20260904 artist talks yoshiki 998

Artist Talks vol.1:YOSHIKI「Forever Love(Live)」インタビュー

 アーティストの創作の原点からカルチャーの未来まで、多面的な姿にDeep Diveする新連載「Artist Talks」。第1回となる今回は、X JAPANのリーダーであり、世界を舞台に活躍を続ける音楽家・YOSHIKIさんをお迎えしました。

 先日、2026年7月にロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールで開催された公演にてジョシュ・グローバンを迎えて披露されたX JAPANの名曲「Forever Love(Live)」が待望の音源化を果たしました。今回のインタビューでは、楽曲リリースの背景からストリーミングにまつわるエピソード、日本の音楽が持つグローバルな可能性について語っていただきました。

いいものを作れば、必ず世の中に伝わる

20260904 artist talks yoshiki 01

――YOSHIKIさんの楽曲を聴くSpotifyリスナーの約8割が34歳以下で、海外の比率が約9割です。(※2026年8月時点)

YOSHIKI:え、そうなの? それはびっくり。でも、とても嬉しいです。一応、年齢はXとしていますが、人生の大半……30年以上をアメリカを拠点にしてきました。そのなかで音楽に集中する時期もありつつ、最近はファッションブランドをやったり、ワインやシャンパンを作ったり、チャリティー活動、あとはテック関係などにアンテナを張り巡らしていたんです。

 もちろん自分はミュージシャンであり、作曲家でもあるんですけど、なんとなく「自分のなかで音楽が占める割合はどれくらいあるんだろう?」と考えていた時期でもあって。でも今回配信するジョシュ・グローバンとの「Forever Love(Live) 」の制作を機に「また音楽に力を入れよう」と、自分の意識がぐるぐる回って、また音楽に戻ってきた感じなんです。

――グローバルにYOSHIKIさんの楽曲が届いている理由をどう考えますか?

YOSHIKI:自分で言うと恥ずかしいんですけど、すごく真剣に音楽を作ってきたんですね。ひとつひとつの楽曲を身を削るような気持ちで作ってきて、同じように身を削るように演奏してきました。それがやっぱり伝わるんだなと思います。

 今まさに色々な方とコラボレーションしている最中なのですが、一緒にスタジオで作曲していたりすると「いかに早くフックのセクションを出すか」とか「アルゴリズム的にはこういう方がいい」という会話が出てくるんですよ。

 確かに知らないより知っていた方がいい情報もあるとは思うんですけど、基本的に芸術というのは、そういうフォーマットに流されるべきじゃないと思っているんです。だから何年も前から「音楽は消耗品じゃない」と言い続けてきましたし、「100年聴ける音楽を1曲か2曲でも書けたらいい」と考えていました。

―—なるほど。

YOSHIKI:1991年に「ART OF LIFE」という曲を曲を書きましたが、当時のスタッフたちに「YOSHIKIの曲は長いものが多いから、もう少しラジオにかかりやすいような曲を作ってくれませんか」と言われて。それで「わかりました」と言って、30分の曲を書きました(笑)。そういった反骨精神もあります。
今は3分を切る尺の楽曲が多いですよね。世の中のテンションやリリースのスパンの問題もあるし、それはそれでアリだなと感じるんですけど。でも極端に「2時間の曲でもいいじゃないか」と考えてもいいと思う。作曲家、芸術家としての、アイデンティティを保つためにはアルゴリズムは基本的に気にしませんし、逆にそれを超えられる楽曲を作るしかない。いいものを作れば、形はどうあれ必ず世の中に伝わると考えてやってきたので、長い年月をかけながら色々な国の方に世代を超えて聴かれているのかなと。

ロサンゼルスで披露した「Forever Love」に集まった反響

20260904 artist talks yoshiki 02

――新曲「Forever Love(Live)」についてお聞かせください。フィーチャリングした歌手のジョシュ・グローバンさんは長年のお友達だと伺いました。

YOSHIKI:そうですね。ちょうど10年前にドキュメンタリー映画『WE ARE X』が、世界中で公開されて、アメリカの「サンダンス映画祭」でワールドシネマドキュメンタリー部門・最優秀編集賞をいただきました。

 それもあって、色々なイベントに参加していたときにバックストリート・ボーイズのメンバーやKISSのジーン・シモンズなど、さまざまな方々が会いに来てくれたんです。その流れでジョシュとも初めて会いました。それ以来、同じロサンゼルスに住んでいることもあり、僕のスタジオに何度も遊びに来てくれましたね。

――リリースされた音源は、7月にウォルト・ディズニー・コンサートホールで開催された2日間の公演のうち2夜目『YOSHIKI CLASSICAL 2026 IN LOS ANGELES AT WALT DISNEY CONCERT HALL』で録音されたライブ版ですね。

YOSHIKI:自分のライブでは、たまにゲストを呼んでいるんですよ。以前ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで公演を行った際にはセイント・ヴィンセントさん、エリー・ゴールディングさんに出ていただきました。

 今回はロサンゼルスということで、ゆかりの深いアーティストに出てほしいなと考えていたんです。結構ドタバタで決まったんですけど、最初に浮かんだのがジョシュでした。そしてジャンルは少し違いますけど、KORNのジョナサン・デイヴィス、あとは仲のいいジェーンズ・アディクションのペリー・ファレルにも参加していただいて。

――当初はリリースする予定はなく、ライブ楽曲のひとつとしてアレンジしたということですか。

YOSHIKI:その通りです。ジョシュが出てくれたのは2日目のステージだったんですけど、会場がロサンゼルス、ハリウッドということもあって、映画関係者や音楽関係者がたくさん来ていて業界からの反応がとにかくすごかった。「これは新曲なのか?」とか「ディズニーの楽曲として書いた曲なのか?」とか、色々なことを聞かれました。

 もちろんX JAPANのことを知らない人もたくさん来てたので、「いやいや、これは30年前にX JAPANとしてリリースした曲をアレンジしたものだよ」と説明したんです。すると「これをリリースしないという手はない」と大勢の関係者から言われましたね。

 それで「あ、そうなのか」と気付いたんです。だったらLAにいるうちに準備をした方がいいと思って、コンサートが終わってすぐにミックスに取り掛かりました。

―—今回のアレンジは原曲のキー(B♭)から大胆に完全5度下(E♭)になっていますね。

YOSHIKI:700セントも下に転調させますから、本当に違う音域で歌っているんですよ。例えば半音の上げ下げはよくある話だと思うんですけど。それによってピアノやストリングスを含めた全体、特に中音域の厚みが出たなと思います。同じ曲ではありますが、自分でも新しく感じます。X JAPANの「Forever Love」を知っている海外の方にも同じことを言われましたね。

20260904 artist talks yoshiki 03

「日本の音楽が世界を代表する日は必ず来るはず」

―—ストリーミングに関するお話もお聞かせください。YOSHIKIさんは普段ストリーミングで音楽を楽しむことはありますか?

YOSHIKI:もちろんです。ついヒット曲を探して聴いちゃいますね。今どういう音楽が聴かれてるかは、結構気にかける方です。あまり知られていないかもしれませんが、実はDJやリミックスもやっていて、そういうときのためにも今一番ウケる曲、聴かれている曲は常にチェックしています。今流行っている楽曲を聴く一方、それと並行して何十年も聴かれている音楽のよさについても考えることが多いです。

――アニメソングは以前から人気がありましたが、シティポップの世界的リバイバル以降、日本の音楽が世界で広い人気を獲得しつつあります。日本の音楽が今後グローバルに展開していく可能性、それについての課題について教えてください。

YOSHIKI:まず結論から言うと、すごく可能性を感じています。K-POPが世界を席巻したのも素晴らしいですが、日本の音楽には多様性がありますよね。いい意味で東洋と西洋が入り混じりつつ、両方の文化のなかで日本独自のカルチャーがある、海外から見ると不思議な音楽シーンです。それが強みになる時代が絶対に来ると僕は考えています。

ただ逆に多様性がありすぎるために「わかりづらい」という側面もある。アニメ音楽になると、なんとなく共通した曲の展開やコード進行があるので、わかりやすく伝わっているんですけど。でもそれはニッチな世界での伝え方ですから、アニメを介さずに伝わっているアーティストも本当にたくさんいると思います。

これからはますますJ-POP、できればJ-ROCKにももっと頑張ってほしい。日本の音楽が世界を代表する日は必ず来るはずですよ。自分がその突破口を開けるかどうかはわかりませんが、「少しでも起爆剤になれればな」とは思いますね。