2025年のSpotifyの取り組みと音楽シーンの傾向を振り返るトークセッションをレポート
Spotifyでは、年末恒例企画「Spotifyまとめ2025」の公開にあわせ、Spotifyオフィスにて「2025年Spotify年間ランキング 記者発表会」を行いました。
トニー・エリソン「Spotifyは常に一番音楽が聴きやすく、ファンに喜ばれる存在を目指す」

まず、スポティファイジャパン 代表 トニー・エリソンが登壇。Spotifyの今年1年の取り組みを振り返りました。
グローバルの数字の推移は、月間リスナー数7億1300万以上、有料会員数2億8100万以上という規模に成長。あわせて国内楽曲も順調にリスナー数を伸ばし、今年も国内外で数々のストリーミングヒットが誕生しました。2020年、LiSAの「紅蓮華」が日本国内楽曲で総再生1億を突破して以降、1億超えの国内楽曲は200曲を突破しています。なかでも、トニー・エリソンは大貫妙子の「4:00A.M.」がリリースから半世紀経った今、1億回再生を突破したことに言及。ストリーミングが時代を越えた新たな楽曲との出会いの機会を創出していることを印象づけました。1億再生を突破した楽曲のみを集めた公式プレイリスト「100 MILLION+: 1億超えヒット」にもぜひご注目ください。

また、海外における国内楽曲の再生回数は、昨年比20%以上増加しています。リスナー数、再生回数増加の一つの原動力には、アプリの進化があるとし、「Spotifyは常に一番音楽が聴きやすく、ファンに喜ばれる存在を目指しています」と、トニー・エリソンは語ります。今年8月には、無料プランの大幅なアップデートも発表しました。さらに「目標は、一人でも多くの人が好きな時に音楽が楽しめるようにすること。私たちは音楽に触れるハードルを下げたいと考えています」と話し、プレミアムユーザー限定のロスレスやミックスといったリスニング体験を向上する機能のローンチについても説明しました。
そして、今年は投票機能を大きく活用した一年でもありました。5月に開催された『MUSIC AWARDS JAPAN』では、プライズパートナーとして参画し、国内外のSpotifyユーザーから募った投票によってアワード賞を決める部門を二つ創設しました。

アーティストとファンの関係を深める機能も進化を続けています。アーティストとファンがリアルタイムで同じ音楽を聴きながら、チャットで交流できるプレミアムユーザー限定の機能「リスニングパーティー」は、Number_iやSnow Man、BE:FIRSTといったアーティストが活用し、ファンとの交流を楽しみました。
Spotifyでは、アプリ内からコンサートチケットをワンストップで購入することができます。今年はローソンチケットとZaikoが新たにチケット連携のパートナーに加わりました。「音楽を聴くだけではなく、コンサート情報を知り、そのまま購入もできる。オンプラットフォームを超えた体験も今後は追求していきます」(トニー・エリソン)。
Spotifyは、聴くだけではなく“見るコンテンツ”についても一層注力していきます。β版として提供を開始したミュージックビデオのカタログを拡張し、来年以降ますます進化していく予定です。その一例として今年公開したのが、Spotifyだけで楽しめるビデオポッドキャスト版に進化した「Liner Voice+」です。9月にアルバム『Prema』を発売した藤井 風自身が、アルバム制作の裏側を語るビデオコンテンツを公開しました。
2025年はさまざまなアニメが海外で大ヒットを記録するなか、Spotifyもアニメとの取り組みを強化しました。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』とのコラボレーションで公開された公式プレイリストは、海外公開後の9月にデイリーアクティブユーザー世界1位を獲得し、世界で一番聴かれたプレイリストとなりました。このプレイリストで期間限定で公開した「無限プレイリスト」と題した没入感の高い仕組みは、大きな反響を呼びました。

さらに、今年はSpotify Japanが初めて単独アリーナライブの主催に挑戦します。12月12日に開催する『Spotify On Stage Tokyo 2025 -Year-End Special-』のMCには、ポッドキャスターとして注目を集めるkemioさんと堀井美香さんが参加。「音楽とポッドキャストの両輪からなるSpotifyらしさを演出面にも盛り込みます。アーティストとファンをつなぐというSpotifyの使命を体現するようなイベントになっていると思います」と、トニー・エリソンも初開催に期待を寄せます。
最後にトニー・エリソンは、以下のようなメッセージでセッションを締めくくりました。
「世界でもSpotifyでもSpotify Japanでもいろいろあった2025年だったと思います。そんななか、実はSpotify Japanがやってきたことは全て、一つの着地点に繋がっています。Spotifyリスナーはハッピーなんです。利用後の満足度が高く、利用後の後悔がとても低い。いい時間を過ごした、ちょっと落ち込んでいる時にハッピーにしてくれるのがSpotify。ちょっと元気が必要な時にエネルギーを与えてくれるのがSpotify。そういったデータが調査でも見えています。Spotifyはインターネット上で一番ハッピーな場所ではないかと思います。ホリデーシーズンにふさわしいですが、一年中Spotifyリスナーはハッピーなのです。来年もSpotify Japanの取り組みにぜひご注目ください」
芦澤紀子×柴那典氏、Spotify年間ランキングから音楽シーンのトレンドを分析

続いて、Spotify年間ランキングの発表へ。スポティファイジャパン 音楽部門企画推進統括 芦澤紀子と音楽ジャーナリスト柴那典氏によるトークセッション「ランキングからみる2025年音楽傾向」では、2025年の日本の音楽シーンにおけるトレンドを分析しました。
「国内で最も再生された楽曲」部門では、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」が1位となり、トップ10のうち7曲をMrs. GREEN APPLEが占めるという、驚異的な結果となりました。芦澤、柴氏ともにランキング開始以来初の快挙に驚きを示し、柴氏は「今年は『ミセスの年』だったということが、この結果からも分かる」と述べました。Mrs. GREEN APPLEは、メジャーデビュー10周年のタイミングで大規模野外ライブやドームツアーを開催。ボーカルの大森元貴さんが映画主演やドラマ出演を果たすなど、多方面での活躍を見せました。柴氏は、彼らの存在感について「まるで、バンド全体が一つのアミューズメントパークのよう」と表現し、「音楽コンテンツの領域を超えたエンタメとしての異常な存在感を示した一年だった」と評しました。また、「国内で最も再生されたアーティスト」部門でも、Mrs. GREEN APPLEが3年連続で1位を獲得。デイリーランキングでは1503日連続1位を記録(*)しており、芦澤は「この記録はここ4年以上続いているわけなんですが、あと何年も続くのではないかと思えるほど、すごい勢いで無双している」と述べました。(*2025年12月1日現在)


サカナクションの3年ぶりの新曲「怪獣」(2025年2月)が配信初日のストリーム数最多記録を更新し、その記録が米津玄師の「IRIS OUT」(2025年9月)によってさらに塗り替えられるなど、話題曲が続々と登場したことも印象的だった今年。米津玄師は「IRIS OUT」や「JANE DOE」(宇多田ヒカルとのコラボ曲)など、後半にリリースされたヒット曲に加え、複数のアニメタイアップ楽曲の影響でアーティストランキングの順位上位にランクインを果たしました。柴氏は「米津さんは作品の世界観を楽曲で表現する主題歌制作のスキルが非常に高い」と評価し、アニメタイアップは、アーティストの表現として説得力を持たせつつ、アニメの世界観と隣接させるという非常に難しい課題を、今のJ-POPアーティストが高いクオリティでこなしている点が面白いと指摘しました。
「国内で最も発見されたアーティスト」部門では、HANAが1位、CUTIE STREETが2位という結果に。柴氏は、HANAとFRUITS ZIPPERやCANDY TUNEを含むKAWAII LAB.の共通点として「新たな価値観の提示」「自己肯定感」のキーワードがあるとし、アーティスト自身はもちろん、リスナーの自己肯定感も上がるような楽曲が印象的だったと述べました。

「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」部門では、Creepy Nutsの「オトノケ – Otonoke」が2年連続で1位となりました。前年の「Bling-Bang-Bang-Born」のヒットに続き、「オトノケ – Otonoke」がヒットしたことで、楽曲名だけでなくCreepy Nutsというアーティストの認知が海外に広がったことが考えられると両氏は分析します。一方、「海外で最も再生された国内アーティスト」部門では、4年連続トップだったYOASOBIに代わり、Adoが初めて1位を獲得しました。この要因として、柴氏はワールドツアーの開催が大きいとして、「『この曲がバズった』『この曲が主題歌で聴かれた』というよりは、アーティストとしての支持が非常に大きく広まった年だった」と述べました。さらに、「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」上位アーティストの多くが海外ツアーを行っている傾向から、「海外でのライブが動員に結びつき、動員が再生回数にも繋がるという、地に足のついた循環を見せているのが2025年」と、ストリーミングとライブ活動の相乗効果が重要になっていると総括しました。
「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」国別のランキングでは、ブラジル、インド、アメリカ、フランスの4カ国でランクインしたCreepy Nuts「オトノケ – Otonoke」の他、藤井 風「死ぬのがいいわ」が、今年もインド、ブラジル、アメリカ、タイで上位に。特にタイでは「死ぬのがいいわ」「満ちてゆく」「ガーデン」「まつり」の4曲がトップ5の上位を独占しています。また、韓国では米津玄師「IRIS OUT」「JANE DOE」が早くも1位・2位を飾るなど、「韓国におけるJ-POP人気もまた違ったフェーズに入ってきている」(柴氏)という状況が垣間見える結果となりました。
