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Spotifyソングライター&パブリッシング・リレーションズ部門統括ジュールス・パーカーが語る、クリエイターにスポットライトを当てる方法

Spotifyは、お気に入りの曲を陰で支えるクリエイターたちについて、より深く知ることができる新たな機能としてソングライターページと『Written By』プレイリストをベータ版として公開しました。

これらによってソングライターは、新たな方法で自身が書いた曲をSpotifyで共有し、将来のコラボレーターやファンに発見してもらうことができるようになります。

Spotifyのソングライター&パブリッシング・リレーションズ部門統括責任者のジュールス・パーカーは現在、世界中のソングライターおよびパブリッシャーへの支援を拡大すべく、ロサンゼルス、ニューヨーク、アトランタ、ロンドンを結ぶ新しいチームを統括しています。

ソングライターとアーティストのマネジメント会社のオーナーであり、自身も元ソングライターでもあるパーカーは、音楽制作で使われる各種ツールに精通しているだけなく、ソングライターという職業の難しさや、作品の裏で行われる作業を評価することが大切であることをよく理解しています。

私たちはパーカーから彼のチームの仕事について聞きました。この記事を通じて、音楽出版の世界を知り、また、Spotifyの新しいソングライター・ページが、ソングライターやパブリッシャー、アーティスト、そしてファンのつながりをどのように下支えしているのかを知っていただきたいと思います。

自分がソングライターで、自分が書いた曲を歌ってくれる人を探しているとします。ソングライターがアーティストにアプローチするため、あるいはアーティストから見つけてもらうためのプロセスとはどんなものになるのでしょうか? また、Spotifyはそこにどのように関わってくるのでしょうか?

ソロで活動するソングライターが、自分の書いた曲を他人に売り込むというイメージは、もう長い間定着しています。それもあり得ますし、もちろん自分が書いた曲を自分でレコーディングするアーティストもたくさんいます。

しかし、今や現実的には、ソングライターはアーティストと同じ場所で、同じ時間に一緒に曲を書くことが一般的です。(あるいは、トラックやトップラインをメールでやり取りして、バーチャルに曲を書くことも、最近では頻繁に行われています)。つまり、ここではネットワークとコラボレーションがすべてということですが、この段階でパブリッシャーが入ってきます。

パブリッシャーの役割は、アーティストをソングライターやそのほかのクリエイティブなチャンスとつなぐことです。さらに最近では、ジュリア・マイケルズやbenny blancoのように、ソングライターからレコーディング・アーティストに転向して成功するケースも増えています。

今、Spotifyでは、分析ツールやソングライター・ツールを通じて、パブリッシャーやライターが自分たちのチャンスを切り開けるよう、実にいろいろな方法を提供しています。ここからライターはより多くの情報を得て、コネクションやネットワークを強化できることは、長期的には、新人ライターとベテランライター両方の支援につながります。
パブリッシャーやチームは、SpotifyのPublishing Analytics(パブリッシング・アナリティクス)を通じて、楽曲やライターに関する正確なデータに基づいた統計情報を翌日には利用できるほか、ライターとアーティストがペアになり、Spotify主催のソングライティング・キャンプや無料で使用できるスタジオスペースを活用して、新しいものを制作することが可能になります。

ソングライターやパブリッシャー向けにSpotifyが提供しているツールやチャンスについて、もう少しお話を聞かせてください。

まず、私たちはSpotifyのソングライター・ページを立ち上げ、ソングライターにとってのホームを作りました。これはパイロットプログラムであり、ソングライターたちが自分のアイデンティティを確立し、活動の実績を紹介するための支援の第一歩です。
また、『Written By』プレイリストを作り、ソングライター・ページで特集しています。本日いくつか新しいものを発表したように、現在、より多くのライターを追加して紹介できるように鋭意作業中ですが、これはファンが特定のソングライターの作品を知るための素晴らしい方法です。

加えて、私たちはプレイリスト、ジャンル、特定のアーティストのプロジェクトをテーマにした、アーティストのためのソングライティング・キャンプを主催しており、これまでに『Who We Be』、『The Most Beautiful Songs in the World』、『Butter』といったプレイリストに関するキャンプを実施しました。
これらのキャンプを通じて、Spotifyのフラッグシップ・プレイリストに入り、グラミー賞にノミネートされるような素晴らしい楽曲を制作するためのコラボレーションのチャンスを提供しています(なんと、21サヴェージの「a lot」は、グラミー賞受賞という快挙を成し遂げました。この曲は、アトランタのソングライター・リレーションズ部門責任者のパリス・カークが運営したSpotifyソングライティング・キャンプで生まれたのです)。

最後に私たちは、ソングライターやパブリッシャーが予約して無料で使える楽曲制作スタジオをロサンゼルス、アトランタ、ナッシュビル、トロント、ロンドンに所有しています。

これらのスタジオにソングライターを招待して、コラボレーションや曲作りの場として使ってもらっていますが、より多くの人が利用できるようにこのプロジェクトを絶えず進化させています。将来的には新しい拠点も開設したいと思っています。

Spotifyがこれらのプロジェクトやツールに投資している理由を教えてください。

ソングライターやパブリッシャーを支援することは、彼ら、彼女らが1番得意とすること、つまり、人々に愛される音楽を作り、広められるように力を貸すことです。

みなさんのお気に入りの曲はすべてソングライターから始まります。ですから、私たちがチャンスを提供すればするほど、次のヒット曲を作る助けになり、みなささんがその音楽のストリーミングを必要とする理由も増えていくのです。

ソングライターとパブリッシャーは、音楽業界に不可欠な要素ですが、その仕事はそれほど知られていません。そのため、それ相応の注目を受けていないこともしばしばです。

しかし、この問題に私たちは力を貸すことができます。なぜならSpotifyには、発見を促すという独自の力があるからです。2018年に私たちがSpotifyで楽曲クレジットを正式に表示するようになって以来、レーベルやディストリビューターが新たなリリースにソングライターのクレジットを入れる頻度が60%増加しました。

その結果、アーティストやファンは、これまで表舞台に出ることのなかった仕事を深く探り当てて、認識するようになりました。また、パブリッシャーからさらに詳しく情報が追加されるようになった今では、作品の裏で動く仕事さらに評価できるようになりました。

ソングライター・ページの拡大によって、私たちは世界が音楽を発見、理解し、楽しむ方法を絶えず進化させています。パブリッシャーとソングライターの支援は、アーティストの発見と密接に関係しています。アーティストが誰なのかは、みんな知っています。

しかし、楽曲を作ったのが誰なのかまでは、必ずしも知りません。そのつながりを見つけてもらうことで、私たちは人々が新しい音楽を発見する手助けをし、ソングライターがキャリアアップの可能性を開けるよう力になることができます。これらはすべて、クリエイターが自分の仕事で生計を立てることを支えるという、私たちのミッションにつながります。

実は私も、マーク・ロンソンの『Written By』プレイリストを聴いていたときに、彼が書いたとは知らなかった曲を発見しました。その後、今度は私が好きなソングライターからのつながりで、新しいアーティストを発見したように私たちの取り組みはどちらの方向にもつながるのです。このように必ずしも表面には見えないけれど、ものすごく重要なつながりを私たちは発掘しているのです。

このような新しい機能によって、ファンは自分の好きな音楽について新しい発見ができるようになります。ソングライティングに関するお気に入りのトリビアを教えてください。

プリンスが「Nothing Compares 2 U」を書いたことを知っている人は多いと思いますが、「Manic Monday」も彼が書いた曲だということを知っている人はあまり多くはないでしょう。多いでしょう。

あとは『Revisionist History』というポッドキャストに「Hallelujah」という曲に関する素晴らしいエピソードがあります。この曲は Leonard Cohenが書いたものですが、バラードのスタンダードナンバーになったのは、より最近になって、ジェフ・バックリィなどさまざまなスタイルでレコーディングするアーティストが登場してからでした。カバーされたおかげで今は誰もが知る曲になりましたが、これは同じ曲でもバージョンが変わると作品の運命が全く変わってしまうことを示しています。

あなたも自分でソングライターを発見してみませんか。手始めにShungudzo Kuyimbaの『Written By』プレイリストをどうぞ。