの時間を価値あるものにすることが、プロダクト開発およびビジネス成長のすべての基盤となっていることを説明しました。

 Spotifyはプロダクトとカルチャーが交わる場所です。「Spotifyまとめ(Wrapped)」では、2025年に6億2,000万回以上シェアされ、「後悔しない」というシンプルなコンセプトのもと、毎年世界的現象となるマーケティングキャンペーンを実現しています。また、先週公開した、Spotify創業20周年を記念した特別なアプリ内体験には、最初の6日間で約1億人が参加し、サービス開始以来最多となる1日あたりの新規ユーザー獲得数を記録しました。

 「私たちは毎日、Spotifyでの時間が価値あるものになるよう意図的な選択を行っています。Spotifyでの体験を通じて、日常のひとときをより豊かに、パーソナルに、そしてより意味のあるものにしています」とNicoleは語りました。

 「この信念と、ユーザーとの信頼を築く中で私たちが行う選択が、デザインの指針となっています。ユーザーが価値を感じ、意識的に戻ってきたいと思えるような体験に集中し続けられるのはそのためです」。

 また、彼女は最近実施されたブランド好感度調査にも言及し、Spotifyが主要プラットフォームの中で「Time Well Spent」の分野で1位を獲得し、最も「後悔せずに使えるサービス」に選ばれたことも紹介しました。

続いてNatasaは、プロダクトチームがユーザーの行動に注目し、最も重要なシグナルを見極めることから始めると説明しました。SongDNAAbout the Songといった機能はこのアプローチから生まれており、ファンの関心をより深い理解や強いエンゲージメント、再び訪れたくなる体験へとつなげています。3月のローンチ以来、SongDNAは2億6,500万回以上利用されています。

 AIはまた、構想から実行までのスピードを変革し、ユーザーが自分でコントロールでき、つながりとパーソナライゼーションを感じられるプロダクトを届ける大きな力となっています。

Charlie Hellman、 Joe Hadley、 Rene Volkerが描くSpotifyにおける音楽の未来

Charlie Hellman Investor Day 2026
Charlie Hellman

 音楽部門グローバル責任者(SVP)のCharlie Hellman、音楽パートナーシップ&オーディエンスグローバル責任者のJoe Hadley、ライブイベント事業統括のRene Volkerが登壇し、ビジネスの核心である音楽について語りました。

 Charlieはまず、業界へのコミットメントの規模を示しました。Spotifyは2025年だけで110億ドル以上を音楽業界に支払いました。これは前年比10%以上の増加であり、他のすべての音楽収益源の合計成長率の2倍以上にあたります。Spotifyのこれまで音楽業界に対する累計支払額は700億ドルを超えました。

 また、ユニバーサル ミュージック グループおよびユニバーサル ミュージック パブリッシング グループとの画期的なライセンス契約を発表しました。これにより、ファンが参加アーティストやソングライターのカタログからカバーやリミックスを制作できる新ツールをSpotifyがローンチすることが可能になります。同意・クレジット表記・報酬の仕組みを最初から組み込むことで、アーティストやソングライターがすでにSpotifyで得ている収益に加え、新たな収入源を創出します。この新ツールは、Spotify プレミアムユーザー向けの有料オプションとしてリリース予定です。

 Charlieは、次のように語りました。「生成AIは前例のないスピードで創作を加速させています。新しいオリジナル作品と並行して、既存の音楽を基にしたカバー・リミックス・再解釈が急増しています。権利システムがなければ、アーティストは作品のコントロールを失い、価値がクリエイターに還元されないまま生まれてしまいます。これはまさにSpotifyが解決すべき問題です」。

Joe Hadley Investor Day 2026
Joe Hadley

 Joeは、AIへの依存度が高まる世界において、人間の専門知識はより希少で価値あるものになると強調しました。20年にわたるSpotifyのキュレーションの知見とカルチャーへの深い洞察、そしてローカルに根差したナレッジとグローバルなリーチの組み合わせは、簡単に模倣できない独自の基盤です。また、ミュージックビデオの成長にも触れ、プレミアムユーザーの3分の2以上がSpotifyでミュージックビデオを視聴したことを紹介しました。

Rene Volker Investor Day 2026
Rene Volker

 Reneは音楽セクションの締めくくりとして、本日最大の発表の一つである「Reserved by Spotify」を発表しました。これは、アーティストの最も熱心なSpotifyプレミアムユーザーに対して、一般発売前にツアーチケットを2枚確保する初の取り組みで、今夏より米国よりLive Nationをローンチパートナーに迎えスタートします。

 SpotifyはLive Nationチケットへのこのような先行アクセスを提供する唯一のオーディオストリーミングサービスであり、ファンが米国で最も注目される多くのツアーにアクセスできるように支援しますさらに多くの市場への展開も急ピッチで進めています。

 Reneは次のように語りました。「どのストリーミングサービスも、扱っている音楽は同じです。Reservedは、Spotifyにしか提供できないものであり、Spotifyの有料会員である意味を新たに定義するものです」。

Roman WasenmüllerとMaya Prohovnikが描くポッドキャストの未来 収益を生む第2のエンジンへ

 ポッドキャスト部門グローバル責任者(VP)のRoman WasenmüllerとポッドキャストプロダクトVPのMaya Prohovnikがポッドキャストについて詳しく説明しました。

 Romanは、ポッドキャストが黒字化2年目を迎え、成長が加速していることを紹介。またSpotifyの優位性は、エンゲージメントを深めるコンシューマープラットフォーム、広告収益をスケールさせるパブリッシャー、そしてクリエイターの収益化と成長を支援するツール群という3つの事業領域から生まれると説明しました。

 さらに、対象クリエイターがSpotify上で最も熱心なファンに直接サブスクリプションを提供できる新ツール「Memberships」の近日ローンチも発表しました。

 Maya Prohovnikは、ポッドキャストをより見つけやすく、より使いやすくするプロダクトの革新を紹介しました。文字起こし自動チャプターリスニング中のリアルタイム質問機能などが含まれます。

 Mayaは「Personal Podcasts」にも言及し、ユーザーが独自のエージェントでカスタム音声を作成してSpotifyに保存したいというニーズの高まりを受け、Spotify内で短いプライベートなパーソナライズ音声を直接生成できる機能を近日公開予定と発表しました。

 さらに、Pelotonとのパートナーシップによるワークアウトビデオなど、フィットネス体験の拡充にも言及しました。近日中には、ランニング中に希望のテンポやペースを指定してプレイリストをリクエストできる機能も追加予定です。

Owen Smithが示すオーディオブックから書籍全般への拡大戦略

Owen Smith Investor Day 2026
Owen Smith

 オーディオブック部門グローバル責任者(VP)のOwen Smithは、書籍分野での急速な拡大について説明しました。

 2年間でSpotifyのプレミアムにおけるオーディオブックタイトル数は15万から70万以上に成長し、現在22の国と地域で展開しています。リスナーのほぼ半数が35歳未満と市場全体より若い層が中心で、出版業界がなかなかリーチできていなかった「若い男性」層の獲得にも貢献しています。聴取時間は2024年から2025年にかけて60%増加し、オーディオブック利用者のほぼ半数が過去12ヶ月以内に聴き始めた新規ユーザーです。

 異なる読書体験をつなぐツールの開発も続けています。紙の本や電子書籍とオーディオブックをシームレスに行き来できる「Page Match」や、Spotifyアプリから紙の本を購入できるBookshop.orgとのパートナーシップもその一例です。

 Owenは、Audiobooks+が今年7月に年間経常収益1億ドルを達成する見込みであることを明らかにしました。また、ヘビーリーダー向けの追加課金や、ファミリー・学生プランも近日ローンチ予定です。

 作家向けには、「Spotify for Authors」10の新たな言語に拡大すること、6月初旬にベータ版として提供開始されるオーディオブック制作ツールにより、自費出版の作家が独占契約なしでプラットフォーム内のデジタル音声生成を利用できるようになることを発表しました。

 今夏にはオーディオブックへのPrompted Playlists機能も追加予定で、書籍における自然言語での発見が初めて可能になります。

Katie Englishが語る、刷新されたSpotify広告事業

Katie English Investor Day 2026
Katie English

 広告プロダクトグローバル責任者のKatie Englishは、Spotifyの体験を中心に広告ビジネスを再構築したと説明し、「広告プラットフォームはSpotifyのために作られるべきであり、後付けであってはなりません」と述べました。4億8,300万人の無料ユーザーに対して、音楽・ポッドキャスト・動画にわたる優れた広告体験を、一元化された新システムによって提供できる機会を強調しました。

 Katieは、プレミアムスポンサーシップ大規模な運用型広告の成長にも触れ、これらが合わさることで広告主がカルチャー・パフォーマンス・自動化を通じてSpotifyオーディエンスとつながる手段が広がっていると説明しました。入札型チャンネルは現在、広告事業の3分の1以上を占めており、Spotifyは世界最大規模のオーディオ広告取引所の一つとなっています。

 第1四半期の力強いモメンタムにも言及し、アクティブな広告主が前年比68%増となったほか、欧州、中東およびアフリカ地域(前年比約10%増)およびラテンアメリカ(前年比25%増)での大幅な成長が確認されています。今後の展望として、Spotify広告市場の拡大、AIを活用したプラットフォームの強化、Spotifyの環境になじむ新しい広告体験の構築に注力していくと述べました。

Gustav SöderströmとNiklas Gustavssonsが語る、AIがもたらすSpotifyのビジネス変革

Gustav Soderstrom Investor Day 2026
Gustav Söderström

 Gustav Söderströmがエンジニアリング担当VPのNiklas Gustavssonとともに再登壇し、次世代のパーソナライズ体験を支えるインテリジェンスとインフラの構築について説明しました。

 Gustavは、SpotifyのAIにおける長期的な優位性は最先端のLLMを構築することではなく、独自の「Large Taste Model(LTM)」に汎用インテリジェンスを適用することから生まれると説明しました。LTMは音楽・ポッドキャスト・オーディオブックにわたる数兆件の行動シグナルと長年のユーザーインタラクションデータで学習されています。LTMはユーザー行動、ライセンスされたメタデータ、クリエイターツール、文化的コンテキストなど複数の知識レイヤーを組み合わせることで、レコメンデーションを超えたリアルタイムの生成とパーソナライゼーションを実現します。

 早期展開ではすでに測定可能なエンゲージメント向上が見られ、Autoplay(自動再生トラック)の楽曲保存数9%増、ホームからのポッドキャスト発見率9%改善、DJメッセージとのインタラクションが約20%増加しています。Gustavは、AIは単なるコスト削減の手段ではなく、リテンションの強化、ライフタイムバリューの向上、そして最もエンゲージメントの高いユーザー向けのプレミアムAI体験やアドオンを組み合わせた段階的な価格モデルを支える収益化の機会であると主張しました。

 続いてNiklasは、AIがSpotifyのプロダクト開発の手法やリリースのスピードをいかに変革しているかを説明しました。メンテナンス作業を自動化し、エンジニアがよりスムーズに動けるよう支援するSpotify社内のAIコーディングエージェント「Honk」を紹介しました。現在、Spotifyエンジニアの99%が毎週AIを活用しており、コードコントリビューションの73%以上がAI支援によるものです。AIを活用したワークフローにより、社内全体でのアイデアのプロトタイプ作成・テスト・検証にかかる時間が大幅に短縮されています。

Niklas Gustavsson Investor Day 2026 1
Niklas Gustavsson

 Niklasはまた、ユーザーとSpotifyの関わり方が大きく変わりつつあることについても説明しました。従来、Spotifyはスキップや保存などのシグナルから意図を推測していました。生成AIにより、ユーザーは自然言語でSpotifyに直接リクエストできるようになり、DJPrompted Playlistsあなたのリスニング趣向など、よりインタラクティブでパーソナライズされた体験が実現しています。

 さらに「Studio by Spotify Labs」を発表しました。Personal Podcastsをさらに進化させる単独のデスクトップアプリで、毎日のニュースまとめなどのプライベートなパーソナライズ音声を生成し、Spotifyのライブラリに直接保存できます。20以上の国と地域のプレミアムユーザー向けに先行体験版として近日公開予定です。Studioは音楽・ポッドキャスト・オーディオブックにわたるユーザーの好みを理解し、幅広い情報をもとに聴きたい音声コンテンツをより素早く見つける手助けをします。また、トピックのリサーチ、ウェブ検索、情報整理、日常ツールを使ったタスク実行など、ユーザーに代わってアクションを起こすことも選択できます。

 最後にNiklasは、SpotifyのAIにおける競争優位性は「Large Taste Model」から生まれると強調しました。これは音楽・ポッドキャスト・オーディオブックにわたるリスニング&エンゲージメントデータを理解・予測するために訓練されたシステムです。

Christian Luigaが示す財務サマリーと今後の成長戦略

Christian Luiga Investor Day 2026
Christian Luiga

 CFOのChristian Luigaは、2022年以降の進展と2030年目標への道筋を説明しました。売上総利益率の改善のうち約3分の1は音楽事業が、残りはオーディオブックとポッドキャストが牽引しています。現在、音楽・非音楽のいずれのセグメントも売上総利益率30%超を達成しており、2025年のマーケットプレイスから生み出した粗利益は、2021年の4倍となりました。

 また、Christianはこれまでの改善が規律ある財務モデルの成果であることも強調しました。ユーザーと有料会員数の拡大、売上総利益率の向上、そしてリターンが見込める分野への投資を続けながら、コストも厳しく管理しています。米国だけで2022年以降に顧客LTVが70%以上増加しており、ビジネスモデルの強さと投資効率の高さが裏付けられています。

 2030年に向けた財務目標として、売上高のCAGRが10%台中盤売上総利益率35〜40%営業利益率20%以上、そしてフリーキャッシュフローの力強い成長を掲げています。

 Christianはこう付け加えました。「本日お伝えしてきた通り、Spotifyの成長を支える仕組みはすべてつながっています。私たちが重視するKPIはエンゲージメント・収益・効率・そしてリテンションです。Audiobooks+からDJ、そしてReservedに至るまで、それぞれの施策には明確な数値目標が設定されています。そしてこれらの施策が互いに連動し積み上がることで、LTVの継続的な向上につながります」。

両CEOが締めくくる「野心を高める年」への誓い

Alex Norstrom Investor Day 2026
Alex Norström

 Alex NorströmとGustav Söderströmは、Spotifyの目標と今後の展望を改めて示し、イベントを締めくくりました。Alexは、本日共有されたアップデートは、Spotifyの将来性を確信している理由を示すものであり、その根拠は、これまで築いてきた規模だけでなく、その先に広がる大きな機会にもあると述べました。

 Gustavは、Spotifyの進化がアクセスパーソナライゼーション生成という明確な道筋を辿ってきたと説明しました。各ステップがSpotifyの可能性を広げながら、規模・データ・ユーザー理解における優位性を複利的に積み上げてきました。

Gustav Soderstrom Investor Day 20261
Gustav Söderström

 Alexは締めくくりとして次のように語りました。「次のステージで最も重要なもの、嗜好、信頼、そしてカルチャーは、Spotifyが常に大切にしてきたものです。それが私たちの存在意義であり、私たちが成果を上げてきた領域であり、そしてこれからも築き続けていくものです」。

 Gustavはこう締めくくりました。「私たちが築いてきたものを誇りに思います。そして、次の20年がさらに楽しみです」。

Spotify 2026年 Investor Dayのすべてのニュースと発表はこちらよりご覧いただけます。
また、一部のサービス・特典はご利用いただける地域が限られます。

ーーーーーーーー

・将来見通しに関する記述
上記記載の一部には、1933年米国証券法(改正済み)第27A条および1934年米国証券取引所法(改正済み)第21E条に定義される「将来見通しに関する記述」が含まれておりますので、ご留意ください。「will(〜する予定)」「expect(予想する)」「believe(考える)」その他これらに類する表現は、将来見通しに関する記述を示すことを意図したものです。将来見通しに関する記述には、当社の将来業績に関する予測または見積もりに関する記述などが含まれますが、これらに限定されるものではありません。

これらの将来見通しに関する記述には、重大なリスク、不確実性および前提条件が含まれており、その結果、実際の結果が当社の過去の実績や現在の期待または予測と重大な差異を生じる可能性があります。これには、新規ユーザーを獲得し既存ユーザーを維持する能力、ならびに当社の製品およびサービスを収益化する能力、ユーザー・ユーザーの利用時間・広告主を巡る競争、当社の国際事業に関連するリスク、当社の成長ならびに事業規模および事業の複雑性を管理する能力、人工知能の活用に関連するリスク、ならびに米国証券取引委員会への提出書類に記載されたその他のリスクが含まれますが、これらに限定されません。

当社は、本書の日付以降に発生した事象または状況を反映するために、将来見通しに関する記述を更新する義務を負うものではありません。

非IFRS財務指標:上記の説明には、国際財務報告基準(IFRS)に従って算定された財務指標の代替として解釈されるべきではないnon-IFRS財務指標が含まれています。これらのnon-IFRS財務指標と最も比較可能なIFRS財務指標との調整については、当社ウェブサイトに掲載されているCFO Investor Dayプレゼンテーションの付録をご参照ください。

広告パートナーとともに奏でる未来──日本発・グローバル初『Spotify Advertising Agency Awards 2025』レポート

20260312 advertisingagencyawards00031

 Spotifyは2026年2月27日、渋谷 Spotify O-WESTにて、広告会社向けのイベント『Spotify Advertising Agency Awards 2025』を開催しました。

 このイベントは、Spotifyの広告ソリューションを深く理解し、クライアントのビジネス成長に貢献してくださった、Spotifyと共に新たな広告体験を切り拓くパートナーのみなさまへの感謝を形にするために誕生したイベントです。今回はアワード形式で「Agency of the Year」や「Hitmaker」「Multi-format Maestro」「Rising Star」「DIY Impact」「Amplifier」といった各賞を発表いたしました。本稿では会場を包み込んだ熱気と、各社代表の皆様から語られたエピソードの数々をレポートいたします。

20260313 advertisingagencyawards00002

パートナーとの共奏がもたらしたSpotify広告の「進化」

20260313 advertisingagencyawards00007

 ラジオパーソナリティ・ナレーターのサッシャ氏が司会を務めた今回のアワードは、表彰式に先立ち、Spotify JAPAC 広告事業部統括のエリサ・ケルサルより、本アワードの核となる4つの評価軸が語られました。それは、音という枠組みを超えてオーディエンスを動かす「Creative Excellence」、Spotify広告マネージャーをはじめとするソリューションを駆使する「Platform Mastery」、大胆な挑戦で市場に活気をもたらす「Growth Momentum」、そして卓越したビジネス成果を共奏する「Partnership Impact」です。

20260313 advertisingagencyawards00015

 続いて、Spotify Japan 広告営業統括部長の磯田 敬太郎より、2025年のビジネスアップデートが共有されました。現在、日本のSpotifyユーザーは年々拡大しており、特に昨年秋に行われたフリープランの大幅アップデートが巨大な推進力となっていることを明かしました。

 会場の耳目を集めたのは、データによって裏付けられたSpotify広告の圧倒的なパフォーマンスです。電通ジャパン・インターナショナルブランズ様との「アテンション・エコノミー」の検証では、単に画面に広告が表示されているかだけでなく、「ちゃんと見られ、ちゃんと聴かれているか」という深いアテンション指標において、Spotify広告が非常に強いインパクトを持つことが実証されました。 さらに、動画プラットフォーム単体での出稿よりも、動画プラットフォームとSpotifyの音声広告を掛け合わせたクロスメディア展開の方が、ブランドリフト効果が著しく高いという結果も発表されました。

 また、電通様とのデータクリーンルームを用いた検証では、オフラインの店舗来店リフトにおいても高い貢献度が確認されており、Spotifyが単なる認知目的のメディアから、フルファネルでビジネスインパクトを生み出すメディアへと確実に進化していることが示されました。

受賞者たちが語る、Spotifyとともに歩んだ軌跡とその可能性

 続いて、Spotify Japanの広告事業クリエイティブ戦略統括である橋本 昇平が登壇し、表彰式がスタート。橋本は音声・動画・ディスプレイなど、Spotifyの幅広い広告フォーマットを巧みに使いこなし、革新的なキャンペーンを生み出した代理店に贈られるアワード「Multi-format Maestro」のプレゼンターを務めました。同賞を受賞したのはdentsu Japan。代表して、電通デジタル プラットフォーム部門 プラットフォーム4部の日比野みく氏が登壇しました。

 日比野氏は受賞スピーチにて「今朝、自分のSpotifyプレイリストを見たら『勇敢な朝(Brave Morning)』というタイトルが表示されていました。今日という日にふさわしく、ガチガチに緊張していた私の背中を押してくれたような気持ちになり、さすがSpotifyのユーザー分析だと驚きました」とコメント。続けて「私たちは広告会社として、ユーザーの生活動線に寄り添ったこのプラットフォームで、あらゆる広告フォーマットを活用しながらアプローチすることが一番の活用法だと信じてきましたので、今回”マエストロ”と名の付いた賞をいただけたことを大変光栄に思います」と力強く語りました。

20260313 advertisingagencyawards00013

 Spotify Japan プロダクトマーケティング&パートナーシップマネージャーの河田 淳がプレゼンターを務めた「DIY Impact」は、Spotify広告マネージャーを使いこなし、DIY精神あふれるセルフサーブの取り組みで売上に貢献した代理店に贈られるアワードで、受賞したのはdentsu Japan。同社から電通デジタル プラットフォーム部門 プラットフォーム4部の遠藤ひなの氏が登壇し「DIYという名前の通り、自らSpotifyの広告マネージャーを触り、試し、学び、改善し続ける。その自走する力や挑戦する文化を評価していただけたことがチーム全体の誇りです」と述べました。

 3つ目の賞である「Amplifier」は、Spotify広告マネージャーの成長をリードし、導入の推進、フィードバック、教育、そして新たな取り組みに至るまで幅広く貢献した代理店担当者に贈られるアワード。プレゼンターであるSpotify Japan 執行役員 カスタマーサクセス本部長の林 大輔が電通デジタル プラットフォーム部門 プラットフォーム4部の小尾口 陽菜氏の受賞を発表すると、会場からは大きな歓声が起こりました。

20260313 advertisingagencyawards00004

 自身の兄弟がポッドキャストに精通しているという小尾口氏は、受賞スピーチで「日常的に『Spotifyって体験としてすごくいいよね』と家族で話していた中でアサインを受け、運命を感じました。いざ運用を始めるとその奥深さに魅了され、プロダクトに専念するため社内で異動願いを出したほど熱中しました」とコメント。

20260313 advertisingagencyawards00016

 続けて、小尾口氏が初期の広告マネージャーは機能が限られており、事例も少ない状況だったなかで「事例がないなら自分が一番最初に作ろう」と奮起したことを話すと、林は「Spotifyに対して英語で60ページにも及ぶ渾身のプロダクトフィードバックを提出してくれたことは、Spotifyチームにとってもひとつの“伝説”として語られており、その熱意がグローバルの開発チームを動かした」と明かしました。

 その後、小尾口氏は具体的な運用ノウハウについて「没入感の高いSpotifyでは、戦略的にフリークエンシーを高める方が記憶の定着や信頼感に直結します。耳への刷り込みを計算し、ボトムファネルにも寄与できるように設計することが重要です。また、テキストからボイスオーバーを生成できる機能により、ナレーションのトーンによるABテストのスピードが劇的に上がったことも大きな強みです」と、プロフェッショナルならではの視点で語りました。

 Spotify Japan・エージェンシーパートナーの峯苫 龍之介がプレゼンターを務めた「Rising Star」は、2025年に目覚ましい成長や大胆なイノベーション、そしてブレイクスルーとなる成果を生み出し、Spotifyの可能性を大きく広げた“ライジングスター”として輝きを放った代理店2社に贈られるアワード。受賞したオプトとワンメディアの2社からは、それぞれオプト プラットフォームサクセス本部 VPの山本 孝太郎氏とワンメディア 代表取締役CEOの明石 ガクト氏がスピーチを担当。山本氏は、「我々はダイレクトマーケティングのお客様が多い中、Spotifyというプラットフォームに大きなポテンシャルを感じました。営業全員を集めて勉強会を実施し、社内の認知を上げたことで、取扱高を前年比6倍にまで拡大することができました」と、組織を挙げた圧倒的な推進力の裏側を語りました。

20260313 advertisingagencyawards00006

 続いて明石氏は、動画マーケティングを主戦場とするワンメディア社が音声に取り組む理由について「実は2年前から『これからは音声の時代に突入する』と信じて向き合ってきました。ビジュアル表現でできることも多いですが、音声だからこそできる深いコミュニケーション、心に残る新しい体験にものすごい可能性を感じています」と語り、この日の朝に自社で制作するポッドキャスト番組が、強豪ひしめくランキングの中で長年の壁であった超人気ラジオ番組を抜いて急上昇ランキングで1位に輝いたと報告。「時間をかけて育てれば必ず結果は出る。共にこのプラットフォームを盛り上げましょう」と熱く呼びかけ、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こりました。

20260313 advertisingagencyawards00028

 Spotify Japan 執行役員 営業本部長の岸 昭がプレゼンターとして登壇した「Hitmaker」は、Spotifyにおいて数多くの「ヒット」を生み出し、目覚ましい成長を遂げた代理店に贈られるアワード。2025年、トップクラスの広告出稿実績を誇り、戦略的なパートナーシップを通じてオーディエンスの心を掴み続けた会社として受賞したのは博報堂・Hakuhodo DY ONE。代表して登壇した博報堂 プラットフォーマー戦略局の眞口 健司氏は「トップクラスの実績と高い成長を評価いただき光栄です。この賞は『2026年はさらにもう一段高いところを目指せ』というSpotifyからのメッセージだと受け止めています。グループで連携し、さらに上を目指していきたい」と、次なる飛躍への力強いコミットメントを示すスピーチを披露しました。

 最後に発表された「Agency of the Year」は、2025年にSpotifyとのパートナーシップにおいて最も卓越した成果を収めた代理店に贈られる、最高位のアワード。年間を通じて最大の広告出稿実績を記録し、市場を牽引する戦略的なアプローチでSpotifyのビジネスに最大級の貢献を果たした会社に選ばれたのはdentsu Japanだ。代表してスピーチを行ったのは電通デジタル プラットフォーム部門 部門長の荻島 裕樹氏。同氏は「Spotifyの皆さんのことを、我々は家族のように感じています。オフィスにお邪魔すると必ず置き手紙を用意してくださるなど、この賞はSpotifyの皆様の手厚いサポートがあってこそのものです」と、深い信頼関係を強調。続けて荻島氏は「競合他社の方々とカラオケに行くと必ず盛り上がるように、そこにはいつも『音』があります。Spotifyはセレンディピティのあるメディアであり、自分のステータスに合わせて曲を流し、知らない世界を見せてくれます。まさに『熱狂の渦中にあるメディア』です」とSpotifyの魅力を熱弁しました。

 そして最後に「実は今日、ぎっくり腰で立っているのも辛い状況なのですが、今朝Spotifyから流れてきたZARDの『負けないで』に励まされてこの場に立っています」というユーモアと愛に溢れたエピソードを披露し、会場は温かな笑いと万雷の拍手に包まれました。

20260313 advertisingagencyawards00012

 その後、表彰式の興奮冷めやらぬ中でSpotify Japan 上級執行役員 広告事業部統括の香川 晴代による「Closing Remarks」が行われました。デジタル広告の黎明期から様々なグローバルプラットフォームを牽引してきた香川が「日本の音声広告市場の巨大なポテンシャルと、それを開花させるためのエージェンシーの皆様との強固なパートナーシップの重要性」を力説し、第一部が終了いたしました。

 その後のAfter Partyでは、参加者の皆様にSpotifyのブランドカルチャーを五感で楽しんでいただくための特別なエクスペリエンスが用意されました。 会場を彩るのは、Spotifyのネオンが煌めくスタイリッシュなバーカウンター。そこでは音楽ジャンルやプレイリストをモチーフにしたオリジナルカクテルや上質なフードが振る舞われ、グラスを傾けながら業界の垣根を越えた活発なネットワーキングが行われました。また、受賞の喜びや仲間との記念の瞬間を切り取る特設のフォトブースも設置され、会場は笑顔に包まれていました。

 そして、この熱狂の夜を音楽で祝福してくれたのが、Spotifyが選ぶ注目の新進気鋭アーティストをサポートするプログラム「RADAR: Early Noise 2021」にも選出された音楽プロジェクト、Tokimeki Recordsです。都会の夜を舞台に、80年代から90年代の洋楽・邦楽の名曲をノスタルジックなサウンドで奏でる彼らのスペシャルなライブパフォーマンスは、オーディエンスの心を優しく、そして力強く揺さぶりました。データやロジックが飛び交うビジネスアワードの最後に、純粋な「音楽の力」で参加者が一つになる瞬間。これこそが、他社のいかなるビジネスアワードとも異なる、Spotifyにしか生み出せない独自のカルチャーを表していたといえるでしょう。

 この日登壇した各社のスピーチの端々から感じられたのは、Spotifyというプラットフォームへの深い愛着と、音楽やカルチャーへの愛を広告につなげることへの飽くなき探求心。これからもSpotifyは、かけがえのないパートナーの皆様とともに、音を通じた新たな熱狂を世の中に届けてまいります。

20260313 advertisingagencyawards00022

音の力を信じ、クリエイティビティを解き放つ。『Spotify Hits Japan 2025』受賞作品発表

spotifyhits2025main

 Spotifyは2025年11月10日、恵比寿のBLUE NOTE PLACEにて、広告事業者および広告会社向けのイベント『Spotify Hits Japan 2025』を開催しました。

spotifyhits2025ent

 このイベントは、日本では今年で2回目となるSpotify主催の広告賞『Spotify Hits』の授賞式として開催。昨年から規模を拡大し、3つの部門賞とグランプリである「Spotify Mic Drop」に加え、公募制の「Future Hitmakers」から3作の受賞作品が発表されました。

 会場には、合計100名を超える受賞者やファイナリスト、広告主・広告会社関係者が集まりました。

 開会の挨拶には、この日のためにニューヨークから来日したSpotify グローバル広告事業クリエイティブ戦略統括のケイ・スー(Kay Hsu)が登壇。クリエイター、ブランド、パートナーへの心からの感謝を述べ「みなさんのクリエイティビティ、そして音の力を信じるその情熱がこの機会を特別なものにしています」と語りました。『Spotify Hits』は、革新的な音声広告を称える場として始まりましたが、いまでは「クリエイター、マーケター、ストーリーテラーたちが音の可能性を広げるために集うコミュニティ」にまで進化していると強調。特に日本市場については「本当に素晴らしい」と絶賛し「ここから生まれる作品は、大胆で感情豊かで、そしてとても人間的です」と評価しました。

spotifyhits2025hsu

 Spotify入社前のHsuはビジュアルメディアでブランドのストーリーテリングを手がけていたが、音声コンテンツと出会うことで「価値観が変わった」と告白。「音には人の心を動かす不思議な力があるし、目には見えないけれども心に残る」こと、その力がSpotifyを特別なプラットフォームにしているのだと述べました。最後にHsuは「みなさんはトレンドを追う側ではなく、トレンドを作る側です」と、会場に集まったクリエイターたちを鼓舞し、「想像力を祝い、チャレンジを称える」一日になることを期待し、授賞式が幕を開けました。

spotifyhits2025prize

 ここからは、実績のあるキャンペーンを対象とした3つの部門賞とグランプリの授賞式の模様を、プレゼンターによる選考コメントと受賞者の喜びの声に焦点を当ててご紹介します。

〈Ear Candy部門(ベストイマーシブオーディオキャンペーン)〉

受賞作品:『サラウンドコマーシャル「円陣」&「円陣(部活)」』
広告主:大塚製薬(ポカリスエット)
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社:ビッグフェイス / ステップ / 音響ハウス

 「3DオーディオやASMR、スクリプトの工夫など、音声ならではのテクニックを活用して最も没入感のある体験を実現したキャンペーン」を表彰する部門である〈Ear Candy部門(ベストイマーシブオーディオキャンペーン)〉のプレゼンターを務めたのは北原規稚子氏(MICHI inc. CEO / Brand Creator)。

spotifyhits2025kitahara

 北原氏は「Spotifyユーザーの8割以上がイヤホンを使用して聴いている」というデータを踏まえ、審査では「リスナーの体験を邪魔せずに楽しんでもらえる没入感ある体験を、いかに実現できているか」 という点を重視したと説明しました。受賞作である大塚製薬株式会社(ポカリスエット)の『サラウンドコマーシャル「円陣」&「円陣(部活)」』については、ブランド体験として「シンボリックに象徴される部活の円陣のシーンに一気に連れていかれるような世界観」 が作り込まれている点を評価。「Spotifyのテクノロジーや特性、聴いているターゲットの状況をよく理解された上で作られていた」と絶賛しました。

20251111spotifyhitsootsuka

 今回の受賞について、大塚製薬の受賞者は「他メディアでは映像中心の施策が多いなか、『音だけで感情を動かす新しいアプローチ』に挑戦した」と語り、バイノーラル録音で臨場感ある音を再現し、リスナーが円陣の中にいるような感覚を楽しめるよう徹底的に音にこだわった結果、「音で汗を感じる」没入感ある広告体験を実現できたと明かしました。

〈Seized the Moment部門(ベストモーメントキャンペーン)〉

受賞作品:『家路言』
広告主:サントリー(金麦)
広告会社:電通
制作会社:AOI Pro.

 「特定のモーメントを捉え、クリエイティブなアプローチでユーザーとエンゲージしたキャンペーン」 を表彰する〈Seized the Moment部門(ベストモーメントキャンペーン)〉のプレゼンターを務めたのは和佐 高志氏(Jukebox Dreams 代表取締役CEO)。

spotifyhits2025kazusa

 和佐氏は同部門について「Spotifyならでは、かつブランドと親和性の高いモーメントを的確に捉えている」 作品が多かったと振り返り「広告ではなく“モーメント”、重要なのはリアルタイムでありコンテンツ、という時代が来ています」 と広告の概念の変化について言及。受賞作の金麦『家路言』については、仕事帰りにオンからオフへ切り替わる「帰宅中」というモーメントの刈り取り方が「すごく妙でした」と評価。特に、電車やバスなどの「環境音」が入っており、リスナーが意識することなく「その世界に没入して自然に入っていく」 パワーが素晴らしかったと述べました。

image 2

 受賞について、担当者は「従来の『帰れば金麦』というコミュニケーションに加え、これまで交通広告程度で手つかずだった『帰宅動線』をどう捉えるかをクリエイターと共に考えた」と種明かしをしてくれました。また、企画のインサイトとして、冒頭にゆったりした曲調にアレンジした「蛍の光」を流すことで「オンの状態からオフへのスイッチになった」という発見が、クリエイティブの価値を決定づけたと説明しました。結果として、ROIは約170%改善、広告認知も20〜40代で150%向上という成果を収めたと語りました。

〈For the Fans部門(ベストオーディエンスストラテジーキャンペーン)〉

受賞作品:『い・ろ・は・す 2025年コミュニケーション「きっとあしたも、いい感じ」』
広告主:日本コカ・コーラ(い・ろ・は・す)
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社:VML & Ogilvy Japan / WPP OpenX / プラチナム / アクセンチュア

 「Spotify上のアーティストやクリエイターのファンたちと効果的にエンゲージしたキャンペーン」 を表彰する部門である〈For the Fans部門(ベストオーディエンスストラテジーキャンペーン)〉では、Dos Monosのメンバーであり、クリエイティブディレクターとして活躍しながら、人気音声コンテンツを多数手掛けるTaiTan氏(ラッパー・クリエイティブディレクター)がプレゼンターとして登壇。

spotifyhits2025taitan

  TaiTan氏はアニメ、声優、人気アーティストなど「性格が全然違う」 ファンダムを捉えた作品が並び「決め手をどこにするかで悩んだ」 と審査の難しさを語りました。その上で受賞作の『い・ろ・は・す 2025年コミュニケーション「きっとあしたも、いい感じ」』については「藤井風さんのような『大きなファンダムを持っているアーティスト』 にアプローチする際はコンフリクト(衝突)やハレーションが起こる可能性も極めて高いが、それを乗り越えていったことが決定打になった」と述べました。続けて「音声広告は『嫌われたら一瞬でおしまい』という世界のなかで”直球ど真ん中”を射抜いた」 重要なキャンペーンだと評価しました。

image 1

 受賞者は「若年層との『より強い絆』 を求めてキャンペーンを始めた」と説明し、そのうえで「情報過多で疲れている若者に対して透明で邪魔にならない、気持ちいい存在として、『きっとあしたも、いい感じ』というポジティブな気持ちを提供したい」と考えたと語りました。その結果、非常にシンプルなキャンペーン設計ながら、ファンから非常に大きな反響を得ることに成功したと、喜びを語りました。

〈Spotify Mic Drop(グランプリ)〉

受賞作品:『#LoveYourMistake「Knock Turn」』
広告主:ヤマハ
広告会社:電通東日本
制作会社:ピラミッドフィルム / Massive Music

 全キャンペーンの中で最も優れていた作品に贈られる〈Spotify Mic Drop(グランプリ)〉について、プレゼンターとして登壇したのはSpotify Japan 広告事業クリエイティブ戦略統括の橋本 昇平。

spotifyhits2025hashimoto

 橋本は、グランプリ作品について「満場一致で決まりました」 とヤマハ株式会社『#LoveYourMistake「Knock Turn」』の名前を発表。歴史あるヤマハというブランドがSpotifyというプラットフォームを新しい使い方で活用し、世界共通のインサイトを捉えてグローバルに展開している素晴らしいキャンペーンだと評価しました。

image

 受賞者は、ショパンのノクターンという有名な楽曲を崩すことは「かなりギリギリの判断」 だったと認めつつ、メッセージを貫き通したチームに感謝を述べました。企画の背景には、楽器練習に取り組む時間の「8〜9割は苦しい時間である」 というユーザーインサイトがあったと言います。「このネガティブな時間をポジティブな時間に変え、ブランドとして寄り添うこと」がメッセージだったとし、そのうえで「ただ楽曲を崩すのではなく、練習データからユーザーが「ここで間違う、ここでストップしちゃう」という箇所を抽出し、あえてそのまま楽譜に起こして制作。曲名も「ノクターン(Nocturne)」ではなく「Knock Turn」というスペルにしたと説明しました。

 また、リスナーが思わずクスッと笑い、「あるある」と共感する心理設計が奏功。結果、高い聴取完了率(94.61%)と目標の約2.5倍の楽譜閲覧数を記録しました。

 続いて、30歳以下の若手クリエイターを対象に実施された公募部門「Future Hitmakers(ベストイノベーティブアイディア)」 では、3社から出された課題に対し、最も優れたキャンペーンアイデアが表彰されました。

ファミリーマート賞(テーマ:フードロス削減)

受賞作品:博報堂『フード・ロス市警からのミッション “ファミマの値引き商品を救出せよ”』
審査員:足立 光氏(ファミリーマート チーフ・クリエイティブ・オフィサー)
制作会社:西村亮平 / 清水将也(いずれも博報堂)

 足立氏は、トランシーバーの音から始まる「キャッチーさ」 や、「音声による行動喚起」 の観点でアイデアを高く評価。値引き商品を「助けよう」というコンセプトが、ファミリーマートの「いろんな可能性に一貫している」 と述べました。

20251111spotifyhitsfamima

 受賞チーム代表の西村氏は、ファミリーマートの「涙目シール」という既存施策の上に、Spotifyのプラットフォームの強みを使って「体験を拡張させよう」 としたと説明。「無線通信風」のクリエイティブ表現も功を奏し、考えた世界観を「聴覚的に立体化する」 ことができた喜びが語られました。

味の素賞(テーマ:若年層向けコミュニケーション)

受賞作品:ワンメディア『猫舌クノール 〜聴き終えると、ちょうどいい温度になるプレイリスト〜』
審査員:向井 育子氏(味の素 食品事業本部マーケティングデザインセンター副センター長)
制作会社:小宮寛平(ワンメディア)

 向井氏は、「ブランドイメージとのマッチングが最終的な決め手」 とし、「猫舌」という切り口が、スープを熱い温度で溶かさなければならないが故にすぐ飲めない、というインサイトを捉えており、共感を呼ぶと評価。クノールの基本価値である「心と体を温める」という優しさと合致していた点を絶賛しました。

20251111spotifyhitsajinomoto

 受賞者の小宮氏は、自身の猫舌の経験から、スープが「ちょうどいい温度になるまで待てばいい」 と考え、その待ち時間をSpotifyらしく「音楽をディグする時間」 に変えることを発想の出発点としたと明かしました。

KDDI賞(テーマ:UQ mobileがつなぐ、青春の瞬間)

受賞作品:電通デジタル『一生ものプレイリスト』
審査員:馬場 剛史氏(KDDI ブランド・コミュニケーション本部 本部長)
制作会社:髙屋敷日奈子 / 大川憧子 / 植木隆斗(いずれも電通デジタル)

 馬場氏は、審査は混戦だったが、受賞作は「UQ mobileらしさ」 から企画を立てており、同社の企業理念である「つなぐ」 が企画にしっかりと落とし込まれている点を評価。また、「ギガがいっぱい使える」 というUQ mobileの特徴ともコンセプトが合致していたと述べました。 

20251111spotifyhitskddi

 受賞チーム代表の高屋敷氏は企画について「『ずっと聴いている曲って高校生や中学生時代の曲ばかりではないか?』 という気づきから、それを示す研究結果のファクトに着目した」と説明。工夫した点について、学生にとって「いま聴いている曲は一生ものになる」と訴求し、親世代にも「この子がたくさん音楽を聴けるよう、ギガの多い会社にしよう」と思わせる共感設計にしたとし、さらに、Spotifyが毎年年末に行う「Spofiryまとめ」のようなまとめ機能を活用し、10代が今年一番聴いた曲が一生もののプレイリストになるというアイデアを提案しました。

spotifyhits2025talksession

 授賞式の後には、Spotifyの橋本と博報堂の嶋浩一郎氏、電通の佐藤雄介氏によるパネルディスカッションや、19歳の大学生シンガーソングライターAKASAKIさんによるスペシャルライブパフォーマンスが行われ、受賞者やファイナリストたちを祝福しました。

spotifyhits2025akasaki

 閉会の挨拶を務めたのは、Spotify Japan 執行役員 営業本部長の田村 千秋。「昨年初めて開催してから1年間、その間にこんなに進化すると思わなかった」 と語り「みなさんと一緒にトレンドを作れていることをすごく光栄に思っています」 と、デジタル音声広告クリエイティブの急速な進化への驚きと喜びを表明しました。

 なお、授賞式終了後にはネットワーキングタイムが設けられ、来場者たちはSpotifyのロゴが入った限定フードやドリンクを楽しみながら、クリエイティビティへのインスピレーションを共有しました。

 Spotify広告の「音の可能性」がどこまで広がるのか、その未来への期待が高まるばかりです。

 Spotify、広告・音声表現を表彰する『Spotify Hits Japan 2025』を開催し、各部門の受賞作品を発表

image

グランプリにはヤマハの#LoveYourMistake「Knock Turn」が選出

 世界で7億1300万人以上が利用するオーディオストリーミングサービス Spotify(会社名 Spotify AB / 本社 Stockholm、Sweden)は、2025年11月10日、音の力で人とブランドをつなぐ革新的な広告・クリエイティブを称えるアワード「Spotify Hits Japan 2025」を開催し、各部門の受賞作品を発表しました。

 「Spotify Hits」は、Spotifyのストリーミング体験と広告ソリューションを掛け合わせ、ユーザーの感情や行動を動かす“音のクリエイティブ”を広く発信・表彰することを目的に創設されました。日本では2回目の開催となる本年度は、実績あるキャンペーンを対象とする部門に加え、若手クリエイターによるアイデアを競う公募部門の両軸で展開されました。

受賞概要

 2025年の「Spotify Hits」では、ブランド課題に対して革新的な方法で音声を活用し、ユーザーとの新たな接点を生み出したキャンペーンが多数選出されました。 グランプリ「Mic Drop」部門を含む、全5部門で音の持つ可能性を最大限に生かしたクリエイティブが表彰されました。

各部門の受賞企業紹介

  • Spotify Mic Drop(グランプリ)部門

#LoveYourMistake「Knock Turn」

https://www.youtube.com/watch?v=DhUS0yzV3v0
広告主:ヤマハ
広告会社:電通東日本
制作会社:ピラミッドフィルム / Massive Music

 楽器練習中の“ミス”を前向きに捉え、「ミスを愛そう」というメッセージを音で届けたキャンペーン。クラシックを好むリスナーに向け、ショパン《ノクターン Op.9-2》をベースに42人の演奏データから「ミスあるある」を解析・着想し、新たな楽曲を制作。日本・イギリス・インドの演奏者が参加し、音声広告の新たな表現領域を切り拓きました。

image
image
  • Ear Candy(ベスト・イマーシブ・オーディオ・キャンペーン)部門

サラウンドコマーシャル「円陣」&「円陣(部活)」
*権利の都合上、音声は掲載不可

広告主:大塚製薬(ポカリスエット)
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社:ビッグフェイス / ステップ / 音響ハウス

 バイノーラル録音を駆使し、リスナーが「円陣」の中にいるような没入体験を創出。音だけで感情を動かす新たなアプローチで、ポカリスエットブランドの好意度向上を実現しました。

20251111spotifyhitsootsuka
20251111spotifyhitssum02
  • Seized the Moment(ベスト・モーメント・キャンペーン)部門

家路言
https://www.youtube.com/watch?v=zPwBkI8GQY4
広告主:サントリー(金麦)
広告会社:電通
制作会社:AOI Pro.

 “帰宅時間”というモーメントを捉え、金麦ブランドの「癒し」イメージを音で表現。ゆったりした「蛍の光」のアレンジと声の演出により、仕事のON/OFFを切り替える感情の瞬間を描きました。

image 2
20251111spotifyhitssum03
  • For the Fans(ベスト・オーディエンス・ストラテジー・キャンペーン)部門

い・ろ・は・す 2025年コミュニケーション「きっとあしたも、いい感じ」
https://www.youtube.com/watch?v=Lzp29MQwJ-s
広告主:日本コカ・コーラ(い・ろ・は・す)
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社:VML & Ogilvy Japan / WPP OpenX / プラチナム / アクセンチュア

 藤井風氏の楽曲「真っ白」と共に展開し、心地よいライフスタイルを提案。Spotifyを通じた音声・動画・プレイリストのマルチフォーマットでの音楽的世界観の共有で、ファンダムとブランドが共鳴する体験を創出しました。

image 1
image 1
  • Future Hitmakers(ベスト・イノベーティブ・アイディア)部門

味の素賞:「猫舌クノール 〜聴き終えると、ちょうどいい温度になるプレイリスト〜」
ワンメディア / 小宮寛平

20251111spotifyhitsajinomoto

KDDI賞:「一生ものプレイリスト」
電通デジタル / 髙屋敷日奈子 / 大川憧子 / 植木隆斗

20251111spotifyhitskddi

Family Mart賞:「フード・ロス市警からのミッション “ファミマの値引き商品を救出せよ”」
博報堂 / 西村亮平 / 清水将也

20251111spotifyhitsfamima

 いずれもSpotifyの音声広告フォーマットを活用し、若者世代に響く創造的なアイデアが評価されました。

審査体制

 本年度の「Spotify Hits」では、広告業界および音声・メディア領域の第一線で活躍するプロフェッショナルが審査員として参加し、厳正な審査を実施しました。

 総合審査員として、MICHI inc. 代表取締役/Brand Creatorの北原規稚子氏、株式会社電通 クリエイティブディレクター/CMプランナーの佐藤雄介氏、株式会社博報堂 執行役員の嶋浩一郎氏、ラッパー/クリエイティブディレクターのTaiTan氏、Spotify Japan広告事業 クリエイティブ戦略統括の橋本昇平氏、Jukebox Dreams 代表取締役CEOの和佐高志氏が審査を担当しました。

 また、「Future Hitmakers」部門の企業代表審査員として、株式会社ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター CMO / マーケティング事業本部長 CCRO 兼 デジタル事業本部長の足立光氏、KDDI株式会社 ブランド・コミュニケーション本部 本部長の馬場剛史氏、味の素株式会社 食品事業本部 マーケティングデザインセンター副センター長 コミュニケーションデザイン部長の向井育子氏が参加しました。

 審査は一次審査、最終プレゼンテーション審査を経て行われ、創造性・オーディオ体験の深さ・ブランド課題との整合性・データ活用の先進性などを総合的に評価しました。

今後に向けて

 Spotifyは、今後も音が持つ可能性と広告のクリエイティビティを融合させ、ブランドとユーザーのより深い関係構築を支援していきます。

『Spotify Hits Japan 2025』ファイナリスト作品決定

『Spotify Hits Japan 2025』ファイナリスト作品決定

 今年で2回目の開催となる広告賞「Spotify Hits」。今年もたくさんの素晴らしい作品が集まりました。今年は3つの部門に加え、協力企業3社からの募集テーマに対するクリエイティブアイディアを評価するFuture Hitmakers部門も新設。厳正な審査の結果、全25作品がファイナリストに選出されました。グランプリと各部門の受賞作品は、11月10日(月)の授賞式で発表予定です。Spotify Hits Japan 2025の詳細はこちらをチェック。

『Spotify Hits Japan 2025』ファイナリスト作品決定

 音声ならではのテクニックや特殊効果を活用し、最も没入感のある体験を実現したオーディオキャンペーン。

サラウンドコマーシャル 「円陣」&「円陣(部活)」
広告主:大塚製薬
ブランド:ポカリスエット
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社・関連会社:ビッグフェイス / ステップ / 音響ハウス

「音声広告x立体音響」での没入感のある音での訴求 ネスカフェ エクセラ ボトルコーヒー
広告主:ネスレ日本
ブランド:ネスカフェ エクセラ ボトルコーヒー
広告会社:電通デジタル / 電通
制作会社・関連会社:BubbleWrap

Talisker 「一瞬で、大自然。」キャンペーン
広告主:MHD モエ ヘネシー ディアジオ
ブランド:Talisker
広告会社:TBWA HAKUHODO
制作会社・関連会社:ヒッツコーポレーション

#LoveYourMistake「Knock Turn」
広告主:ヤマハ
ブランド:企業広告
広告会社:電通東日本
制作会社・関連会社:ピラミッドフィルム / Massive Music

オリジナルAIを用いて、ブラックサンダーを食べたときのザクザク音を再現【織田信長のザクザク音】
広告主:有楽製菓
ブランド:ブラックサンダー
広告会社:博報堂
制作会社・関連会社:playknot / フォンテック

Seized the Moment ベストモーメントキャンペーン

 特定のモーメントを捉え、クリエイティブなアプローチでユーザーとエンゲージしたキャンペーン。

家路言
広告主:サントリー
ブランド:金麦
広告会社:電通
制作会社・関連会社:AOI Pro.

BAUMホリデーシーズン ブランドプレイリスト企画
広告主:資生堂ジャパン
ブランド:BAUM
広告会社:博報堂
制作会社・関連会社:博報堂ケトル / invisi / HEACON LABO / music studio db fukuoka

Sofy Tampon IMC
広告主:ユニ・チャーム
ブランド:ソフィ ソフトタンポン
広告会社:博報堂

Shu-Chew Beats
広告主:ロッテ
ブランド:ガム全体
広告会社:博報堂
制作会社・関連会社:VIXI

For the Fans ベストオーディエンスストラテジーキャンペーン

 Spotify上の特定のアーティストや楽曲、コンテンツジャンルなどのファンをターゲットにし、彼らと効果的にエンゲージしたキャンペーン。

YOASOBIの主題歌で彩る『ウィッチウォッチ』キャラクターたちがアニメの魅力をお届け
広告主:ウィッチウォッチ製作委員会
ブランド:TVアニメ「ウィッチウォッチ」
広告会社:ADKマーケティング・ソリューションズ

L・システィーン デビューシングル「晴れの自分はつくれる」
広告主:エスエス製薬
ブランド:ハイチオール
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社・関連会社:電通クリエイティブフォース / Aoi Pro. / OFFICE DOING / OFFICE HIGUCHI / Your Agent Tokyo

い・ろ・は・す 2025年コミュニケーション「きっとあしたも、いい感じ」
広告主:日本コカ•コーラ
ブランド:い・ろ・は・す
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社・関連会社:VML & Ogilvy Japan/ WPP OpenX / プラチナム / アクセンチュア

ぼくらの春曲キャンペーン
広告主:ユニバーサルミュージック
ブランド:#ぼくらの春曲キャンペーン
広告会社:電通 / 電通デジタル
制作会社・関連会社:TYO MONSTER

Future Hitmakers ベストイノベーティブアイディア #1 味の素賞

テーマ 「味の素(株) 商品ブランドと若者を音でつなぐコミュニケーション」 

うまシッソ!!
スタッフリスト:(所属会社名 / 氏名 / 肩書き)
電通 / 森 達哉 / プランナー
電通 / 山口 高幸 / プランナー

Cooking Beats!コリアぁ〜食べたい!
スタッフリスト:
Septeni Japan / 田中 良平/ クリエイティブプランナー
Septeni Japan / 古賀 陸生 / クリエイティブプランナー
Septeni Japan / 三木原 麻佳 / クリエイティブプランナー
Septeni Japan / 高橋 かれん / クリエイティブプランナー
Septeni Japan / 石田 陽子 / クリエイティブプランナー

猫⾆クノール 〜聴き終えると、ちょうどいい温度になるプレイリスト〜
スタッフリスト:
ワンメディア / 小宮寛平 / プランナー

PLAYLIST RECIPE
スタッフリスト:
電通 /海谷 拓実 / プランナー・UIUXデザイナー
電通 / イー スピン / アートディレクター・UIUXデザイナー
電通 / 齋藤 敬介 / コピーライター・プランナー
電通 / 古杉 佑太郎 / プランナー・コピーライター

Future Hitmakers ベストイノベーティブアイディア #2 KDDI賞

テーマ 「UQ mobileがつなぐ、青春の瞬間」

一生ものプレイリスト
スタッフリスト:
電通デジタル / 髙屋敷 日奈子 / コピーライター・プランナー
電通デジタル / 大川 憧子 / プランナー
電通デジタル / 植木 隆斗 / デザイナー

音の鳴るクラT
スタッフリスト:
ADKマーケティング・ソリューションズ / 泉 聡一朗 / CMプランナー
ADKマーケティング・ソリューションズ / 田中 里奈 / ビジネス・プロデューサー
ADKマーケティング・ソリューションズ / 山内 沙南 / ビジネス・プロデューサー
ADKマーケティング・ソリューションズ / 渡辺 尊 / クリエイティブ・プランナー

Spotify保健室
スタッフリスト:
電通 / 岡村 香穂 / プランナー
電通 / 池田 樹 / プランナー・アートディレクター

つながりが、青春を強くする。
スタッフリスト:
ビーコンコミュニケーションズ / 山﨑 菜々実 / グラフィックデザイナー

UQ 応援ソングミサンガ
スタッフリスト:
ケー・アンド・エル / 福原 弘志 / コピーライター
テテマーチ / 大隅 絢加 / プランナー
個人 / 世一 麻恵 / プランナー

Future Hitmakers ベストイノベーティブアイディア #3 Family Mart賞

テーマ 「日常の中のちょっといい選択を、ファミマと一緒に」

ファミマ寄ってください! キャンプフードの嘆き
スタッフリスト:
博報堂 / 池邊 航太 / Activation Planner・Strategic Creator
博報堂プロダクツ / 松村 ひかる / ディレクター・プランナー
博報堂 / 田嶋 千寛 / デザイナー

ファミマルのささやき
スタッフリスト:
ADKマーケティング・ソリューションズ / 草野 達哉 / ビジネスプロデューサー
ADKマーケティング・ソリューションズ / 萩原 陽菜 / ビジネスプロデューサー
ADKクリエイティブ・ワン / 渡邊 大己 / アクティベーションプランナー

フード・ロス市警からのミッション “ファミマの値引き商品を救出せよ”
スタッフリスト:
博報堂 / 西村 亮平 / クリエイティブ職
博報堂/ 清水 将也 / ビジネスデザイン職

明石ガクト×野村高文対談 「若年層にポッドキャストが人気の理由と企業のポッドキャスト活用」

20250728 akashinomuratalk00008

 PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、ニューズピックスを経て、2022年にChronicleを設立し、現在は音声プロデューサー/編集者として活躍する野村高文氏と、ワンメディア株式会社の創業者・代表取締役社長であり『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』などを著書に持ちながら、現在は『Fashion Victim』を配信するなど、音声コンテンツに可能性を感じている明石ガクト氏。それぞれコンテンツ制作のプロフェッショナルである2人は、ポッドキャストが盛り上がっている現状をどのように考えているのでしょうか。

 今回はそんな両者に音声コンテンツ・音声広告の魅力について伺うインタビューを実施。Spotifyが独自に調査したポッドキャスト利用に関する調査結果なども交えながら、若年層のポッドキャスト利用の現状や、若者に向けた効果的な音声コンテンツ・ブランデッドポッドキャストの届け方などについて、じっくりと語りあっていただきました。

ーーSpotifyの調査によると、10代から30代の音声コンテンツサービス利用者のうち、元々若年層含有率の高いSpotifyを通して使っている方が半数近く、と最も多いようです。いま若年層にポッドキャストが広がっている背景には何があると思いますか?

明石:まずは、ワイヤレスイヤホンの普及はかなり大きいと考えています。今、電車の中や外を歩いていて、イヤホンをつけてない方の方が少ないくらいですよね。また、僕は「YouTubeとの役割の違いが明確になってきた」とも感じています。まず、ポッドキャストには画がないですよね。私自身、ワンメディアという会社を経営して動画制作をずっと行ってきたのですが、画がありきで考えるストーリーと、画がない前提で考えるストーリーというのは全く別物なんです。ポッドキャストは声だけで伝えるのが得意な人が活躍できるメディアであり、テレビに対するYouTubeのように、ラジオに対するポッドキャストという二項対立的な概念が、ここ数年で急激に定着してきたと感じます。

20250728 akashinomuratalk00002

明石:さらに、動画の世界では、アップロードする人が増えすぎて、コンテンツが飽和し、時間の奪い合いが極限に達しています。昔は100万再生が当たり前だった動画でも、今は厳しくなってきていますから。だからこそより細かい隙間時間や「ながら」の時間にフィットするメディアが求められており、その結果として「ショート動画の隆盛」と「ポッドキャスト人気」が生まれているのだと考えます。

ーー可処分時間の奪い合いにおける最後の砦が「ながら時間」であり、そこにハマったということですね。

明石:シェールガス採掘みたいですよね。これまで採取できなかったけど、テクノロジーの進化によって採れるようになった、みたいな(笑)。

ーーそうした行動変容の部分でいえば、コロナ禍の世の中を経た、という部分も大きかったりするのでしょうか。

野村:僕は元々日本にあった深夜ラジオカルチャーの流れが大きく影響していると考えています。テレビやYouTubeのような「顔出しで大勢の前で話す」場とは異なり、ラジオには「素顔をこっそり語る」という文化が長く存在していました。芸人の方がラジオ局の深夜枠で本音を語る番組が人気でしたが、ここ数年間は「親密に“素顔の話”をする場」がポッドキャストにも広がっています。

20250728 akashinomuratalk00001

野村:それは現在のお笑いブームや、様々な文脈で人気を得ている芸人さんたちが多いこと、さらにそのコアな話を聴ける場としてポッドキャストを選ぶ方が多いことが大きな要因だと考えています。ラジオ局の放送枠には限りがあって、起用されないと場を得られませんが、ポッドキャストは芸人さん自身が自由に場を持てますから。

ーーちなみにお二人はどのような隙間時間でポッドキャストを聴くことが多いですか?

明石:先ほどお話しした細かい移動時間もそうですが、飛行機移動のような長距離で特定の番組を一気聴きしたり、家事の合間に聴くことも多いですね。先日もカンヌとの往復でコテンラジオ(『歴史を面白く学ぶコテンラジオ (COTEN RADIO)』)をまとめて聴きましたし、家事に関してはポッドキャストを聴くようになってから率先的にやるようになった気がします(笑)。

野村:私も実際に家事がはかどるようになりました(笑)。皿洗いや部屋の片付けなど、手が塞がっていても耳が空いている家事と相性が良いので、そっちを積極的に担当するようになったりして。退屈だった時間を有意義なエンタメの時間に変えることができている実感がありますね。

20250728 akashinomuratalk00007

ーーSpotifyの調査結果によると、移動中、仕事中、勉強中、家事中など、まさに「ながら聴き」で利用されており、学習に使えるイメージも持たれています。特に若年層は学習目的で利用を開始する傾向があるものの、最終的にはエンタメコンテンツを多く聴いているという結果も出ています。それらの点を踏まえて、若年層はポッドキャストを「どう使っている」と感じますか? 

野村: 彼らはトレンドセッターに近く、様々なジャンルに興味を持ち、新しいものへの抵抗が少ない傾向があります。単なる情報収集や暇つぶしだけでなく、生活の一部、習慣として組み込まれているという感覚が強いですね。弊社の制作している番組でも「休日の犬の散歩中に聴くのが日課になっている」などという声が多くあり、まさに人生のルーティンに組み込まれていると感じます。

明石:わかります。私が関わっているある番組でも、前に配信の曜日を変更していいかどうかをリスナーの方にアンケート形式で聞いてみたのですが、見事に「生活の中に組み込まれているから変えないでほしい」という意見が圧倒的多数でしたから。

ーーお二人の関わっている番組がいずれもそうだ、というのは貴重な情報ですね……。

野村:動画コンテンツは流行り廃りのサイクルが早く、ともすれば「使い捨て」になりがちな中で、ポッドキャストは一度好きになってもらえれば、その後もリスナーの人生に寄り添い続けられる特徴があります。これは、コンテンツが単なる消費ではなく、深い体験となっている証拠だと思います。あと、私はコンテンツクリエイターとして「情報は人生を変える」と思っていて。せっかく作るなら人々の人生に良い作用があるようなものを作りたいという気持ちで活動しているのですが、ショート動画では人生が変わらないなと。

ーーなるほど。そう思われた理由はなんでしょう?

野村:自分がこれまで人生を変えられてきたものって、書籍や映画、それに誰かとじっくり話した経験、つまりは“長い時間をかけて体験したこと”なんです。文芸評論家の三宅香帆さんも著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で、同様のことを指摘されていますが、「自分が知りたい情報を検索してすぐに答えが出てしまうことって、今の課題を解決するものの、これまでの自分の枠組みから外に出ないぶん、人生を変えることにはならない」なと。ただ、スクリーンに向き合い続けている私たちの人生において、集中して何かをみるのはだんだん難しくなってきている。だからこそ、スクリーンを見なくても受容できるポッドキャストは、今の時代において数少ない“長くても大丈夫なコンテンツ”なのだと思います。

ーーそれらを踏まえて、若年層が「熱心に聴いてくれる番組」と「スルーされる番組」の違いはなんだと考えますか?

野村: 若年層が熱心に聴いてくれる番組にはいくつかの特徴があると思います。コンテンツの種類としては、道具としての有用性を求める場合と、共感や安心感といった心理的な快楽を求める場合に分かれます。Spotifyの上位コンテンツにお笑いが多いのは、後者の価値が大きいと感じますね。番組が人気化するためには、まず「発信者が誰であるか」「何者であるか」がリスナーにある程度見えることが非常に重要です。その人がどういう課題を持ち、どんな視点に基づいて話をしているのか。音声コンテンツは聴けば聴くほど良さが分かりますが、その手前にある番組のコンセプトや発信者のキャリア、概要欄などで、自分が何者で何を語っているのかを開示・説明することは可能です。それが世間の課題を捉えていると、人気が出やすい印象があります。

明石:動画の世界でも「やらされてる人」はダメですからね。自ら「なぜマイクの前に・カメラの前に立っているのか」という意思が明確な人ほど強いんです。あとは、同性同士のトークが人気なことも面白いと思っていて。「盗み聴き感」のようなものが重要で、自分もそのインナーサークルに入りたいと思えるような番組が人気を集めている印象です。

ーー同性同士のトーク番組で人気のコンテンツはたしかに多いですね。

明石:昨年の流行語に「界隈(かいわい)」という言葉が入って一気に「界隈」という言葉が一般化しましたが、ポッドキャストはまさに「界隈」のメディアだと感じます。『コテンラジオ』は歴史界隈、『経営中毒 〜だれにも言えない社長の孤独〜』は経営者界隈のように、従来のマス媒体や動画ではメディア化しづらかったニッチなテーマ、ビジュアルで表現しにくい抽象的な話も、ポッドキャストならコンパクトに始められ、それが「私のための番組だ」と色んな人が思えるものが支持されている傾向にあると思います。

野村:まさに明石さんのおっしゃったように「関係性」にリスナーがつくという点がポッドキャストの大きな特徴です。発信している情報ももちろん大事ですが、パーソナリティ同士が楽しそうに話している、その関係性自体にリスナーが魅力を感じているということです。

20250728 akashinomuratalk00004

ーー若年層に対して「音声でのアプローチ」が広告として有効になってきているという感触はありますか?

野村: 若年層へ音声コンテンツでアプローチすることは非常に有効だと思います。特にポッドキャストでは、リスナーが広告を「番組をサポートしてくれるもの」として捉え、「ありがとう」という感謝の気持ちを抱きやすいというユニークな特徴があります。これは、広告がノイズになりがちな他の媒体とは大きく異なる点ですね。

ーーそれ以外に、映像やSNSに比べて音声広告にはどんな強み・差別化ポイントがあると考えますか。

野村:映像やSNSに比べた音声広告の強みは、リスナーとの深い信頼関係と、広告がコンテンツ体験にシームレスに溶け込める点にあります。ポッドキャストは、再生回数よりも「滞在時間の長さ」や「リピート率」といった体験の質が重視されます。最後まで聴かれる割合が高く、各エピソードの再生数が安定しているため、パーソナリティとリスナーが深く繋がっていることが数字にも表れています。これは、コンテンツが単なる消費ではなく、リスナーの人生の一部になる「体験」であるためです。

ーーでは、音声コンテンツ・音声広告のKPIについてはどのように考えますか?

明石:動画の世界は再生回数のようなわかりやすいKPIに注目が集まっていましたが、ポッドキャスターにおいて再生回数はあまり関係ないと思っています。

野村:そうですね。具体的な指標でいえば「滞在時間の長さ」と「リピート率」に注目すべきでしょう。弊社が作った番組も、音声を一度再生すると最後まで聴いてくれる率が高いんです。さらに、特定のエピソードに偏らず、各回の再生数がそこまで変わらないのも面白いですね。パーソナリティとリスナーの一人ひとりが素通りする関係性ではなくて、かなり深くつながっていることがよくわかるエピソードとデータだと思います。

明石:例えば『奇奇怪怪』は最近長尺化が止まらなくて、毎回2時間くらいの尺になっているのですが、これってもう毎週映画を見ているくらいの長さなわけですよね。これをひとつのIPが体験させようと思うと、なかなか難しいことだし、再生回数などでは計り知れないインパクトです。「習慣化」という言葉には収まりきらない強度があるというか…。

野村:たしかに「脳の回路が組み替えられてる」くらいの粘着性がありますよね。同じ1回の再生数でも、深さと強さが全く違うように感じます。

20250728 akashinomuratalk00003

ーーたしかにその感覚はよくわかります…。ちなみに、お二人が最近「これはうまくハマってるな」と感じた企業コラボやスポンサー付き番組があれば教えてください。

明石: 昨年の番組になるのですが、FUJI ROCK FESTIVALのポッドキャスト『READY FOR FUJI ROCK FESTIVAL’24 supported by iichiko』ですね。麦焼酎の「いいちこ」がスポンサードしている事例で、毎回出演アーティストをゲストに迎えてトークする番組なのですが、面白いのは冒頭に「いいちこ」で乾杯してから話を始めるものの、そこから「いいちこ」は全然出てこなくて。ただ、リスナーには好きなアーティストが「いいちこ」で乾杯し、楽しそうに話しているのがわかるので、ブランドネームのプレイスメントは冒頭の一瞬だけでも、その後の30分間はリスナーの頭の中に「いいちこ」が存在し続けるんです。見えないからこそ、シチュエーション自体にうまくブランドがプレイスメントされ、想像力を掻き立てるという構造が非常に優れていると感じました。

野村:なるほど。家具や空間、飲食物などの「ながら」で消費される商品や製品は、音声ならではの想像力を活かしたプレイスメントと非常に相性が良いかもしれませんね。

ーー野村さんはご自身が手掛ける番組のなかで、手応えを感じた瞬間などはありますか?

野村:数々の番組を配信する中で、企業がポッドキャストを発信することの意義がかなり見えてきました。一定のクラスタのリスナーに対して、深くメッセージを届けられるメディアのため、リスナーから従業員採用に結びついたり、顧客の獲得につながることは再現性のある効果として発生しています。また職業的専門性に基づき、体系的な発信をすることで、出演者がその業界の有識者として認知されることも、企業活動にとって計り知れない効果をもたらしていると感じます。

ーー明石さんは若年層をターゲットにしている企業に対して、Spotifyでのポッドキャスト施策をどう提案していますか?

明石:そもそも動画などの視覚コンテンツを見まくっている若者の心の深いところを撃ち抜くには、従来とは異なる手法、つまり音声でやらないと目立つことはできません。動画の得意な領域と、音声の得意領域は違うので、企業さんには「誰かの人生にとって大事なものになり、コミュニティになっていくようなところに対して、広告資金を投下していく必要があるのでは?」と話しています。映像化しづらいようなテーマや、極端にマニアックなもの、そういった従来のマスコミュニケーションでやりづらいものほど、ポッドキャストには向いていると考えます。そうやって作られるコミュニティは絶対的な数が多いわけではないが、その一人ひとりがエヴァンジェリストになってブランドを広めていってくれる味方になる。だからこそ企業はポッドキャストをやるべきなんです。

20250728 akashinomuratalk00006

ーー最後に、若年層に向けてポッドキャストでの発信を検討されている企業の皆さまへメッセージをお願いします。

野村: 若年層に響くコンテンツ作りにおいては、「企業が言いたいことを主にするのではない」という姿勢が非常に重要です。あくまで、企業が持つ知見や歴史など、リスナーが「面白い」と感じてくれるであろう情報やストーリーを提示することから始める「ギブファーストの精神」が大事です。それが面白いと感じてもらえてから、徐々に自社のメッセージを織り交ぜていく形が理想です。番組によってリスナーさんがどういう属性で何が好きかというのがはっきりしている・偏っているのがポッドキャストの特徴でもあるので、その番組の特性を把握しつつ、そこにマッチする企業と番組がともにコンテンツを作ることが、共感されるブランデッドポッドキャスト番組につながってくると思います。

明石:ポッドキャストのリスナー、特に「ながら聴き」で積極的にインプットしようとしている層は、「丁寧に生活をしている人」「人生に対してプロダクティブな人」という属性があると感じています。彼らは空き時間に家事をしたり、ウォーキングをしたりと、時間を有効に使おうとしている層です。そういった層に対しては、単なる商品紹介ではなく、彼らのライフスタイルに寄り添い、生活をより豊かにするような知見や体験を提供するテーマが向いています。例えば、ワイドショーのように「話が入ってきているのかいないのか分からない」ノイズではなく、ポッドキャストで「フランス革命についてこういうことだったんだ」と知るような、有益なインプットになる情報が好まれる傾向がありますね。

20250728 akashinomuratalk00005

野村:「深い情報」が重要とは意識しつつも、スクリーンに向き合っていると集中力が持続しにくいというのが、現代人に共通する課題だと思います。音声コンテンツは、スクリーンから解放されることで、長く滞在しても無理なく情報をインプットできる唯一のメディアです。企業が発信するコンテンツも、このような「人生を変えるような深い情報」や「具体的な課題解決に繋がる知見」を、「友人同士の会話」のような親密なトーンで提供することが、これからも求められ続けるでしょう。

若年層のポッドキャスト利用についてより詳しく知りたい方は、「Culture Next ポッドキャスト利用実態編」をチェックしてください。

(撮影=林直幸)

世界的クリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト氏が考える“音声コンテンツ”の魅力とは?

20250226 reiinamoto 99

 グローバル・イノベーション・ファームI&COの創業パートナーであり、世界を股にかけて活躍するクリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト氏。彼は『レイイナモトのライフアカデミー』『レイ・イナモト「世界のクリエイティブ思考」』でパーソナリティを務めるポッドキャスターとしての一面も持ち合わせています。

 今回はそんなイナモト氏に、音声コンテンツ・音声広告の魅力について伺うインタビューを実施。Spotifyが独自に調査した音声広告に関する調査結果なども交えながら、クリエイティブ〜マーケティングに必要なことについて、たっぷりと語っていただきました。

Spotifyの魅力は、「発見」できるところ

——まずは読者に向けて、ご自身のこれまでの経歴やポッドキャストを含む直近でのお仕事などについて教えていただけますか。

イナモト氏:空港で入国審査の際には「デザイナー」と書くんですが、実際には色んなことをやっている人間ですね。「企業の変革パートナー」という立ち位置で、経営者や経営層の方々と、企業の「次の仕組み」をつくる仕事をしています。日本の企業だと、それに加え、ブランドをどうやって世界に打ち出していくかや、世界でのブランド力を上げるためのお手伝いもしています。

20250226 reiinamoto 01

——そんなイナモトさんは、どういったバックグラウンドをお持ちなのでしょう?

イナモト氏:元々はデザイナー畑の出身で、自分でゴリゴリといろんなものを作ることが好きでクリエイティブ業界に入りました。僕がちょうど大学生の時にインターネットが盛り上がり始めて。当時はPhotoshopもFigmaもなんならFacebookもInstagramもありませんでしたし、コンピューター自体の性能もすごく原始的だったので、限界がすぐに見えてしまって。自分の表現の幅をもっと広く深くするためにコンピューターサイエンスを勉強しはじめて、現在はテクノロジーとクリエイティビティの可能性を合わせた新たな発見を日々追い求めています。

——イナモトさんが考えるSpotifyの魅力とは?

イナモト氏:自分の知らない世界を発見できる、というのが一番の魅力だと感じています。興味のある領域——自分の好きな音楽やポッドキャストなどが深掘りできて、さらに、自分の好みに合った他のコンテンツも見つけることができる、新しい発見と驚きに出会えるツールですね。

——そのなかでもお気に入りの機能などはありますか?

イナモト氏:毎年チェックするのは「Wrapped (日本での名称は “Spotifyまとめ”)*」。あまり気にしていなかったけど実は聞いていた、という曲が発見できるのですごく面白いんです。2024年はそこまで聴いていた意識のなかったジャズの曲が1位になっていて驚きました。聴き返して見ると仕事中に聴いていたような気がしたので、よくこの曲を聴いて集中していたんでしょうね。先日リリースされた新機能「daylist」も使ってみましたが、プレイリストのタイトルは「Jazz coffee Thursday morning」でした。僕自身を端的に表してくれているようで面白いですね。

 あとはリスナーとしてではなくポッドキャスターとしての立場になってしまいますが「Spotify for Podcasters」もよく使っています。リスナーとしてもポッドキャスターとしても使っているという意味では、自分にとってすごく特殊なプラットフォームかもしれません。

*Spotifyまとめとは、世界中のユーザーがSpotify上での聴取履歴から自身のこの一年を振り返ることができる企画です。その年に最も聴いたアーティストや楽曲、音楽ジャンルのほか、音楽再生時間、最も聴いたポッドキャスト番組などのデータを、Spotifyアプリ上でお楽しみいただけます。

音声は「親近感と信頼」が生まれやすいフォーマット

——ポッドキャストの話が出たので、そちらについても伺わせてください。現在は『レイイナモトのライフアカデミー』『レイ・イナモト「世界のクリエイティブ思考」』の2番組でパーソナリティを務められていますが、それぞれの番組を始めたきっかけは?

イナモト氏:ライフキャリアコーチをしている妻が活動の一環としてポッドキャストを配信していて。彼女から「簡単だからやってみたら」と勧められて始めることにしたんです。それが『レイイナモトのライフアカデミー』という一人で話している番組で、そこから派生する形でチームとして作っている番組が『レイ・イナモト「世界のクリエイティブ思考」』です。

 目的はそれぞれの番組で明確に違います。『レイイナモトのライフアカデミー』は、自分で何かを考えて伝えていくことをとにかく重要視しています。逆に『レイ・イナモト「世界のクリエイティブ思考」』では様々な方とお話しして新たな視点や考えを吸収していくことを大事にしていて。それぞれで話したこと、考えたこと、感じたことが自分にとって、新たな学びや発見になっているんです。

——そのようにして複数の番組で目的を分けられているのですね、とても面白いです。逆に共通しているものはあるのでしょうか。

イナモト氏:これはポッドキャストに限らずですが、ここ5年くらいの間、自分の個人的なミッションとして掲げているのは「Make Japan Matter」という言葉で、日本語で言えば「日本を世界で必要不可欠な存在にする」という意味があります。僕は海外に出てもうすぐ25年ですが、2000年前後くらいは「日本って物価が高いよね」なんてアメリカやヨーロッパに住んでいる友人たちに言われたものです。ただ、2010年くらいから僕の周辺の人がある種の危機感があると教えてくれていて。当時は「本当にそうかな?」と反感を持っていたのですが、一歩下がって冷静に見てみると、たしかに日本の存在感は年々薄れていっているように感じましたし、2025年の現在はその危機感が現実のものとなっています。僕は生まれてから最初の15年を日本で過ごしてきたので、それがすごく残念に思えてきて。いち個人として大きな貢献ができるわけではありませんが、自分の経験や視点を発信することで、これからの日本を支える誰かにインスピレーションを与えられればいいなと思い、細々と配信をしているんです。

——ビジネスシーンなどでもリスナーが多い番組だという印象があるのですが、番組を聴かれていると実感した出来事はありますか?

イナモト氏:日本に帰国すると、全然知らない方にまで「ポッドキャスト聴いてます!」と話しかけていただくことが結構あるんです。嬉しいと同時に、日本でもポッドキャストの普及が進んでいるのを感じます。

——イナモトさんが考える「広告と音」の結びつき、そして「広告における音の重要性」とは?

イナモト氏:「音声メディア」というものは別に新しいものでもなく、1900年にラジオが発明されたころから存在しますし、音声広告もその数十年後に生まれてきたので特に新しいものではありません。ただ、Spotifyのようにそれを発信するプラットフォームが新しくなっていることや、TikTokなどが大きな影響を与えるのではと言われていたアメリカ大統領選でポッドキャストが対局を左右したことが象徴するように、存在感が増していることは間違いありません。

 なぜ音声コンテンツに人が集まり始めているのか。僕なりの結論としては「人と人が繋がるうえで、言葉や音の信頼度が高いから」だと思います。動画が悪いとは思っていませんが、音声は視覚的なノイズを取り払うことで直接的に情報が頭に入ってくるものであり、目で見るものとは全く効果が異なる——「画面の向こうの人」よりも近しく感じることで、親近感が生まれやすく信頼もされやすいと考えています。それを広告に置き換えると、服などのビジュアルを大切にしているものは音声メディアでその魅力を伝えきれないと思いますが、人との関係を作ったり、サービスを提供したり、ブランド作りをするために言葉や音の力を使うのはすごく効果的でしょうね。

——広告を普段見たり聴いたりされるなかで、日本と海外で“音”の違いなどを感じることはありますか?

イナモト氏:海外ですと、ポッドキャストで流れてくる音声広告は番組のパーソナリティの方が読み上げるものが多いんです。先ほどお話しした「声の信頼度の高さ」をうまく使った例で、いつも聴いている番組のパーソナリティが読み上げるからこそ説得力があるのだと感じます。

意識的と無意識的な聴取の相乗効果で「潜在的に記憶に残る」

20250226 reiinamoto 02

——視覚情報過多の現代において、マーケティングにおけるサウンドロゴや音声広告をはじめとした音の資産の活用の重要性は一層高まっています。Spotifyグローバルの調査では、ブランディングツールの中でもサウンドが最もアテンション獲得効果が高いという結果も出ていますが、音の資産を残し活用することの重要性について、イナモトさんのご意見やお考えをお聞かせください。

イナモト氏:少し話がズレるかもしれませんが、日本の新幹線で英語のアナウンスを担当している方が動画をアップしていて。何かのタイミングで偶然その動画が流れてきて”知ってる声の人だ!”と驚いたことがあるんです。これはあくまで一例ですが、音声はそのように”潜在的に記憶に残る”ことが多いのかもしれません。だからこそ、印象的な音の広告を作ることができれば、色んな人の耳や頭のなかに残っていくでしょうし、それが何かを意思決定するときや企業の名前を聴いた時などに効果的に働くこともあるかもしれません。それが“音の資産”の重要性につながるのではないでしょうか。

——Kantar社の調査で「Spotifyを利用した後と、ソーシャルメディアを利用した後とでは、Spotify利用後の方がよりハッピーでリラックスした気持ちになれると回答した人の割合が15%も多い」という興味深い調査結果もでています。このようなポジティブな聴取態度が影響してか、Spotifyユーザーのオーディオに対するエンゲージメントは、それらが広告に切り替わった後も93%は保たれることが自社の調査でわかっています。

イナモト氏:僕の知り合いにも音声メディアやソーシャルメディアなどの様々な種類の広告を販売している企業の方々がいますが、最近は「音声メディアの方が効果を得やすい」という声をたびたび聞きます。

20250226 reiinamoto 03

——Spotify広告のアテンション獲得力はインストリーム広告プラットフォームやソーシャルメディアと比較しても、インストリームプラットフォームの2.3倍、ソーシャルメディアの4.2倍高いことが電通ジャパン・インターナショナルブランズ、主要プラットフォーム各社、Lumen Researchの調査チームと共同で実施したアテンションエコノミーの調査でわかりました。この結果からイナモトさんが感じることは?

イナモト氏:“アテンション”と広告という視点でいえば、企業やブランドが音声メディアで何かを言うことによって共感を得てサービスや商品を買ってもらう際に気をつけなければならないのは、“その情報が有益であるか、時間を無駄にしないものであるか”だと考えます。どんなにお金があってもなくても、社会的地位が高くても低くても人でも、平等に与えられているのが“時間”ですよね。時間は有限だから、それをいかに有効に活用できるかが大事。広告においては動画・音声・テキスト、あらゆるものが競争相手になっている上、有限である時間をいただくわけなので、アテンションを引いている間「人の時間を無駄にしない」ことが、今まで以上に重要になっている気がします。

——ここまで様々な調査結果をもとにお話を伺いましたが、これらのデータを見て、イナモトさんが感じたこととは?

イナモト氏:先ほどの話とも重なりますが、音声は意識の奥深いところとつながっているということですね。もう少し踏み込んでお話をすると“意識的”と“無意識的”の2つがあって、前者は自分が選んで特定の音楽やポッドキャストを聴くことで、その間に挟まってくる音声広告はある意味で意識的に聴くもの。後者はプレイリストでランダムに音楽を聴いていくなかでBGM的に流れてくるもの。そういう意識的なところと無意識なところのどちらかに、もしくはその両方にアプローチできることから生まれる相乗効果によって、深いつながりが生まれるのではないでしょうか。

重要なのは「山の頂上に一歩一歩登ること」

——Spotifyではトヨタ自動車のポッドキャスト番組『TOYOTA SOUND TRACK』など、企業のポッドキャスト活用も増えてきています。企業がポッドキャストを運営する際、どんな考え方でコンテンツ作りを行えば良いでしょうか。意識すべきポイントがあれば教えてください。

イナモト氏:企業やブランド・組織が広告を作る際、やはり認知度を上げたい・買ってほしいという欲求がどうしても先に来がちですが、個人的な意見としては「信頼」を得ることがなにより大事だと思っています。そこをまず念頭に置いたうえで「どうやって有益な情報を提供し、信頼してもらえるか」を意識したものを作ることが、今のコンテンツに求められているものかもしれません。これは音声メディアに限ったことではありませんが、これだけ情報があふれている世の中で、どこまでが本当で、どこまでが人間の作ったもので、どこまでがAIの作ったものかが判別しづらい時代になっているからこそ、最終的には「信頼」が差別化につながる。その「信頼」がブランド力になっていくと僕は思います。

20250226 reiinamoto 04

——最後に、音の資産をこれから形成・活用していきたいとお考えのマーケターのみなさんへ向けたメッセージをお願いいたします。

イナモト氏:これは音声メディアに限ったことじゃないと思うんですが、世の中に音声や動画など様々な情報がある中で目立つのは正直難しいです。ただ、そのなかでも「バズらせたい」「話題を作りたい」という声を多く聞きます。もちろん広告やマーケティングはそうして話題を作るのが役割の一つなので、それが間違いというわけではありません。ただ、山の頂上を目指すのであれば、一歩一歩確実に登ることが大切です。1回きりのバズはヘリコプターで頂上にいくようなものですから、結局自分の財産や力になることは少ない。自分の足で登る頂上の景色と空から見える景色は同じかもしれないですが、自分で登ると景色の見え方も違いますし、経験を含めて大きな財産になるはず。音声広告やポッドキャストといった音の資産作りも継続的に一歩一歩続けていきましょう。

(写真=池村隆司)

Spotify、デジタル音声広告のクリエイティブアワード「Spotify Hits」を日本で初開催し、グランプリと2部門の受賞作品を発表

spotifyhits2024main scaled

グランプリには、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社「和風チキンカツバーガー」のデジタル音声広告作品が選出

 Spotifyは、Spotify広告の特性を活かしたクリエイティブなアプローチで人々の心を動かし、ビジネスの成長に貢献した企業やブランドのキャンペーンを表彰するクリエイティブアワード「Spotify Hits」を日本で初めて開催し、2024年10月15日に第一回目の受賞作品を発表いたしました。

 ストリーミングサービスを利用して音楽や音声コンテンツを楽しむオーディエンスが世界的に広がる中、Spotifyで1日を通して気分やシーンにあった自分好みの音楽やポッドキャストを楽しむリスナーにメッセージを届け、ブランドに対する好意やエンゲージメントを形成したいという企業のニーズは高まっています。デジタル音声広告市場の成長を牽引するSpotifyは、革新的で効果的なクリエイティブ溢れるキャンペーンを表彰するとともに、事例を通じてナレッジを共有し、さらなる市場の活性化を促す目的で2023年に「Spotify Hits」をスタートしました。

 日本で初めての開催となる本アワードでは、グランプリ(Spotify Mic Drop)に加え、ベストオーディオキャンペーン(Future Sounds)とSpotify上で音声や動画といったフォーマットを複合的に活用し成果を収めたキャンペーンを選出するベストマルチフォーマットキャンペーン(Sound & Story)の2つの部門賞を設置し、審査員に株式会社 博報堂 執行役員の嶋 浩一郎氏、株式会社 電通 CXCC局 CXクリエーティブ推進部 クリエーティブディレクターの田中 寿氏をお迎えして実施しました。

 受賞作品に関する詳細は、以下の通りです。

【グランプリ(Spotify Mic Drop )】

 和風チキンカツバーガー、通称「和カツ」の認知とトライアル促進を目的に、Spotifyの音声広告を展開。「和カツ食いに行く」と「高須クリニック」で韻を踏めるという発見から、誰もが聞いたことのある高須クリニックCMソングの替え歌を通じて、TVなど他メディアでは捉えることが難しい外出時・移動中等などオフスクリーン時のユーザーへ耳からアプローチすることで、「和カツ」の愛称と商品のユニークネスを印象的に記憶に残しました。

広告主:日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
キャンペーン名:知られざる定番「和カツバーガー」 リローンチキャンペーン 『Yes! 和カツ食いに行く』
企画・制作:株式会社 博報堂、株式会社 博報堂プロダクツ、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ、えるマネージメント、株式会社ミューズ、メロディー・パンチ

22249 187 fb1adb99a3f3356cdf5f1dd5968bcb6a
22249 187 d8ed65e50983c85e2be2c22f17d39623

【ベストオーディオキャンペーン(Future Sounds)】

 「蚊の不安から家族を守ってくれる信頼できる蚊取りブランド」というブランドパーセプションをより強固なものにするため、アースノーマットの製品機能を生活者の記憶に強く印象付けるプロモーションを実施。小島よしおさんを起用した音声広告を制作し、立体的な蚊の羽音と小島さんの持ちネタである「そんなの関係ねぇ」や「ダイジョブダイジョブ」のフレーズで、アースノーマットがあれば蚊がいても関係ない(=大丈夫である)ことを直感的に表現しました。

広告主:アース製薬株式会社
キャンペーン名:アースノーマット 小島よしお音声広告
企画・制作:CHOCOLATE Inc.

22249 187 9880b2b4f94c41e22793d66bee9e518a
22249 187 628a171b0c533217a471c4edf5069cd9

【ベストマルチフォーマットキャンペーン(Sound & Story)】

 ブランドの認知獲得を目的に、Spotifyが多く利用される就寝時や自宅でのリラックスタイムといった「睡眠」につながるモーメントを捉え、「世界中の子守歌を聞いて楽しめる」キャンペーンを行いました。Spotifyにおける音声広告と静止画広告を活用し、SpotifyとAPI連携した世界の子守歌100曲を解説付きで楽しめる特設サイトへ遷移させ、幅広くかつインタラクティブな方法で認知獲得を目指しました。

広告主:エスエス製薬株式会社
キャンペーン名:ドリエル20周年 世界の子守歌キャンペーン
企画・制作:株式会社電通、株式会社電通デジタル、サムワンズガーデン、株式会社エムアイティギャザリング、ベルベットオフィス

22249 187 16a16b9fc827115f6a0b6d2e1887076d
22249 187 ba9110d7cce225624811c2ef2e92c2d9

株式会社博報堂 執行役員 嶋 浩一郎氏からのコメント

「多くの人がイヤホンで音楽を楽しむようになったことで、これまで以上にコンテンツに対して前のめりな姿勢になっている。Spotifyにおける広告表現は効果があり、音楽というファンダムの中での情報提供は特に大きな可能性を秘めている。

音楽に乗せることで、強くなる言葉がある。Spotifyの音声広告の可能性を感じた。
同時に、コピーを書くことと、それを音楽に乗せることはまた別の仕事なのだということに気づく。歌詞にするという技術を探求しなければならない。」

株式会社電通 CXCC局 CXクリエーティブ推進部 クリエーティブディレクター 田中 寿氏からのコメント

「昔からの広告のサウンドジングルを聴くだけで鮮明にポジティブにその時の状況が脳内再生される。うまくいけば、その時の思い出も添えて。これは、まさに広告接触というより、“追体験” だ。

 時に、広告の限られた尺の中でクライアントの物語やカルチャーは語りきれないことがある。追体験は、そんな現代の尺という時間概念を超え、バックキャストして記憶を呼び出す。これはMROIとして計測するメモリを振り切った効果があると思う。

今回のアワードを振り返り、接触から体験の領域まで設計出来ている作品がいくつかあった。今でも審査中の音が頭の中で再生され、ある意味自分勝手に変換して楽しんでいる。」

スポティファイジャパン株式会社 上級執行役員 広告事業部統括 立石ジョーからのコメント

「日本国内でも多様な業種の広告主の間でデジタル音声広告の積極的な活用が広がる中で、今回Spotify Hitsを日本で初開催できたことを心から嬉しく思っています。

1日の平均利用時間が2時間に及び、95%の日本のSpotifyユーザーが「Spotifyを使うのが日課になっている」と回答していることからも分かるように、Spotifyはスクリーンを見ていない時間も含めたあらゆるシーンでユーザーと繋がれるプラットフォームです。また、音声だけでなく、動画・静止画など幅広いフォーマットを一つのプラットフォーム上で組み合わせて活用できることも大きな特徴です。本アワードを通じて、ユーザーやプラットフォームの特性を活かした広告クリエイティブの事例を紹介し、デジタル音声広告の力を広告主の皆様に実感していただけることを期待しています。」

『その後のプロフェッショナル 仕事の流儀』など、NHKエンタープライズとSpotifyの取り組みから考える“音声コンテンツの可能性” 末次徹×住吉美紀×西ちえこ鼎談

20221202 nepspotify99

 Spotifyは9月21日、ドキュメンタリーからエンターテインメントまでNHKの多彩な番組を数多く手がけてきた株式会社NHKエンタープライズと、Eテレの教育・教養・実用番組を中心に制作を行う株式会社NHKエデュケーショナルが新たに制作するオリジナルのポッドキャスト5番組の独占配信を開始しました。

 今回はその5番組から、人気ドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』で取り上げた、各分野のプロフェッショナルたちのその後を追った『その後のプロフェッショナル 仕事の流儀』にフォーカスを当て、パーソナリティを務めるフリーアナウンサーの住吉美紀さん、番組を手掛けるNHKエンタープライズ シニア・プロデューサーの末次徹さんと、スポティファイジャパン株式会社 音声コンテンツ事業統括の西ちえこにインタビュー。この大きな取り組みが生まれた経緯や、番組の反響などについて聞いていきました。

教育系コンテンツのトップランナーがポッドキャストに展開

ーー今回のプロジェクトが始動した経緯を教えてください。

Spotify 西ちえこ(以下、西):今年の春先ぐらいにNHKさんの方から、「なにかコラボできませんか?」とお声がけいただいたところから始まりました。Spotifyとコラボしてくださるなんて、と光栄だった一方で、番組作りのハードルが高そうだなとも思いました。でもNHKさんは、最初から明確に「テレビだけではリーチできないオーディエンスへリーチすること」をビジョンに掲げられていたので、こちらも提案がしやすくて、プロジェクトはスムーズに楽しく進行できました。

20221202 nepspotify03
スポティファイジャパン株式会社 音声コンテンツ事業統括 西ちえこ

ーーNHKさんとの取り組みには、どのような狙いがありますか?

西:ポッドキャストは、学習系・教育系コンテンツと相性がいいので、Spotifyとしても同ジャンルを強化していきたいと考えていたところ、NHKさん(NHKエデュケーショナルさん、NHKエンタープライズさん)にお声がけいただいたので、心強いパートナーが現れたなと思いました。さらに、Spotify用の番組を企画してくださるのかと思っていたら、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(以下、『プロフェッショナル』)というすでに多くの支持を得ている番組をポッドキャストで展開したいと提案してくださったので驚きましたし、うれしかったですね。既存の『プロフェッショナル』ファンの方はもちろん、まだ番組を見たことがない方にもポッドキャストを聞いていただき、テレビ番組の『プロフェッショナル』にも興味をもっていただくといったサイクルを作れたらと思います。

ーーこの提案には、末次さんも携わられていたのでしょうか?

NHKエンタープライズ 末次徹(以下、末次):僕は途中からこのプロジェクトに加わった形で、今年の夏まではテレビ版『プロフェッショナル』のプロデューサーをしていたんです。そんなときにたまたまこのプロジェクトの担当プロデューサーから、『プロフェッショナル』のスピンオフをポッドキャスト番組として制作できないか、と相談を受けました。テレビだけではリーチできない層もいますし、今後は様々なメディアを駆使してコンテンツを発信していくべきだと考えていたので、ぜひやりましょう、と返事をしました。

20221202 nepspotify01
NHKエンタープライズ 末次徹さん

ーー住吉さんは、この話を受けたとき、どう思いましたか?

住吉美紀(以下、住吉):企画アイデアについて聞いてすぐ、私が30代、40代でやってきたことの総決算だ、と運命を感じましたね。『プロフェッショナル』は私の人生を変えた大事な番組ですし、スタッフとも家族のように付き合っていました。私はNHKを離れていましたが、今一度大好きな人たちとこうして別の形で仕事をするチャンスが巡ってくるなんて、と鳥肌が立つような思いでした。しかも、この10年ラジオとガッツリ向き合ってきて、音声メディアやポッドキャストの強みや可能性をヒシヒシと感じていました。なので、このプロジェクトに「興味ありますか?」と声をかけられたとき、「めちゃくちゃある!!」と飛びつきました。

 実際に番組を制作するにあたっては、私が今まで培ってきた人間関係と、この10年間でラジオ番組から得た知見を大いに活かすことができました。より良い番組にするためゼロから議論しながら作ったので、無事に配信ができたときは個人的にも本当に感慨深かったです。多くの方にぜひ聞いていただきたいです。

20221202 nepspotify02
住吉美紀さん

ーー西さんは、実際に完成した番組を聞いてみて、どう感じましたか?

西:住吉さんの熱量がとても感じられて、なにかすごいものが出来上がったぞ、とワクワクしました。ゲストの方と住吉さんとの信頼関係や親密さが、声を通して感じられるんですよ。冒頭を少し聞いてみただけでも、とてもいい番組になったという手応えがありました。

ときに映像以上の力をもつ、音声コンテンツの可能性

ーーこれまで映像メディアに携わってきた末次さんは、音声プラットフォームであるSpotifyさんにどのような印象を抱いていましたか?

末次:ニュースや新聞でSpotifyさんの名前を目にする機会が多いですし、音声コンテンツのトッププラットフォーマーというイメージでした。スウェーデン発のサービスであることも知っていたので、生き方が上手でかっこいい北欧の人たちが作った、優秀なプラットフォームなのだろうなと。実際に利用してみても、使いやすくてユーザーフレンドリーで、よくできていると感じました。

 ただ正直に言うと、今回のプロジェクトに参加する前までは、音声コンテンツにはあまり詳しくありませんでした。僕はテレビ局の人間なので、どうしても「コンテンツ=映像」の認識が強くて。でもプロジェクトを進めるうちに、音声コンテンツの奥深さや柔軟性に気づいて、興味をもつようになりました。視覚的情報がないからこそ、話し手の言葉が耳に入ってきやすいですし、自分の脳内で映像を思い浮かべて楽しむこともできます。あとは映像コンテンツだと、ストーリーはおもしろくてもそれに使える映像がないと成り立たないですが、音声であればストーリーだけでよくて、映像の縛りがないのもいいなと思います。

ーー住吉さんはいかがでしょうか?

住吉:前にSpotifyさんが制作されているポッドキャスト番組にゲスト出演させていただいたり、プレイリスト作りに参加したりしたこともありまして、すごく柔軟なサービスだという印象がありますね。私はラジオを長くやっていたので親近感がありますし、今どんなコンテンツが流行っているのかを知るのに参考にさせてもらっています。ただ音楽サービスの印象が強かったので、ここまでポッドキャストに力を入れていることは、今回のプロジェクトを進めるうえでの新たな発見でした。

ーー住吉さんは、映像・音声メディアの両方で活躍されていますが、両者の違いをどのように感じられていますか?

住吉:音声と映像だと、ずいぶんと役割や得意としていることが違います。テレビは映像ありきで物事が進みますし、画の強さがありますね。百聞は一見に如かずと言うように、一瞬で理解ができるし、一瞬で心惹かれて釘付けになることもあります。対して音声は、目に見えないものに訴求する力がとても強いです。気持ち、言葉、声など、目に見えないけれども私たちにとって価値があるものや、大切なものにリーチすることができます。使い方によっては映像以上の力を持って届くと感じているので、このパワーを活かすべきだと、番組の制作チームにお伝えしました。

 それに音声だけだと、本音かどうか、どういう気持ちやテンションで発言しているかが、意外にも映像よりもつぶさに伝わるんですよ。もし上辺だけで話をしていればそれはリスナーにバレるので、出演者はすべてを晒す覚悟で臨まないとダメですね。でもその覚悟さえできれば、リスナーと深く繋がれるし、信頼関係がはぐくめます。

ーー今回、ポッドキャストの『その後のプロフェッショナル』を聞いてみて、音声にはこんなに説得力があるのかと改めて実感しました。

住吉:収録スタイルにも大きな違いがあるんですよ。テレビの『プロフェッショナル』のスタジオは、まるで宇宙の中心に私たちだけ、というような非日常的な雰囲気でして、現場は良い意味で緊張感に包まれていました。一方でポッドキャストの方はもっとシンプルで、カメラや照明はなく目の前にマイクがあるのみ。ちょっと話が盛り上がってくると、収録だと忘れるくらいに素が出るんです。素の状態で話してもらうことで、人柄がにじみ出て、ここだけの話が飛び出たり、説得力が増したり。それは音声メディアの強みだと思います。

末次:『プロフェッショナル』のスタジオ収録はスイッチオンの状態でしたが、ポッドキャストでは完全にオフのままで進行しています。「スイッチを入れすぎないでください」とお願いするくらいに。その気張らないスタンスは、今の時代に合っているとも思いますね。

激動の時代だからこそ、リスナーの心に寄り添う番組作りを意識

ーー15年の時を経て、コロナ禍を含めさまざまな困難を乗り越えたプロフェッショナルたちの話は、とても興味深かったです。

住吉:15年という期間は、本当に絶妙だと思ってます。5年だとあまり変わっていないこともあるし、20年を超えると引退される方も出てきますから。15年の間にそれぞれいろんな人生の変化や事件があったり、いろんなことを経験されたりしていて、その話を聞いてるだけでもおもしろいのは、さすが『プロフェッショナル』の皆さんですね。その期間にはもちろんコロナ禍という、人類みんなが体験した困難も含まれているので、プロフェッショナルの方々はそこをどう過ごして何を考えたか、興味深いです。今この時期に番組が実現したのは、素晴らしいタイミングだと思います。

 今回ゲストの皆さんと再会するにあたって、当時の映像を見直したのですが、昔の自分は見た目だけでなく中身も若くて衝撃的でした。私も少しは成長できているなと感じましたね。あのとき聞きたかったことと、今聞きたいことが違っていたりするんです。それに当時は聞き手に徹していましたが、今は私も相手に伝えたいことがあるので、「自分はこう思うけど、あなたはどう思いますか?」という聞き方に変わりました。リスナーの皆さんには、自分もその場にいて会話を聞いている感覚を味わってほしいので、一方的なインタビューではなく、対談形式となるよう心がけています。

ーー音声コンテンツとしては、ゲストの方が一方的に話されるよりも、対談形式の方が聞き心地がいい気がしますね。番組への反響はいかがですか?

西:視聴時間が長いことが『プロフェッショナル』の特徴ですね。コンテンツが最初から最後まで聞かれた割合を意味する「聴取完了率」というものがあって、私たちはこれを「コンテンツクオリティ」と呼んでいます。クオリティが高いコンテンツは、離脱率が低いですね。多くの番組では、この数字をどう改善するかを議論することが多い中、『プロフェッショナル』の場合は最初から高いんです。良質なコンテンツとはこういうことなんだと示す良い例となりました。

 ビジネス面で言えば、テレビ局さんからのお問い合わせが増えました。まだ本格的に音声コンテンツに乗り出せていない番組さんや、ニュースの配信のみとなっている番組さんなど、悩まれている方たちから多くのメールをいただいています。

住吉:すごい、嬉しい!

末次:嬉しいですね。僕の方もいろんな番組の知り合いから、「自分たちの番組でもSpotifyさんとポッドキャストをやりたい」と相談されることが増えました。僕が今すぐどうにかできることではないので、あとで相談させてください(笑)

ーー住吉さんは、番組への反響を感じられることはありますか?

住吉:私もSNSなどで、すごく熱量の高い感想をいただくことがあります。「ちょうど同じことで悩んでいたので参考になりました」、「働く元気が出ました」とかって言っていただけてありがたいです。ただ本当は、もう少し反響がほしいところです。今の時代にはたくさんのコンテンツがありますから、その中で埋もれないよう、認知を拡大していかないといけないと感じています。聞いていただければ、おもしろいと思っていただける自信はあるんですけどね。

末次:僕も同じように、聞いてくださった方からの評判はすごくいいと感じています。その中で印象的なことが2つありました。1つは、「ながら視聴」がポッドキャスト・音声コンテンツの大きな強みだということ。ランニングや家事をしながらでも聞くことができるのは、映像コンテンツにはない良さですね。

 もう1つは、仕事や人生にフォーカスしたコンテンツへの興味が、皆さんの中で強まっていると感じたことです。コロナ禍などもあって先行き不透明な世の中において、どう働くべきか、どう生きていくべきかといった価値観がゆらいでいるんですよね。従来のモデルがなくなってきている中で、プロフェッショナルな方たちが十数年で体験してきた変化や苦労の話は、リスナーにとってすごく価値があるようです。多くの人が生き方についてより真剣に考えている現代だからこそ、この番組を制作する意義があると思っています。

住吉:15年の間にどん底を経験してる方もたくさんいました。そこから地道にコツコツ努力を重ねて、別の道を切り開いたなんて方も。一見完璧に見える方でも実は大変な目にあっていて、それでもなんとか生きているとわかると、少しほっとするんじゃないかな。『その後のプロフェッショナル』は、向上心の強い方向けの番組という印象があるかもしれませんが、そんなことはなく、いろんな人生があっていいと思える要素もたくさんありますので、どなたでもお気軽に聞いていただけたらうれしいです。

ーーテレビ番組の『プロフェッショナル』は、超一流の生き様をかっこよく見せて、視聴者のモチベーションを高めるような番組作りでしたが、ポッドキャストでは優しく背中を押すような構成になっていますね。

住吉:作っている私たちの意識も変化していますからね。「人生100年時代」とも言われる今の時代には、1つの仕事を死ぬまで続ける人は少ないですし、90歳まで働くようになるかもしれないなど、仕事観の変化はつねに頭にあります。ゲストとお話をする際も、リスナーにとって何かしらヒントや学びとなる話が引き出せるよう意識していますから、その点でテレビ番組との違いが出てきますね。

末次:タイトルには「仕事の流儀」と入っていますが、仕事だけではなく、人生の方にも触れるように意識していますね。人生の紆余曲折や、挫折エピソードなどが聞けるといいなと。

住吉:そうすると「実はこの仕事嫌いだったんだよね」といった本音が、本当にたくさん出てくるんですよ。プロフェッショナルの皆さんも、かっこいい時間ばかりではないんです。みんなもがきながらも、少しでも幸せに近づけるように生きていると感じていただけると思います。

世界的コンテンツで映画クオリティの音声エンタテインメントを実現。キーパーソンたちが語る『BATMAN 葬られた真実』制作の裏側

20220810 batmansp99

 Spotifyが5月より配信している、ワーナー・ブラザーズとDCコミックスと連携したオリジナルポッドキャスト番組『BATMAN 葬られた真実』。米国版オリジナル脚本をもとに、日本を含むフランス、ドイツ、イタリア、インド、インドネシア、ブラジル、メキシコの8ヶ国向けにそれぞれの国の制作チームを起用し、その国の文化や言語を反映した形で制作されました。

 今回はスポティファイジャパン株式会社 音声コンテンツ事業統括の西ちえこと、日本語版のコンテンツ制作を担当したニッポン放送からビジネス開発局長の節丸雅矛さん、同作を手がけたプロデューサーの勝島康一さんにインタビュー。映画クオリティの音声エンタテインメントを作り上げた過程と、細部に凝らされた工夫について、じっくりと話を伺いました。

ラジオ局は先駆者であり、よきパートナー

――プロジェクトの起点となったのはSpotifyさんとニッポン放送のどちらだったんですか?

西:『BATMAN 葬られた真実』は、2020年にSpotifyとDCコミックス、ワーナーブラザーズが締結した複数年制作パートナーシップからの第一弾として企画されたものです。全世界9カ国で同時展開するなかで、各国がその国の文化や言語にあわせたバージョンを制作することになり、日本版を作るにあたって、弊社がパートナーとしてニッポン放送さんに依頼しました。

20220810 batmansp02
スポティファイジャパン株式会社 音声コンテンツ事業統括 西ちえこ

――Spotifyさんとニッポン放送さんは最近で言うとオールナイトニッポンの独占配信だったり距離がかなり近いように思うんですけど、音声コンテンツを作る側と広げる側としてお互いをどういう風に見てらっしゃいますか?

西:よく「ラジオ局さんは競合なのか」という質問を受けるのですが、我々はラジオ局のみなさんを「日本におけるオーディオコンテンツの先駆者」であり、よきパートナーだと考えています。ニッポン放送の檜原社長が以前、別のインタビューの中で「ストック型のコンテンツとフロー型のコンテンツ」についてお話されているのを拝見しましたが、ポッドキャストの利点の一つであるアーカイブ性を活かして、ラジオ局さん側からも、リアルタイムで放送された番組をアーカイブとして残していくためのひとつのプラットフォームとして活用いただいているという側面が強いように感じます。中でもニッポン放送さんはオリジナルのポッドキャスト番組であったり、自社IPを活用したスピンオフ的な取り組みなど、非常に上手くデジタルコンテンツの展開をしているように見えますし、海外のコンテンツをローカライズすることも業界の中で先んじてトライされているので、今回のような案件において素晴らしい知見をお持ちだと思い、最終的にご一緒することになりました。

節丸:僕は現在の立場になる前は編成局にいたのですが、民放から派遣されてアメリカの『ラジオショー』というコンベンションに行ったとき、当時のアメリカのラジオ界が不況でものすごくどんよりしていたのが印象的で。そのときに現地で「アメリカではPodcastが伸びている」という話も聞いていましたが、日本では儲け方が分からないというか、ビジネスにできないような状況だったんです。でもオーディオアドの仕組みができて、ポッドキャストにCMが打てるとなったときに「これはイケる!」と思い、現在の部署に移った際にポッドキャストを推し進めていこうと決めました。

20220810 batmansp03
ニッポン放送 ビジネス開発局長 節丸雅矛さん

ーー西さんがお話しされたように、ローカライズポッドキャストの事例としてニッポン放送が手がけた『ビジネスウォーズ/BUSINESS WARS』の成功は大きいものだったと思います。こちらを制作した経緯などについても伺えると嬉しいです。

節丸:オリジナルのポッドキャストを制作しようと思ったのですが、いきなり完全オリジナルは怖かったので、まずは英語版のコンテンツをローカライズすることにしたんです。日本向けにということであれば、『任天堂VSソニー』という構図も日本人に分かりやすい『ビジネスウォーズ』だということで第一弾コンテンツとして配信したところ、かなり聴いてもらえたことで、社内での風向きも一気に変わったように思えます。

 そのあとに『オールナイトニッポン』まわりの配信が始まっていったのですが、『オールナイトニッポン』はタレントさんの許諾も必要で、関係各所へ理解を得るまでが大変だったのですが、いざ配信が始まると、Spotifyさんとの相性がすごくよくて、逆に僕らが驚きました。そこからSpotifyさんだったらそういうコンテンツをぐいぐいやるのがいいっていうスタイルが段々できあがったっていう感じですね。

20220810 batmansp04
プロデューサーの勝島康一さん

――そうしてお笑いのコンテンツでも良い結果を残し、このタイミングで『BATMAN』という大きなコンテンツを一緒にやることになったということですね。グローバルのコンテンツを日本語版として展開するというもので、様々な制約もあったかと思います。そのなかで工夫したことや、大変だったことは?

勝島:まずは経緯をお話すると、昨年の9月くらいに初めてこのお話がきたとき、僕の方には何の作品だということは伏せられていて。10月くらいに正式なオファーがきたときに初めて『BATMAN』だとわかり、さらに僕の中では1時間や90分のコンテンツを1本作るのかと思っていたら、30分前後のものを10本ほど作ると聞いて驚きました。

 さらに、本国の脚本があって、音声も音楽もオリジナルで作るということもわかったので、まずは英語の脚本を翻訳していただいて、そこから日本語の脚本を作っていくことをスタートしました。今年の1月に本国から仮の音源が届いたのですが、それをみんなで聴いたときに「これはすごい……」と驚愕させられました。日本でこれまでやってたラジオドラマのレベルはとうに越えていたので、僕ともうひとりのスタッフでやる予定だったものを急遽変更して、優秀なテクニカルチームを3人増やすことにしました。

 ラジオドラマはいろんなところで放送されていたりCDになっていたりしていますが、アニメの声優さんを中心としたものが多くて。僕は他局で15年続いているドラマを担当してきたのですが、そこではアニメ声優さんをあまり起用せず、舞台役者さんや俳優さんにお願いするようにしているんです。今回も『BATMAN』の音源を聴いたときに、やはり声の感じをアニメっぽくしたくないなと思ったんです。でもキャスティングは大変でした。2月頭にようやく決まったものの、舞台とかライブなどで多忙な方ばかりで、スケジュールが抑えにくかったので、ラジオドラマのように役者さんが集まって録る形ではなく、主要メンバー8人に関しては全員バラバラに収録しました。さらに、音声のみの演技を経験しているのは小手伸也さんしかいなかったのも、ディレクションをするうえでは大変でした。ですので、まずは周囲の声などを含めた「ガヤ」にあたる部分を吹き替え専門の方やラジオドラマに慣れてる方を中心にまとめて先に録音し、あとからメインキャストを収録する方向で進めることにしたんです。

ーー制作するうえで、勝島さんが最も大事にしていたことは?

勝島:大事にしていたのは「何回も聴けるようなもの」を作ること。演技のディレクションにあたっては、役者のみなさんに「なるべくリアルにやってください」とお願いしました。今回はリアルな路線を追求していくので、驚くときのリアクションも誇張せず、リアルな感じのものにしてほしいと。みなさんも不安そうでしたし、僕もやったことがない方向性だったので不安はありましたが、何度もプレイバックできるというポッドキャストの特徴を考えればそうするべきだと思い、とにかく何度も聴けるリアルなものを作る、という路線からはブレないようにしました。

節丸:リアルなものをつくる、という前提があったうえで、社内で議論になったのは「ナレーションを入れるかどうか」ということで。脚本を見る限りは説明不足に感じて、本国からSEも来ていないので、音楽でどのくらい説明できるのかもわからなくて。結局は開き直って「ナレーションはやめよう」ということになりました。勝島さんのディレクションも含め、ここが明確にラジオドラマと言われるものと逆の方向に走り出した瞬間だと思います。

勝島:ラジオドラマは「ドラマ」なんですけど、この『BATMAN 葬られた真実』は「映画」を聴く感じなんですよ。だから、演技のディレクションだけではなく、会話や音楽の間についても途中に身振り手振りが入っているような「映画の間」になるように作っていきました。

僕は30年以上ラジオに関わって、ドラマも沢山作ってきましたが、今回は本当に新しいチャレンジでしたね。向こうで音声が決まってて、しかも9か国で翻訳されて、10話もある。さらに全員バラバラの収録で……と初めてのことだらけでしたから(笑)。

グローバルコンテンツだからこそ難しかった「日本語の表現」

20220810 batmansp01

――実際に『BATMAN』を一緒に制作していくにあたって、Spotify側として苦労した部分はありますか?

西:今回は私たちにとっても初めてづくしの取り組みでした。2020年にDCコミックスさん・ワーナーブラザーズさんと複数年契約をして、その第一弾として制作したのが『BATMAN 葬られた真実』だったんです。そこにデヴィッド・S・ゴイヤーさんという有名なプロデューサーが加わり、どんな作品になるんだろうと思っていたので、我々にとっても非常に驚きが大きいものでした。私たちがやりたかった「没入感のある新感覚のエンターテインメント」が形になるとこうなって、Spotifyが「世界に向けて発信するコンテンツ」として作るレベルというのはこんなに高いものなのかと感動しました。日本のローカライズバージョンでは、ニッポン放送さんと勝島さんのチームにご一緒いただいて、非常に質の高いものになりましたし、ただのローカライゼーションではなく、ある意味新しい作品になったと感じています。

勝島:「本国のオリジナルに合わるだけだから、作るのは楽なんじゃないの?」と言われたりもしますが、決してそうではなくて。役者が1人変わるだけで別物を作るような感覚ですし、ましてや言語が違えばセリフの長さ、SEやBGMのサイズも変わってくる。コンテンツを作る方としては、イチからオリジナルを作るような感覚でした。

――それってゼロイチで作るよりも逆に難しいですよね。

勝島:難しいですね。日本語であることによって、「会話の間」もそうですが「声の張り方」が違うのも大きかったです。エコーのつけ方も全く違いますから。BGMを付ける位置を変えたり、銃撃戦の音を短くしたりもして。

――先ほどSEやBGMのお話が出ましたが、音声コンテンツを制作するにあたって、音響面などの手法も通常のラジオドラマ的なものとかなり違うように聴こえました。そのあたりはどうでしょう?

勝島:今回のチームには4人のサウンドクリエイターが関わってくれたのですが、本国から送られてきた音声とは言語の違いがあるのと、ポッドキャストということでスピーカーではなくイヤホン・ヘッドホンで聴く前提で、定位を工夫すべく全員がProToolsで作りました。エコーの成分を何種類も使ったり、3DXというアプリを使って立体音響のように聴こえる工夫をしてもいます。苦労をした点としては、4人が4人とも音の作り方が少しずつ違うので、僕の方から「作品としてはいいんだけど、ここはこうじゃない」という指示を出したりしました。ただ、それぞれのスタッフが優秀だったので、各自からもっと良くなるためのアイディアもどんどん出てきて、チームとして良いものが作れたように感じますし、各スタッフからも「またやりたい」という声が続々と出てきています(笑)。

節丸:今回は本当に勝島さんじゃないとここまでまとめられなかったような気がしています。各技術の専門スタッフが集いながら、それをまとめるのはラジオマン・音声に長けた編集を知っている人じゃないと、このような形になっていなかったと思うので。

――お客さんからの反応は上々だと伺っているのですが、反応はどういうものでしたか?

西:GW中の公開だったこともあって通常の聴取習慣から離れた時期での公開でしたので、実際どのくらいの方に気付いていただけるか、届けられるかはチャレンジでした。しかし、マーケティングチームなども非常に努力してくれて、新しい形のエンターテインメントとして聴くきっかけを作れて、耳だけで楽しめるオーディオのエンターテインメントの番組があるんだということを知っていただけたかなと思っております。『BATMAN』は今回海外のIPで9言語で配信ということになったんですけど、我々としては日本のコンテンツを海外に大きく広げていくということに貢献できるともっといいかなと思っています。

――なるほど。ローカル発信のコンテンツをグローバルにする。

節丸:今回の話をいただく前に、アメリカでポッドキャストとかオーディオコンテンツとかマーベルの『X-MEN リジェンド・オブ・ウルヴァリン』があるというのを知っていて。この流れの中でそういうものを作りたいと思ってたんですよ。そういう文脈で社内で説明していったらすごく可能性が感じられるものとして社内で受け止められていますね。それと、Facebookで自分の仕事として紹介したんですが、面白いくらいに自分の業界から反応がなかったので、みなさん悔しかったのかなと思っています(笑)。

連載「Chat with Spotify」 Spotify日本法人代表トニー・エリソンが語る、オーディオストリーミングのこれまでとこれから

20220602 tony03

 スポティファイジャパン株式会社 代表取締役を務めるトニー・エリソンが、ライフスタイルやカルチャー、ビジネスにおいて音楽や音声が果たす役割や可能性について各界のキーパーソンと語り合う対談連載「Chat with Spotify」がこの度スタートします。

 まずは連載スタートに先駆け、これまでMTVや任天堂、YouTube、ディズニーなどの様々なグローバル企業において次の時代のエンタテイントを追求・提案してきたトニーに対し、キャリアを通じて得た知見やビジョン、Spotifyやオーディオの可能性に対する考えを聞きました。

20220602 tony99

次のエンタテインメントは何?を追い求めてきたキャリア

▷はじめに、これまでの経歴や、各社で取り組んできたことについて聞かせてください。

トニー:これまで取り組んできたことは、大きくわけてふたつあります。一つは、日本と欧米の懸け橋としての役割です。私は、生まれた時から、日本とアメリカを行き来する生活を送ってきました。そういった背景から、両国の言葉や文化が身についており、それが仕事でも役立っています。日系企業ではアメリカで、欧米企業では日本で勤務していましたので、グローバルとローカルの双方の視点から複眼で市場を見ることを積み重ねてきたと自負していますし、それが現在のSpotifyでの仕事につながっています。

 もうひとつは、次世代のエンタテインメントビジネスの在り方を考える仕事です。子どもの頃からずっとメディアが好きで、インターネットやスマホがない時代ーーカセットテープやケーブルテレビが出てきたころから、日米両国のメディアの違いに興味があり、次のエンタテインメントはどんな形になるのかを常に考えてきたんです。ファーストキャリアは経営コンサルティング会社からはじまったのですが、入社後に配属されたのは通信関連の部署でした。1990年代の通信は非常に面白く、インターネットが初めて出てきた時代ですから、次のエンタテインメントはどのようなものになるかを勉強する絶好のチャンスでした。

 その後、アメリカの音楽&エンタテインメント専門チャンネルであるMTVに転職し、日本での事業展開やインターネットを活用した事業展開を担当しました。その後入社した任天堂では、日本のみならず、アメリカのシアトル本社やニューヨーク支社など、さまざまな場所で働きました。任天堂では、ゲーム機のハードウェアへの映像配信などに取り組んでいました。いまでこそ当たり前ですが、僕が任天堂にいた15年前は、そういったアイディアはまだ形になっていなかったのですが、そんななか、「ゲーム機はテレビとインターネットを繋ぐ媒介になるかも」と考えていました。

 YouTubeに動画を投稿するクリエイターが任天堂のIPを使用するにあたり、権利関係をクリアにした形で繋ぐプロジェクト「Nintendo Creators Program」での経験を経て、YouTubeに転職後は、アジアでのミュージックパートナーシップを担当していました。当時、音楽業界では、「Youtubeは違法動画である」と認識されることが多かったのですが、「YouTubeはアーティストをブレイクさせるための最高の手段で、敵ではなくて友達」という認識変化を起こすべく、業界関係者との関係構築や啓蒙に励みました。そして、ディズニーでは、ディズニーの保有するレガシーメディアを束ねて「Disney+」に移管するタイミングという大きな転換期を経験し、昨年Spotify Japanに入社しました。これまでのキャリアを振り返った時に、一貫しているのは、やはり「次はどうなるのか」「日米のギャップをどう埋めるのか」に関わる仕事をしてきたということですね。

▷Spotifyに可能性を感じた理由や、音声業界が面白いと思ったポイントを教えてください。

トニー:まず、僕はSpotifyという会社にすごく惹かれたんです。会う人がみんないい人だと感じたのと、「クリエイターとアーティストをファンと繋ぐ」という会社としてのミッションに全員が賛同しているのが伝わってきたんです。また、先ほどお話した“次のエンターテインメント”について考えたときに、これまで僕がやってきた映像の分野も盛り上がってはいるものの、オーディオに強い可能性を感じたのです。ビジネス的に市場が拡大する余地もまだまだ大きく、人々の生活を豊かにする新しい価値が提供できる分野だとも思いました。語りは人間の最も根本的なコミュニケーション手段でもあり、音声コンテンツには必然性があると感じました。

▷Spotifyの一員として、Spotifyの強みというのはどういうところだと思いますか?

トニー:たくさんある中のいくつかを挙げると、先ほどもお伝えしたように全員が会社のミッションに賛同していることです。戦国武将みたいな言い方かもしれませんが、みんなで心を一つにしているのは、組織としての大きな強みだと思うんですね。チームの創造力・創作力が素晴らしく、新しいことを日々試していて、常に果敢に新たな実験に取り組んでいます。また、Spotify自体が非常に大きなグローバルコミュニティを持っていることも大きな強みです。アクティブユーザー数は世界で4億を超えていますし、様々なアーティスト・クリエイターの国境を越えたファン作りにも成功しています。ファンとクリエイターの繋がりをプラットフォーム上での発見を通じて創り出せるだけでなく、様々なツールや方法によって関係性を深め、長期的なファンダムに繋げていくことができる。

20220602 tony04

Spotifyをユーザーの生活において必要な存在に

▷日本における音声ストリーミングサービスの現状をどう思っていますか。またさらに大きく成長する上での課題についてはどう考えていますか。

トニー:5年くらい前は「いつになったら日本の音楽業界はフィジカル中心でなくなるんだろう」と思っていたのですが、現在は世界に比べると少し後発ではあるものの、日本国内でもストリーミングの利用が高まってきていて、エンタテインメント業界のなかでも主流になってきたという感覚はあります。それは市場統計だけではなく、一般的なバラエティ番組やニュース番組でも音楽配信サービスが紹介され、メインストリームカルチャーにどんどん取り入れられているからです。宇宙人ジョーンズが主人公のサントリーコーヒー「クラフトボス」の最新版CMではSpotifyがフィーチャーされているんです(※1)。クラフトボスのラベルに印刷されたQRコードをスキャンすると、Spotifyのプレイリストにアクセスできるというキャンペーンです。素晴らしいのは、このキャンペーンは、我々から仕掛けたものではなく、企業側からお声がけいただいたものなんです。そういったところで、Spotifyがメインストリームになってきているということが言えるのではないかなと思います。

※1:https://mobile.suntory.co.jp/cpn/softdrink/craftboss/song-and-craftboss/info.html

▷そういった裏話があったんですね。

トニー:そうなんです。さらに嬉しいことに、そのプレイリスト自体もしっかり聴かれているんですよ。一方で、音声配信はさらなる成長を続けていくとも思っています。メインストリームになりつつあると言いながらも、広げていく余地はまだまだあり、今後は今までのユーザー層とは異なる方たちにも音声配信サービスの魅力に気付いていただき、使い始めるきっかけを提示していく必要があると思っています。また若い世代だけでなく、生活環境の変化から青春時代にすごく大好きだった音楽と距離が離れてしまっていた40代以上の方々にも、音楽やトーク番組のある生活の楽しさを再発見、再認識してもらうための工夫も必要だと考えています。

▷たしかにそうですね。人の生活様式も変わっていくなかで、ストリーミングが当たり前になった世界において、次になにをするのかが大事になってくる。

トニー:これまでは主に音楽、最近はポッドキャストといったコンテンツに力を入れて、Spotifyは成長を続けてきました。ただ、これからは生活密着型というか、ひとりひとりの生活に役立ち、ライフスタイルを彩るような存在になっていく必要があると思っています。例えばSpotifyを利用してもらうのに、「音楽を聴けます」ではなく「リラクゼーションできます」という言い換えをしてみる。音楽のことを気にしていない人に、「このアーティストの音楽を聴けますよ」と言っても興味を持ってもらえないですが、その人に「実は最近夜眠れないんだよ」といった悩みがあったとすると、例えばヒーリング系の音楽や快眠のためのノウハウを紹介するポッドキャストを提案することで、自分ごととして捉え、興味を持ってもらえるかもしれない。または、料理をしながら英会話講座を聴いたり、走りながらテンポにあった音楽を聴いたりと、目的な生活シーンに応じた接点やアプローチを作ることもできる。ただそれは、Spotifyの力だけでは難しい。Spotifyはフィットネスや料理のエキスパートではないので、Spotifyが自ら「子どものお弁当を作っているときにこの音楽がいいよ」と言っても誰も振り向かないんですよ。だから、よりユーザーに関心を持ってもらうためにもSpotifyと相性のいいパートナーと一緒になって取り組むことが不可欠ですし、みなさんの力を借りることで、Spotifyはユーザーの生活において必要な存在になっていくことができると思っています。

▷今後、開拓していきたいと思っている領域は?

トニー:これまでにも実施し、今後もどんどん力を入れていきたいと思っている分野のひとつは「映画とアニメ」。映画を見る人が必ずしも音楽ファンというわけではないですが、映画での感動体験には、音楽が大きな役割を果たしていることも多いんです。映画を見終わって「あの感動をもう一度味わいたい」となったとき、感動をよみがえらせるには音楽が効果的なんです。しかもそれで映画のファンが増えれば双方にとって望ましいですか。そういう意味でアニメや映画とのタイアップには力を入れていきたいです。社内の会議でも、常にそういった話をしているんですよ。ターゲットユーザーの1日の生活はどういうもので、朝起きて最初に何をするのか、車に乗るのか電車に乗るのか、食事中は何を見たり聴いたりしているのかとか。そういうことを想像していくうちに、こういうところとパートナーシップを組めたらいいのか、というのが見えてくるんです。

▷その視点でいろんなものを捉えていけばイメージがしやすいというか、ビジョンが見えやすいですね。

トニー:はい。先ほど紹介した「クラフトボス」のようにブランドや企業がユーザーとコミュニケーションするときに、音楽やオーディオを媒介として使う事例は実際増えてきていますからね。いまやSNSは、社会インフラじゃないですか。テレビ番組も商店街のお店も、みんなTwitterかInstagramかYouTubeか、そのうち少なくともひとつはやっている。Spotifyの本質的な価値が理解され、本当に拡大していくと、それらのインフラに比肩しうると思うんですね。ただ、すごく守りたいのは「ただのインフラではなくて、愛されるインフラ」であること。無機質なものではなく、Spotifyのロゴを見て、ユーザーとクリエイターにときめきを感じてもらえるようになってほしい。

▷そんななか中で、Spotifyというプラットフォームをどういった存在にしていきたいか、そのためになにをしていかなければならないと感じますか。

トニー:シンプルに言うと、アーティストとクリエイターとユーザー全員に一番愛されるプラットフォームになりたいです。いろんな要素があって愛されるものになると思うのですが、結局大事なものは「信頼」だと思っています。Spotifyにコンテンツを提供すると確実にファンにリーチできるし、Spotifyは約束を守る、そういったプラットフォームでありたいです。その環境を作るにあたって、アーティストとの繋がりや、そこからさらなる横の繋がりを強化していくことによって、アーティストやクリエイターからも「Spotifyは間違いないよね」と感じてもらえるのかなと。ユーザーも、自分の大好きなコンテンツが簡単に見つかり、大好きなクリエイターやアーティストと繋がることでより深い経験ができるという世界が実現すると、どんどんSpotifyのことを好きになってもらえるのではないかと思いますね。

 その夢を実現するにあたって、まだまだやるべきことはたくさんあります。中南米のアーティストがヨーロッパでブレイクしたり、K-POPをグローバルブレイクさせているのにSpotifyが大きく貢献しているんだというニュースもおかげさまでいろんなところに掲載されたりしていますが、日本でもそういった成功例をたくさん作りたいです。日本国内でSpotifyを大きくすることはもちろんですが、日本のエンタテインメント業界が一番望んでいるのは「日本のアーティストをSpotifyの力で世界に発信していくこと」だと思うので、これに向けて一丸となって頑張っていきたいです。