Spotifyは国際女性デーを翌日に迎えた3月7日、日本法人の各部門で活躍する女性リーダー3名の登壇による「international Women’s Day Fireside Chat With JP Women Leadership」を開催しました。
Spotifyは業界におけるジェンダーの公平性を促進する目的で、多様な女性クリエイターの考えやクリエイティブな魅力を音楽やポッドキャストを通じて広くリスナーに紹介するプログラム「EQUAL」を世界中で展開しています。
日本でも2021年より「EQUAL JAPAN」のプレイリストを立ち上げ、毎月Spotifyが注目する女性アーティストをプレイリストのアンバサダーとして起用し、ソーシャルメディアや屋外広告などをはじめ継続的に紹介しています。
またBillborad Japanと共に、Hot 100のチャートにランクインした女性アーティストの楽曲をピックアップしたコラボレーションプレイリスト「Top Japan Hits by Women」を展開したり、音楽業界で働く女性たちがその道を切り拓いてきた先輩女性たちをゲストに招き、これまでの歩みや様々な葛藤に耳を傾けるとともに、仕事に関する悩みを打ち明け、キャリア設計やライフプランなどについて語り合うワークショップなども実施してきました。
本イベントはSpotifyの従業員向けに実施されたもので、ジェンダーギャップ指数で世界125位と遅れをとる日本において、女性がキャリアを重ねる上でどのような課題があるのかを理解し、これを解決するために何ができるのかをそれぞれの立場で考える貴重な機会となりました。
はじめに、電通ダイバーシティ・ラボ「ジェンダー課題チャート Vol.1」を参照に、男女間での賃金格差や女性が非公式な意思決定の場から排除されている実態、さらに女性管理職や役員が依然として少ないなどの一般的な日本の職場環境に関連する課題が共有されました。一方で、有給の育児休暇をはじめ、生理休暇や不妊治療や卵子凍結費用補助など、Spotifyには女性が利用できる様々な制度や福利厚生があることも紹介されました。
続いてパネルディスカッションとして、Spotify日本法人でマネジメント職を務める立石ジョー(Regional Head of Ad Sales)、芦澤紀子(Head of Music Planning and Operations)、川崎愛(Head of Marketing)の3名が登壇し、自身の経験談や仕事観、これからキャリアを築く後輩へのアドバイスなどを語り合いました。
まずは川崎が「これまで“女性だから”というのはあまり意識したことがなかったが、それは格差も含め当時の状況を当たり前だと問題意識も持たずに無意識のうちに受け入れていたからかもしれない。自分自身を改めて振り返りつつ、お二人と話し合いたいと思った」と口火を切ると、芦澤が「私も長年音楽業界で仕事をする中で、女性であることを今までそれほど意識してこなかったが、ここ数年Billboard Japanさんと音楽業界における女性アーティストや業界関係者のキャリアをサポートする企画を推進する上で話し合いを重ねるうちに、実際には自身も様々なジェンダーギャップに直面していたことを認識しました。こうしたことを一つひとつ意識して、きちんと考えることが大事なんだと今になって気づきました」と述べました。
また、立石は「私がかつてコンサルティング会社で仕事をしていた頃は、従業員の90%は男性で、時間外労働も当たり前でした。すべてにおいて私が「女性初」という状況も多く、当然ながらロールモデルとなる人がおらず、試行錯誤を繰り返してきました。だからこそ、こうした機会が何かのきっかけになれば嬉しい」と登壇した理由を語りました。
「女性であることで体験した苦労や、困難をどのように乗り越えたか」というテーマに話が及ぶと、立石は「男性上司と社外のミーティングに参加した際に、クライアント企業の社長に 『秘書ですか?』と尋ねられましたが、その時に上司が憤慨して『何を言っているんですか? 当社の非常に優秀なコンサルタントです』と言ってくれ、救われた気持ちになりました。周りの男性の理解やサポートはとても重要だと感じます」というエピソードを共有。また川崎は「広告代理店で働いていた当時は出産すると退職するか、サポート業務に回ることが当たり前になっていた。私はキャリアを追求することを選んだが、いまは子育てをしながら最前線でバリバリと仕事をする人も増え、日本でもようやく時代とともに社会や職場の空気感も変わってきたと感じる。女性リーダーやそのリーダーシップのあり方も画一的ではなく、多様になってきたように思う」と語りました。
音楽業界でキャリアを研鑽してきた芦澤は「レコード会社に勤務していた頃は、制作畑でキャリアを突き詰めるならば家庭を持つことは二の次という雰囲気で、仮に出産した場合は例えば総務人事部などのバックオフィス部門に異動することも当たり前だったが、そんな時代でも女性ならではの感性を生かして活躍する女性の先輩も少なからずいました。彼女たちの後ろ姿を見られたからこそ、私も頑張ろうと思えました」と述べました。さらに音楽業界においても「ジェンダーバイアスのない職場環境をつくるためにはどうすれば良いか」と問われた芦澤は、女性だけでなく周囲の男性も状況について理解を深めることが大事だと答えました。
また、「家庭と仕事を両立する方法」について聞かれた立石は、自身の経験を踏まえ「両方とも完璧にやらなくてはという意識は捨て、家事も仕事も『これだけは必ずやりたい、自分がやる』ということを決め、それ以外は大いに周りに任せるのが良いのではないか」とアドバイス。「私の場合、まだ子供が幼いときには『食事は自分が作りたい』、『寝る前の本の読み聞かせだけはしたい』などと自分が絶対にすることを決め、それ以外の家事については家族の協力や外部サポートの力を借りました。仕事についても本来は完璧主義なところがあるのですが、全てを抱え込まずに部下にどんどん任せていった。こうすることで逆に部下も成長し、チーム全体として強くなっていったように思います」と語りました。
最後に「20年前の自分にアドバイスしたいこと」について尋ねられた川崎は「若い頃は比較的のんびり構えていて、早くキャリアを築かなきゃなどとは焦っていなかったのですが、当時の上司から『あなたはこの1〜2年でもっと成長しないといけない』と逆に急かされました。当時はせっかくチャンスを与えられても、『周りの女性は誰もやってないから』などという理由で挑戦に二の足を踏むことが多く、それを見た上司が発破をかけてくれたのだと思います」とコメント。後輩たちに対して若いうちこそ積極的にチャンスにチャレンジし、経験から学びを得ることが大切だと伝えていました。
(撮影=林直幸)