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Spotify広告事業部門リーダーに聞く “デジタル音声広告の可能性とビジョン”

 Spotifyは昨年8月に国内でデジタル音声広告事業を拡大するために、人材増強をはじめ投資を強化する発表を行いました。実際にこの一年で積極的に採用を行い、専門性の高いチームづくりに取り組んできました。今回はそんな広告事業部門のリーダーである立石ジョーに、Spotifyへ入社した理由から、今後の広告事業に関するビジョン、リーダーシップに対する考え方などについて話を聞きました。

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▷まずはこれまでの経歴を伺えればと思います。

立石:前職はTwitter(現在のX社)でパフォーマンス広告に関するアジア太平洋地域全体の営業統括をしていました。それ以前は、NIKEで日本のeコマースチームを立ち上げたり、ウィメンズの営業部長を担当していました。

▷Spotifyには2022年の8月に入社しました。Spotifyへの入社を決めた理由は?

立石:Spotifyは国内でサービスを開始する以前の2015年ごろよりユーザーとして愛用していた、自分にとってもすごく愛着のあるサービスなんです。Spotifyがないと1日が始まらないといえるくらい毎日の生活に欠かせないサービスが、日本国内で広告事業を拡大していく重要なフェーズにあることを知り、「これは運命だ!」と思って入社を決めました。

▷ユーザーとして元々接していたというのは大きいですね。普段はどういったジャンルの音楽を聴くのでしょう?

立石:プレイリストで聴くことが多いです。ジムに行く時は「ワークアウトプレイリスト」や通勤中はハッピーなプレイリストで気分を上げて、夜には「Chill Out Music」のような落ち着くプレイリストが好きですね。Spotifyにはその時の気分や生活場面にマッチしたプレイリストがたくさんありますし、使うほどにどんどん自分の好みに合った曲が提案してくれるのが醍醐味です。

  アーティストではボーカルが強くてしなやかな洋楽の女性アーティストが特に好きです。ホイットニー・ヒューストンリアーナアデルとか。最近はテイラー・スウィフトを小学生の娘と一緒に聞いていて、来年初めてコンサートに連れて行くつもりです。

▷Spotifyが作り上げたプレイリスト文化への愛情を感じます。国内ではサービス開始から今年で7年になりますが、ビジネス全般の状況はいかがでしょうか?

立石:おかげさまで大変好調でユーザー数も順調に伸び、日本でも代表的なオーディオストリーミングサービスとして認知されるようになりましたし、国内のデジタルオーディオ消費の成長を牽引してきたと自負しております。Spotifyは「パーソナライズされたリスニング体験」をお届けすることに力を入れているため、リスナーは自分好みの、生活場面やその時の気分にあった音楽やポッドキャストと日々自然に出会うことができるのが醍醐味ですし、一方でアーティストやクリエイターはこれまでにない方法で新たなリスナーを獲得し、つながりを強めることができるようになったと考えています。

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▷広告プラットフォームとしてのSpotifyについてはどのように変化してきたと考えていますか?

立石:国内で利用が広がるに従い、企業やブランドから広告やマーケティングを展開するプラットフォームとして注目も増しているように思います。広告事業を今後大きく成長させていくための強い基盤がすでに作られていると感じています。

▷国内でのデジタル音声広告市場の可能性についてどのように考えていますか? また、どのような戦略で実際に成長を実現する予定でしょうか?

立石:日本におけるデジタル広告市場の成長には可能性を感じており、Spotifyが広く浸透したこのタイミングに投資を強化することで、オーディオストリーミングサービスのリーダーとしてデジタル広告市場の成長に寄与していきたいと考えています。採用の強化はそのための第一歩ですね。

 これを推進するために国内の広告代理店とより有意義なパートナーシップを結び、Spotifyは日本の若い消費者とエンゲージメントを深められる媒体であることについてブランドや企業の理解を深め、利用を促していきたいと考えています。

 また、一部海外では既に実装済みの革新的なアドテクやポッドキャスト広告ソリューションのローカライズを進め、日本においても効果的にリーチできるようにサポートすることも重要だと思います。実際に私たちは世界に5億人超のリスナーを抱えており、日本のブランドはSpotifyに広告を出すことでこれらのリスナーにもリーチすることができますから。

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▷Spotifyのデジタル広告を利用する最大のメリットは何だと考えますか?

立石:スマートフォンが普及した社会において、あらゆるコンテンツで可処分時間の奪い合いが起こっています。ゲームや映像コンテンツ、SNSなどの視覚情報に関しては現状かなりのレッドオーシャンとなっていますが、耳から入る情報は“他のことをしながらできる”というメリットが大きいんです。実際に通勤中やリラックス時も含め、一日を通して使っていただいているユーザーも多いので、広告主は、その時々のモーメントに合ったメッセージをお届けすることができ、大きな効果を生めると考えています。実際に聴取後の広告想起は他メディアより5倍高いというデータもございます。また、自分の好きな音楽や気分に合った音楽を聴いているなかで、間に挟まれる広告というのはブランドメッセージが伝わりやすく、エンゲージも高いです。エンゲージメントについては、あらゆるメディアより19%高いと言われています。

 加えて、ブランドと関連性のあるオーディエンスをターゲティングできますし、基本的にライセンス契約をしている楽曲や、社内チームが制作するハイクオリティなSpotify上のコンテンツに対して配信されるため、安心してブランドセーフティな環境でメッセージを届けることができます。ちなみに、Spotifyが実施したSpotifyへの広告出稿によって得られるブランドリフト結果に関する調査(「Spotify Brand Lift」)では、ユーザーの70%がSpotifyというブランドを信頼できると考えているようです。

▷国内で出稿が増えているクライアントの業種・製品・サービスなどはありますか?

立石:業種やサービスにおいては、広く様々な業種業界の広告主様に出稿いただいていますが、国内で特に最近増えているのがテック業界および消費財、食品や飲料などです。

▷デジタル音声広告に向いている業種・製品・サービスというのはあるのでしょうか。

立石:業種に限らずオーディオプラットフォームの特性を活用してユニークかつクリエイティブなキャンペーン施策を展開できるので、あらゆる業種と相性がいいと考えています。あえて言うなら、今後さらに日系企業やブランドの皆様にご出稿を増やしていただきたいですね。

▷昨年8月に入社し、1年が経過しました。改めて「働く場」としてのSpotifyの魅力はどのようなところにあると感じていますか?

立石:私自身がSpotifyに来て本当に良かったと思うのは、社風がフラットで、風通しがよく、とても働きやすい点です。これまでの働いた外資系のどの会社よりも立場やチーム、部署なども関係なく、話しやすくてコミュニケーションを取りやすい企業文化が魅力です。まさにバリューのひとつである“Playful”を体現しているなと感じますね。

▷Spotifyは日本でも音楽やカルチャー好きな人々の間でかなり浸透したように思います。Spotifyをこの先どのようなブランドにしていきたいですか?

立石:私自身の目標としては、音楽は人の気分を明るくしたりモチベーションを上げたり、幸せな気持ちにさせる力があるので、そういったことにより多くの方に気づいていただきたいと思っています。Spotifyは音楽ファンに高く支持され、広く浸透している認識ではありますが、今後さらにビジネスを拡大していく上で、最近あまり音楽を聴いていてなかった方々や受動的に聴いているといったような方々にも、音楽のある生活の楽しさを改めて感じていただけるきっかけを提供できるようなブランドに育てていきたいです。

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▷第一線で活躍するリーダー、特に女性リーダーとして大事にしている考え方や日頃意識していることがあれば教えてください。

立石:リーダーはあくまでもチームがあってこそのものだと思っていますので、チームをどうエンパワーするか、チームメンバーの一人ひとりが最大限のパワーを発揮するために、自分に何ができるのかを常に考えています。また、メンバーにとってなにが障壁となっているかをいち早く把握し、それを取り除くことを補助するのもミッションだと思います。

▷尊敬している女性リーダーとその理由を教えてください。また、そのリーダーを表すような音楽があるとしたらどんな曲になるでしょうか?

立石:ニュージーランドの元首相のジャシンダ・アーダーンを尊敬しています。リーダーにしては比較的若く、母親である点がクローズアップされがちですが、コロナ禍や銃撃事件など様々な危機を通して強いリーダーシップを発揮しつつも、常にエンパシーと思いやりを心がけるリーダーだからです。そんな彼女をイメージすると、ホイットニー・ヒューストンがカバーした「I’m Every Woman」が頭に浮かびます。

▷これからキャリアを形成していく後進に対して、なにかアドバイスはありますか?

立石:障壁はキャリアにおいて大事なチャレンジだと考えているので、壁にぶつかってもめげずに乗り越えられるように色んな人の力を借りながら頑張ってみてほしいです。私もメンバーには常に「大丈夫だよ、失敗してもいいんだよ」「私が責任を取るから大丈夫」と伝えるようにしています。

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▷最後に、チームメンバーの採用にあたって「こういった人と一緒に働きたい」というビジョンはありますでしょうか。

立石:「とにかくチャレンジしてみたくて、そのようなカルチャーを愛する人」でしょうか。すでにあるビジネスを上手く回していくのではなく、新しいものを作りたいと思っている人や、過去の体験にあまりとらわれずに挑戦してみたいという人が向いている仕事でもあると思うので、一緒に楽しみながらチャレンジしていける仲間に巡り会いたいです!

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