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『ad:tech tokyo2023』にSpotifyの広告部門最高責任者が登壇 “若者とブランドとを深くつなぐ、デジタル音声広告の可能性”

 10月19日に開催されたアジア最大級のマーケティングカンファレンス『ad:tech tokyo 2023』に、Spotifyの広告部門最高責任者であるリー・ブラウンと国内広告事業を統括する立石ジョーが登壇し、基調講演を行いました。

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 はじめに、ブラウンはSpotifyの15年にわたる歩みを振り返りながら、「私たちは全世界に5億7,400万人のリスナーを抱え、今もなお成長を続けています。日本においてもSpotifyは音楽・音声ストリーミングの分野でリーディングポジションを占めるまでに成長し、特にZ世代リスナーの増加ペースは顕著です。直近の3年間で、その数は約2倍となりました」と語り、日本が注力マーケットであることを強調しました。

 その背景について立石は「Z世代がカルチャートレンドをキャッチアップするために、Spotifyは欠かせないプラットフォームになっている」と分析します。

「特に彼らが関心を寄せているのは、バイラル・カルチャーです。Z世代リスナーによるバイラル・ヒット関連のプレイリストの聴取回数は、この一年間で177%も増加したことがわかっています。ポッドキャストの人気も急速に高まっており、Z世代リスナーによる年間のポッドキャストの再生回数は、前年比の約200%にあたる3,800万回に達しました」(立石)

 こうした前提を踏まえつつ、講演では広告プラットフォームとしてのSpotifyのポテンシャルについて掘り下げていきました。立石はSpotifyというプラットフォームの特性について、次のように語りました。

「Spotifyは、誰もが自分らしくいられる場所であり、人々が気分を高めるために訪れる場所でもあります。Spotifyはほかのどのプラットフォームよりも、リスナーがポジティブになれる場所なのです。そしてこのことによって、Spotifyでの広告出稿がエンゲージメントの向上に直結することがわかっています」(立石)

 広告プラットフォームとしてのSpotifyの特性を考えるときに、もうひとつ重要になるのが聴取環境です。Spotifyのリスナーの85%は音楽やポッドキャストを楽しむ際にヘッドフォンを使用しています。Spotify上でのコンテンツ体験は、テレビやラジオのそれよりもパーソナルでより親密なものだと言えるでしょう。

 このことをブラウンは「リスナーはSpotifyというプラットフォームの“上”ではなく、Spotifyというプラットフォームの“中”で音声広告を聴取している」と表現しました。そして、Spotifyでのリスニング体験がもたらす「ポジティブさ」と「親密さ」が組み合わさることで、広告効果が最大化されるといいます。講演ではこうした環境特性を活かした事例として、味の素の「Cook Do®」の音声広告が紹介されました。

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「3Dオーディオ技術を用いており、ヘッドフォンをして視聴すれば、まるで料理中の厨房にいるような臨場感が味わえるはずです。たとえばお気に入りのポッドキャストを1時間とじっくり聴いたあとに、この広告が流れてきたらどうでしょうか。きっとお腹が空いてくると思います。その広告効果の高さは結果の数字にも表れています」(立石)

 Spotifyはブランドメッセージを届けるうえで、最良のプラットフォームとなり得えます。ブラウンは「ここでは私たちが追求し続けてきたパーソナライゼーション技術が大きな強みとなる」と語りました。

「私たちは膨大な量のデータを機械学習することで、5億人以上のリスナーひとり一人の嗜好や聴取傾向に合わせて、パーソナライズされたコンテンツをレコメンドし続けてきました。それがどれほど驚くべきことか、UXに関心のある方であればきっとご理解いただけるはずです。そしてこうした技術は、広告運用にも応用することができます。Spotifyというプラットフォームを通じて、リスナーは“知らなかったけれど好きになりそうなブランド”を発見できるようになるのです」(ブラウン)

 すでに海外ではパーソナライゼーション技術の広告への応用が本格化しつつあります。紹介されたのは、フランスのバーガーキングとともに手がけたプロモーションキャンペーンです。

「クライアントは12種類のバーガーからランダムに選ばれたバーガーを楽しめるBurger Mystère (ミステリーバーガー)という商品をアピールしたいと考えていました。そこで私たちが作成したのが、リスナーが好む音楽を分析して12種類のバーガーのうちのひとつとペアリングするマイクロサイトです。これがZ世代やミレニアル世代のリスナーを中心に大きな話題を呼び、目覚ましい成果へと結びつきました」

 それではここ日本において、特にZ世代のエンゲージメントを高めるためには、どのような戦略が求められるのでしょうか。ブラウンは「ポッドキャストの重要性」を強調しました。

「ポッドキャストは多くのリスナーにとって最も親密なメディアのひとつです。何年もかけてリスナーと信頼関係を築いてきた番組のホストたちが、あなたのブランドについて語ってくれたとしたらどうでしょうか。素晴らしいインパクトとパフォーマンスがもたらされるはずです」

 先ごろパイロット版の導入が発表されたAIによる音声自動翻訳技術の発達も、ポッドキャストにとって追い風となっています。

「言語の壁を越えて、世界中のリスナーに向けて発信できるようになることは、クリエイターにとってもスポンサーにとっても大きなチャンスです。これからは音声だけではなく動画も用いたビデオ・ポッドキャストのフォーマットで制作・配信される番組も増えていくはずです。そうした番組を活用すれば、スポンサーはこれまで以上に多様で説得力のあるストーリーテリングができるようになるでしょう」

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 ポッドキャストを通じた広告訴求の可能性をさらに引き出すために、Spotifyは独自の音声広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」の提供を日本でも年内にスタートする予定であると発表しました。立石は「このツールは、マーケターがポッドキャストを介して日本の若者と深く関わるための最良のツールとなる」と明言しました。

 既に「Spotify Audience Network」の提供がはじまっているアメリカなどでは、「このツールの登場によって、マーケターは以前よりもはるかに手軽にポッドキャストに広告を出稿できるようになった」とブラウンは語ります。

「どの番組にどのような広告を出せばいいのか。どんなホストと提携すればいいのか。広告の効果をどのように確認すればいいのか。こうした悩みに答えてくれるのがSpotify Audience Networkです。あらゆる規模のスポンサーが、最適なタイミングで最適なリスナーにポッドキャストを通じてメッセージを届けることが可能になったのです」(ブラウン)

 ポッドキャストへの広告出稿が増えることは、ホストを務めるクリエイターにとっても大きなメリットです。今後、ポッドキャストによってマネタイズできるクリエイターも増えていくと考えられます。

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「日本は私たちにとって非常に重要な市場です。消費者、アーティスト、クリエイター、広告主といったみなさまのために、最高のアドテクノロジーやプロダクトを提供していきたいと考えています。そのために私たちはさらに積極的な投資と人材の採用を行っていきます」(ブラウン)

 Z世代やミレニアル世代にリーチするうえで、Spotifyは欠かすことのできないプラットフォームです。消費者が音楽やポッドキャストを楽しみながら最もポジティブな受容態度になっているときに、適切なメッセージを送ることができるSpotifyのデジタル音声広告は、国内外のブランドに早くも成果をもたらしつつあります。

 立石は「私たちは日本でもさらなる広告のイノベーションを起こしていきたいと考えています。多くの広告主のみなさまとご一緒できることを楽しみにしています」と述べて講演を締めくくりました。