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『RADAR: Early Noise 2024』選出アーティスト、jo0jiインタビュー 漁港で働く青年が特異な表現者になるまで

 今年1月発表の『RADAR: Early Noise 2024』選出アーティストの一人であるjo0jiは、漁師の父親のもとに育ち、地元・鳥取の漁港で働きながら音楽活動を行うシンガーソングライターです。2023年以降、音源発表を中心に活動を行っており、3月15日に開催した『Early Noise Night #16』出演の際には、独特な存在感を放つパフォーマンスで多くの観客を魅了していました。jo0jiとはどのようなアーティストなのか、音楽活動を始めたきっかけや制作で心がけていることなどお話を聞きました。


映画音楽や歌謡曲からの影響

――『RADAR: Early Noise 2024』に選ばれた感想を教えてください。

jo0ji:目標に掲げていました。2023年にEP『475』を出して、2024年度の『RADAR: Early Noise』に選ばれたら万々歳、という話をまわりの人たちとしていて。なので選んでもらえたときには本当に嬉しかったです。

――幼少期や学生時代はどのように過ごしていましたか?

jo0ji:これといって熱中したものがなければ、一生懸命に取り組んだこともなかったんです。音楽はずっと好きで聴いていたんですけど、かといって作るところまではのめり込めず。夢もないし、「何がしたいんだろうな」って漠然と生きていました。家の前の海で特になにもしゃべらず、友達とぼーっとする放課後を過ごしていました。楽しいというより、気持ちいいみたいな感じでしたね。

――ピアノは小さい頃から弾いていた?

jo0ji:小学2年生の頃、母親が昔使っていたピアノを家に持ってきて、「もったいないから」と弾くのを勧められて。「ピアノが家に来たから習ってみるか」くらいの気持ちで、近所のピアノ教室に通いました。小学5年生くらいでやめちゃったんですけど、楽譜が読めないので、その後も弾きたい曲があったら先生のところへ行って教わって。久石譲の「Summer」やボカロ曲の「千本桜」とか、目の前で弾いてもらって覚えました。ピアノを弾くのが面白かったんです。

――家族が聴いていた音楽からの影響は?

jo0ji:漁師は海に出る時期と出ない時期があるんですけど、海に出ない時期は、夕方の5時くらいから暇なので家でお酒を飲むんですよ。両親はずっとレコードをかけていて、中島みゆきさんや吉田拓郎さん、柳ジョージさん、RCサクセションが家で流れていました。自分が今シンパシーを感じるアーティストも忌野清志郎さん、中島みゆきさん。みゆきさんや清志郎さんの音楽を古いと感じたことがないんです。たまに聴き返すと、大人になってから気づくこともめちゃめちゃあります。あとは、音楽好きな3つ年上のいとこがおすすめの音楽を教えてくれるんです。毎回センスが良いからハズレがなくて。自分で新しい音楽を見つけるより先に、彼が見つけた音楽を聴いています。

――意識的に好きな音楽を聴くようになったのは?

jo0ji:気に入った音楽を自分で聴くようになったのは、小学校4、5年生くらい。『glee/グリー』などの海外ドラマや『天使にラブ・ソングを…』などの映画を観ることも好きだったのですが、『グーニーズ』でシンディ・ローパーを知って、ベスト盤を買ったりもしました。

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3月15日『Spotify Early Noise Night #16』@Spotify O-EAST(撮影=石原汰一、shima
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3月15日『Spotify Early Noise Night #16』@Spotify O-EAST(撮影=石原汰一、shima
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3月15日『Spotify Early Noise Night #16』@Spotify O-EAST(撮影=石原汰一、shima

――jo0jiさんが音楽活動を始めたきっかけは?

jo0ji:ラップを始めた友達に「ピアノが弾けるならトラックを作ってみてよ」と言われて。それで、ラップ向きなループするトラックを作るだけじゃ面白くなかったので、Aメロ、Bメロ、サビがあるトラックを作りました。でも、彼はラッパーなので聴かせる前に「ないよな」と思ってボツにしました。でも、せっかくトラックを作ったし「あいつができるなら俺もできるかも」と歌ってみたのがきっかけです。

――最初に作った曲は?

jo0ji:「不屈に花」です。曲を作ってみようと思ったタイミングに元気のない友達がいて。その友達に向けて名言っぽいものをいれた応援歌を作ろうと思いました。最初はネタのつもりだったんです。だって、友達が曲を作る時点で、おもろいじゃないですか。だから、かしこまって真面目に作ったわけではなかったんですけど、作った曲を友達に送ったら「いいこと言うな、お前」と受けがよくて。そのときは1番までしかなかったので、その先を真面目に作って今の形になりました。

――歌詞はどのようにして生まれるのでしょうか?

jo0ji:「こういうものを作ろう」と決めてから作り始めるので、テーマが決まってしまえば歌詞が書ける感じです。逆にいうと、テーマとなる出来事がないと作れないんです。なので、日常生活からテーマを見つけているときが、歌詞が生まれる瞬間かもしれないですね。

――歌詞を綴るうえで、大事にしていることは?

jo0ji:「ジジィになっても歌えるもん」が、ひとつの軸ですね。年を重ねても似合うような曲というか。あとは、自分のひねくれているところを出すようにしています。人って深く考えれば考えるほど、結果的にある程度同じところへ辿りつく気がしていて。言うこととか考えることって、みんなそんなに違わないと思うんですよ。でも、その答えを導きだすまでの過程って、人によってそれぞれじゃないですか。僕はだいぶひねくれて結果に辿りつくので、その過程が見えるような言い方をするようにしています。曲がった言い方にしたほうが、自分らしい気がして。

生活に近い曲を作れたら

――海の傍で育ち、漁港で働いている経験が創作活動に影響を与えていると思いますか。

jo0ji:どうなんですかね。イマイチわからないんですけど……おおらかな性格にはなったと思います。一緒に働いているおじちゃんやおばちゃんがすごく甘やかしてくれて。みんなに甘やかされてなんでも許してもらってきているから、人のことも許せるというか。余裕のある年上の人たちに囲まれているおかげで人間関係を客観的にみれるところはあるかもしれません。

――リスナーには、どのように自身の音楽を楽しんでほしいですか。

jo0ji:困ったときとか、どうしようもねえなってときに、何かしら救いの手を差し伸べるつもりで曲を作っているので、もしかしたら救いを求めて聴いてもらってもいいのかもしれないですね。基本的に、僕は「大丈夫だよ」って言われるのが好きなんです。周りにそう言われて育ってきたので。だから、自分の曲も「大丈夫だよ」って言われてるように感じてもらえたらいいな。

――今後どのような表現者を目指していきたいですか。

jo0ji:カリスマみたいな人間っていうよりは、身近なやつが頑張ってるみたいに思ってもらいたいんです。スーパースターがカッコイイことを歌ってるというよりも、「一般人みたいなやつが、いいこと言っとんな」みたいに思ってもらえるほうがいいなって。そんな存在でありたいし、それくらい生活に近い曲を作れたらなって思っています。曲を作り始めたときと同じように今も友達は大切だし、活動していくなかで音楽の友達も増えました。ずっと「この曲はあいつが好きだろうな」とか「この曲はあいつのお気に入りになるな」って思いながら作っている気がしていますね。